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 Vol.37 2010年 6月号 原子力国際専攻特集

Vol.37 6月号
次世代の原子力システム


  「原子力」というとこれからのエネルギーとして期待できる一方で、どうしても数々の原発事故を思い出し、恐ろしいエネルギーだと考える人も多いのではないでしょうか。
 そこで、原子力と社会の関係を考える原子力社会工学、中でもリスクコミュニケーションを中心に研究なさっている、工学系研究科原子力専攻の木村浩准教授にお話を伺ってきました



Q.リスクコミュニケーションは、いつ頃出てきた概念なのでしょうか?

 リスクコミュニケーションという言葉が日本で初めて使われたのは1988年ですが、本格的に使われ始めてからまだ10~15年くらいしか経っておらず、この概念自体は新しいものです。昔から原子力はリスクがあるものでしたが、以前は専門家の中でリスクを全部処理して、社会には安全なレベルに達したものを出していただけでした。
 ただ、環境問題が報道されるようになり、技術にはリスクがあり、それが社会に影響を及ぼしていると知られてきた中で、リスクがあるなら専門家も知らせる責任があるし、それを社会の側も知る権利があるという流れが出てきました。リスクに関しての情報交換をし、有益であるという理由のみならず、社会から要望を受けて成立する技術にしたい。そのために、リスクコミュニケーションが必要になってきたのです。





工学系研究科 原子力専攻
木村浩准教授


Q.なぜ先生はリスクコミュニケーションに注目したのですか?

 以前は廃棄物処分の研究をしていましたが、研究者だけで閉じて技術研究していても、社会の声を聞かない限り技術は実現していかないだろうと考え、こういう社会的な話に入って行きました。それこそ最初は世論調査などのアンケートを使って、リスク認知というものがどうなっているのか研究しました。


Q.原子力と社会の関係について教えて下さい。

 原子力施設は迷惑施設と呼ばれ、社会からはリスクが非常に高いと思われています。しかし実際は、放射線の検知は確実にできるため、そのリスクは非常に厳密に管理されていて、十分なレベルで安全性を確保されているのです。原子力に対する社会の意識は、こわい、不安だというものが大きい一方で、技術者は安全が確保される技術であると考えています。こういった外部の人と内部の人の認識のずれにより、原子力は社会的に受け入れられにくい技術になっています。ただ、社会が技術のことを全部理解しないと安全にやっているか確認できないシステムは市民や社会に大きな負担がかかります。その負担を軽減するためにあるのが法律です。社会に法律があってそれが遵守されていれば、信頼できるな、安全が確保されているな、と社会は判断できます。そこで、そういう法律をどうやって作るか、という部分まで研究しています。
 また、私は、実際に調査として市民と話したり、講師として地域の説明会に行ったりして社会と関わっています。社会に原子力を知ってもらうチャンスを活かそうと思っていて、同時に市民から学びながらフィードバックして研究に取り組んでいく努力をしています。

図:知識涵養のためのコミュニケーションプロセス。人々に問題を認知させ、関心を喚起し、知識を向上させるという3 つのプロセスが必要となる。


Q.原子力を工学部で研究するのはなぜですか?

工学は、システム全体を俯瞰しながら、同時に、要素を突き詰めてものを作っていかなければなりません。社会の成り立ちも同じような側面を持っているので、工学で培われた感覚が社会というシステムを作るときにも大きく効くのです。全体の問題を把握しながら、同時に、コミュニケーションとしてどこを突き詰めていくのか、全体の問題のどこにフィードバックしていくのかを考えていく。そのプロセスは、まさに工学的な感覚が活かせる分野なのです。


Q.今後の展望を教えてください。

 社会とのコミュニケーションだけではなく、学会などでこの分野の研究者とコミュニケーションをとる場を設計していこうとしています。いろんな分野で点在している研究者をリンクして、その中でのコミュニケーションを活発化することによって新たな形で議論していこうと考えています。


Q.最後に、読者へ一言お願いします。

 答えのない問題をどうやって解決するかにこそ頭を使うべきなので、そういう問題に直面した時に、逃げないでほしいです。そういうところで逃げなければ解決方法はおのずと見えてきます。(インタビュアー )
(インタビュアー 大嶽 晴佳)

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