東京大学大学院農学生命科学研究科土壌圏科学研究室

土壌圏科学研究室の歴史・資料

土壌圏科学研究室の歴史

 土壌圏科学研究室は、明治26年(1893年)、帝国大学農科大学の地質学・土壌学講座として開設されました。農科大学時代から現在まで続いている数少ない研究室のひとつです。
 講座開設時は脇水鉄五郎先生が地質学に基づいた基礎土壌学の講義・実習を行いました。脇水先生は「樺太ポドソルの発見」や「関東ロームの浅海堆積説の提唱」等の実績を残されました。
 昭和3年(1928年)3月の脇水先生の退官後、農芸化学・化学第一講座の麻生慶次郎先生が昭和11年(1936年)3月まで土壌学の講義を分担しました。麻生先生は「土壌粒子の粒径分析手法」を確立し、「酸性土壌の成因」について重要な研究を行いました。
 昭和17年(1942年)から地質学・土壌学講座は農芸化学科の所属となり、教授に就任された塩入松三郎先生によって土壌学の講義と実習が行われました。塩入先生は「土壌膠質成分の微量分析法」を確立し、「水田土壌の硝化脱窒・老朽化水田の改良に関する研究」に対して文化功労者に顕彰されました。
 昭和25年(1950年)からは弘法健三先生が土壌学の講義を担当し、「開墾地土壌の熟畑化過程に関する研究」や「火山灰土壌の生成過程の研究」を行いました。これらは日本に分布する新旧各種火山灰土壌の生成過程を初めて統一的に論じた研究として評価されています。
 昭和43年(1968年)から高井康雄先生が教授に就任されました。高井先生は水田土壌および土壌微生物生態に関する研究や、温帯・熱帯の農地生態系の比較研究などの広範な領域において、土壌学や環境科学に関する数多くの先駆的な成果を発表されました。特に、高井先生が確立された「好気的から嫌気的微生物代謝へと段階的に遷移する水田土壌の物質代謝に関する基礎理論」は、水田で起こる水稲生産や環境に関わる種々の現象が合理的に説明できる理論であり、水田土壌学の根幹をなし、水稲生産と環境保全の土台となる、まさに金字塔と言える業績です。
 昭和60年(1985年)から和田秀徳先生が教授に就任されました。和田先生は、微視的レベルでの土壌研究が、それ自身で意義があるだけでなく、巨視的レベルでの土壌の理解を著しく深めることを示され、従来の土壌学にはなかった新しい概念となるこれらの研究成果を「動的マイクロペドロジー」と名付けられました。そして、「“動的マイクロペドロジー”に基づく水田土壌の研究」の研究を展開されました。
 平成元年(1968年)から松本聰先生が教授に就任され、「耕地土壌の劣化と修復に関する研究」を展開されました。
 平成14年(2002年)からは妹尾が教授となり、水田土壌の脱窒微生物に関する研究、畑土壌の温室効果ガス生成・消去微生物と削減技術についての研究、水田土壌のメタゲノム解析、水田土壌の窒素肥沃度維持の微生物メカニズム解明などの研究を行っています(→ 研究内容のページへ)。

歴代の研究資料

農科大学時代の開設当初から120年あまり続いている土壌圏科学研究室には、歴代教授の残された数多くの研究標本や資料がありました。その一部をご紹介します。 貴重な標本や資料を後世に残し今後の研究に役立てるため、平成29年春に東京大学文書館と博物館に移管しました。

歴史的土壌標本

外国製実験装置のカタログ

脇水先生の研究資料

塩入先生の研究資料

その他の研究資料