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さわれるバーチャルリアリティ 科学技術は視覚、聴覚の出力を可能にしました。そして今、触覚という新たな感覚の出力装置が開発されつつあります。 今回お話を伺った篠田裕之准教授は、ご自身の研究のことだけでなく、今後の科学技術の展望などを熱く語って下さいました。
空中超音波触覚ディスプレイと いう装置を開発しました。この装 置では平面上に敷き詰められたた くさんの超音波振動子アレイから の超音波を空中で収束させて、空 中の直径約1 cm のスポットに圧 力を発生させることが可能です。 それぞれのアレイからの超音波 の位相や強度を制御することによって、さまざまな圧力のパターンを作り出すことが可能です。このディスプレイとホログラムの 3 D 映像技術とを組み合わせれば、空間に浮く、触感のあるバーチャル物体をつくり出すことができます。このことを応用して、私たち の研究室では手をかざしておくと、 上から触感を持ったバーチャルのボールや雨粒が落ちてくるような ディスプレイを開発しました。
Q.人工的に触感をつくり出す技 術は将来どのようなものに応用が 期待できますか? まずは身近にあるものに応用さ れると思います。例えばバーチャ ルな入力装置などです。普段みな さんスイッチというと物理的実体 をイメージするでしょうけれど、 視覚に対する情報と触覚のフィー ドバックがありさえすればいいの です。だから空間に人工的に触感 を提示する技術を用いればバー チャルのスイッチが作れます。 例えば病院にあるスイッチをバー チャルのものに置き換えれば衛生 的ですね。他には座った時にその 人の届きやすい所にスイッチが現 れるといったことも考えられます。 テレビを見ているときにその辺に スイッチが浮いていて、チャンネ ルを変えられたらすごく便利です よね。 でも私が本当に期待しているのは、この触感を人工的につくり出す技術が、これからの時代の人間 をサポートしていくということな のです。 Q.「これから時代の人間をサポートする」とはどういうことですか。 人の体験を作りだすということ です。人間の体験には触覚が必要 不可欠ですから。かつての科学技術というのは主に人間の衣食住にかかわる事柄に 向けられてきました。それは当時の人間が衣食住の欲求を満たされ るか満たされないかギリギリの状態で生活していて、それがちゃんと満たされることが幸せであったからです。 でも今や人間は、衣食住など当たり前になり、それが満たされることにそれほど幸せを感じなくなりました。今人間が求めているのは、人とのつながりだとか、自己実現だとかもっと高次な欲求なのです。 私はそのような欲求を満たすためには体験というものが必要不可欠だと思うのです。そしてそのためにはこの触覚に対 する出力をつくり出す技術が、今 後役に立つのではないかと考えています。 Q.他にはどういったものの研究 をなさっているのですか。
Q.学生に向けてメッセージをお 願いします。 今すべき基本的なことをきちんと勉強してください。現代は若い時から個性的であれとか独創的であれとか、難しいことを求められすぎていると感じます。 しかし私 はもっと当たり前のことを大切にすべきだ思うのです。イチローの ように夢を追えと言ったって、全員がイチローのようになれるわけ ないのですから。 私は独創性というのは、研究室に入ってから訓練して身につけるものだと思います。 私自身そうでした。だからあまり 難しいことを考えずに、学生時代にはその時すべき勉強をきちんと することが大切だと思います。 |
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