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 Vol.39 2010年 10月号 計数工学科特集
Vol.39 10月号
データから学習するコンピュータ・プログラム

 IT 革命に伴い、データを解析するコンピュータ・プログラムのニーズは、実社会の様々な分野において高まってきています。
 今回は、データ解析について研究をされている、情報理工学系研究科の鹿島久嗣准教授にお話を伺いました。 先生は去年の8 月まで日本アイ・ビー・エム株式会社の基礎研究所で研究されていたこともあり、先生の研究と実社会との繋がりの強さを感じることができました。


Q.先生の研究室ではどのようなことを扱っているのですか?

 コンピュータに人間の持っている学習機能を持たせ、人間では扱いきれない膨大な量のデータの中から相関や役に立つ知見を見つけることを目的とした、機械学習やデータマイニングといったテーマを扱っています。
 データを解析するための方法論や理論を作って、これを実世界に応用することを目指しています。


情報理工学系研究科
数理情報学専攻
鹿島久嗣准教授

Q.データ解析の技術はどういったところで使われているのですか?

 身近なところでは、商品の購買予測があげられます。インターネットのショッピングサイトなどで商品を見ていると、『この商品を買う人は、これも買っています』というのが出てきますが、あれはまさにデータマイニングを使っていて、過去の商品の購入データから相関関係を見つけてきて表示しているのです。

Q.これからの目的や課題としては、どのようなものがあげられますか?

 まず、コンピュータの学習性能の限界を数学的・理論的に追及することがあげられます。「学習」という機能のもつ本質的な難しさというものはまだ十分には分かっていません。また、実際にデータを解析する時にも、多くの場合はそのままの形では扱えず、数学的な手法を適用できるデータ構造に変換する必要があります。テキストデータや、SNS(ソーシャルネットワークサービス)などの色々な形のデータにも使えるようにカスタマイズしたり拡張したりするという点において、まだまだやるべきことはあると思っています。
 また、時間とともに性質が変わっていくような対象を扱うのは非常に難しいです。データ解析では基本的に、解析対象の性質は時間が経っても変わらないと仮定した上で、過去のデータを元に予測をするのですが、その仮定は現実世界では容易に破られてしまいます。普遍的なものとそうでないものをきちんと分けたうえで、状況の変化をうまくとらえることは現在ではまだ難しく、そのための解析方法にはまだまだ発展の余地があります。変化を捉える技術は応用上非常に重要で、例えば異常検知などに使えます。
 例えば、パソコンのハードディスクが壊れる前に、そのことを教えてくれたら対処のしようがありますよね。このようなことは単にパソコン1 台だけの話ではなくて、工場の巨大な生産ラインや、原子炉の運転などにもいえます。
 また、企業のIT システムでは、外部からの攻撃など不穏な動きがないかを自動的に監視することができるようになります。システムの性質には時間とともに変化しているものがあって、その中から何らかの異常の予兆として現れていることをとらえることで、このような重要な使い方ができるようになると考えています。

Q.なぜデータ解析の研究を始められたのですか?

 はじめから決めていたわけではありませんが、1999年に社会人になった時は、ちょうど世の中でデータ解析のニーズが高まっている時期でした。1990年代後半から2000年にかけてのIT 革命によって、企業や大学などにIT システムの投入が進み、多くのデータが電子的に扱えるようになりました。しかし、データを取るためのインフラができてきて、データがたくさんたまってくると、今度はそれをどう解析して上手く利用するかが問われるようになってきました。研究を始めた時に、1 ~ 2 年くらいの模索を経て、今後データ解析技術はますます重要になっていくだろうという確信を抱き、この研究を始めました。

Q.企業の研究所と大学の違いについて教えてください。

 企業では、利益につながる技術を開発する必要があるので、自分の研究が近い将来、会社のビジネスにどのように貢献するかという道筋を示さなければならず、どうしても短期的な成果を求めがちになってしまいます。一方、大学での研究は、もちろん自分の研究と社会とのかかわりを考える必要はありますが、企業よりも長い目でじっくりと研究に取り組むことができますね。
 また、大学では、講義や研究指導などといった教育が非常に大きな要素です。私の所属する計数工学科はとても教育熱心な学科で、教育システムが大変しっかりしていると思います。大学に移ってまだ1 年目の私にとっては、まだ慣れないので大変ですが…。

(インタビュアー 大原 寛司)

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