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 Vol.36 2010年 4月号 新領域創成科学研究科特集

Vol.36 4月号
持続可能な発展と日本の温暖化対策の政策決定への貢献~政策と技術の融合~

 二人目は、環境システム学専攻の松橋隆治教授です。現政権の公約でも話題になっている、温室効果ガス削減の話などを伺いました。日本の政権公約にも関わる分野を扱っているだけあって、日本を良くしようという熱意を持っていらっしゃることが伝わってくるインタビューでした。

Q.まず、先生が行っている研究の内容を教えてください。

 中心となっているのは、温室効果ガス削減に関する問題と、持続可能な発展のできる社会システムの実現です。私が若いころは、発展の持続可能性を「ハーマン・デイリーの三原則」(注1 )などで定量的に表せると思っていました。しかし、これは自然や環境の分野にとどまらない、経済・社会・文化を含めた人間生活の究極的な問題であり、全てを研究し尽くすことはできないと感じるようになりました。そこで、状況を限定し、例えば「クリーン開発メカニズム(CDM)」(注2 )を行う際、このCDM が地域の持続可能な発展に貢献していることが京都議定書を守る上でも重要であり、この貢献の度合いを数量で表せないか研究しました。




松橋隆治教授
新領域創成科学研究科
環境システム学専攻

この話題は、研究室の学生が卒業論文(システム創成学科知能社会システムコース)や修士論文(新領域創成科学研究科環境システム学専攻)で扱い、優れた研究として表彰されました。

(注1 )ハーマン・デイリーの三原則:持続可能な発展において必要といえる3 つの原則で、「枯渇する資源の消費速度は、再生可能資源に転換する速度以下でなければならない」「環境排出物の排出速度は、自然に吸収される速度以下でなければならない」「水産物や農産物を捕獲・収穫する速度は、再生する速度以下でなければならない」の3 つを言う。

(注2 )クリーン開発メカニズム:途上国での省エネルギーや植林によって削減される、二酸化炭素の排出量を、先進国の排出実績として認める制度。日本はこの制度を利用して、官民合わせてすでに4 億5千万トン分の契約を行っている。



Q.これから日本の社会に貢献していくうえでやりたいことはありますか。

 2020年までに1990年当時の温室効果ガスの排出量から25%削減させるという温暖化対策に関する公約に対して、賛成と反対の両方の立場の人間がいます。その中で、問題を解決しながら、日本がより発展するにはどうすればいいか考えています。東京大学には、行政の意思決定を行う委員会や審議会などに関わる人が多くいます。政策科学を扱っていくうえでその環境をプラスにとらえ、積極的に関わっていこうとしています。過去には「国内クレジット制度」(注3 )を発案し、現在の京都議定書の、2010年までに温室効果ガスを1990年当時に比べて6 %削減させるという目標が現状でも超過達成できるところまで持って行きました。学内でも全ての蛍光灯や東大病院の冷暖房を新しいものに取り換えることで、二酸化炭素の排出削減に貢献しました。
 25%削減させるという公約は、並大抵の努力では達成できない難しいものです。さまざまな制度や技術を創り出して、全力で達成を目指す人もいれば、公約そのものを最初から否定する人もいます。そのような意見の違う人々がいがみ合っていても、日本は発展せず、国際的にも弱くなってしまいます。そこで、さまざまな立場の人々の意見をまとめたり、新しい制度や研究開発の芽を育てたりすることで、社会や政策の決定に還元していくことを目指しています。

(注3 )国内クレジット制度:自主行動計画を持つ大企業が、国内の中小企業や一般家庭による削減事業を支援し、この削減分をクレジットとして認めるもので上記CDM の国内版ともいえる制度。

Q.読者のみなさんにメッセージをお願いします。

 小宮山前東大総長の言葉をお借りすると、「勉強は全てを覚えるより、原理や理論を理解することが重要だ」と思います。原理や理論をきちんと理解し納得していれば、あとで見直せばすぐに思い出せるので、そのような勉強をして欲しいです。
 また、好きなことややりたいことに、強い意志を持って取り組み、その若いエネルギーによって社会に活を入れて欲しいです。経済学者のケインズもその著書の中で「経済発展は、数学的な計算などによる合理的な意思決定だけではなく、血気/ animal spirit を持って後先考えずにやることによるエネルギーによっても引き起こされる」と述べています。みなさんも、若いうちは間違ってもやり直しがきくので、攻撃的に物事に挑戦してください。


(インタビュアー 森西 亨太)

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