研究内容
本研究室は、平成19年4月に日清食品(株)の寄付講座として開設されました。研究室の名前のとおり、味覚に関する研究を行っています。私達は、毎日食べ物を摂取することで栄養素を食品から得、生命を維持しています。私達の一生の食事回数は約9万回、食べる量は約40トンにも達します。これだけの量の食物を摂取することで、体重数十kgの人体の生命が支えられているわけです。いかに食事が重要であるかが伺えます。食事の本来の目的は栄養素を摂取することですが、食べ物のおいしさも非常に重要です。特に味は、食品のおいしさを決定する要素です。
当研究室では、味覚に関する応用研究を行っています。味物質は、舌上にある味覚受容体で感知され、そのシグナルが味神経を経由し、脳に伝達されて味を認識します。しかし、五基本味(甘・苦・酸・塩・旨)を受容する受容体の中で、酸味と塩味の受容体はまだ明らかにされていません。我々は2006年に、酸味受容体の有力候補を発見し、この分野では世界をリードしています。この受容体候補が真の酸味受容体であることの検証を遺伝子改変マウスを用いて行っています。さらに、味細胞における酸味受容伝達機構の全体像や味神経との連絡などを分子的に解明しようと試みています。塩味受容体の同定にも挑戦しています。
食品のおいしさを測定することはとてもたいへんなことです。なぜならば、おいしさというのは、人の五感すべてで感じたものの総合判断によって決まるからです。さらに、味の評価は人による官能検査によって行われていますが、個人差や測定環境によって変動します。そこで、官能検査以外の科学的評価方法を用いて、味の相互作用や「こく」「厚み」などの「複雑な味の世界」を表現する系の構築を目指しています。また、香辛料は食品に味以外の風味や刺激を与えますが、これらの効果についても科学的な測定方法がまだありません。
苦味は最も忌避される味です。多くの有益な生理活性物質には苦味があるため、利用されないこともあります。また、食品の加工とくにプロテアーゼ処理の間に苦味が現れる場合があります。そこで、苦味を効率良くマスクする物質を食品成分からスクリーニングする研究に挑戦します。