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アズキゾウムシを寄主とし、コマユバチの1種とゾウムシコガネコバチの2種を寄生蜂とする1寄主−2寄生蜂の「頭でっかち」の食物網を実験的に設け、その長期動態を調べた。2種の寄生蜂は、産卵数と寄生効率、寄生効率における寄主密度依存性、機能的反応のタイプなどが、すべて対照的な性質を持っている組み合わせである。 一定量のアズキを更新しながら累代飼育を続けた結果、この3種系において非常に複雑な動態が現れ、最大リアプノフ指数の推定値が正になるなど、カオス的挙動が観測された。これは実際の生物集団の個体数動態でカオスが観測された、世界でも希な研究例である。
アズキゾウムシの野生型系統と遺伝的劣化系統(体サイズが小さく産卵数・卵の孵化率ともに低い)とで、齢別産卵数、齢別生存率を計測し、レズリー推移行列を得た。それをもとに、推移行列の最大固有値をべき乗法で求め、行列要素に対する固有値感度を解析した。その結果、羽化直後の成虫の繁殖力とその卵の孵化率に対して、最も大きな感度を示すことが分かり、遺伝的劣化系統の適応度低下に最も影響する形質が特定できた。
アメリカ合衆国アリゾナ州の2つの国立公園を利用し、7箇所の方形区を設け、1998年と1999年の2年間に渡って、寄主植物(主にマメ科、他にクロウメモドキ科)−マメゾウムシ科昆虫−寄生蜂の3栄養段階に渡る定量的な「食う−食われる」関係の調査を行った。1998年は過去20年間で3番目に冬期(12月〜3月)の降水量が多かった年で、反対に、1999年は過去20年間で最低の冬期降水量だった。冬期降水量は、夏場のマメ科の種子生産量に大きく影響することが分かっている。ところが、調査の結果、寄主植物の種子生産量の大きな変動を受けて、マメゾウムシ・寄生蜂ともに、その個体数は各種とも数十倍から100倍も変動したのに、その「食う−食われる」の構造パターンはほとんど影響を受けず、多くの群集インデックスで共通のパターンが得られた。
そのような群集構造のパターンがなぜ頑強に保持されるのかを、格子モデルを用いたシミュレーションにより解析している。とくに、CV2解析を行い、密度に依存しない分散成分が、局所個体群の非同調的動態を通じて、いかに群集構造の安定化に効いているかを解析中である。
Wolbachiaは、節足動物やセンチュウに広く寄生し、宿主の性表現や生殖を操る細胞内共生細菌である。アズキゾウムシには、系統的に異なる3系統(Con,
Ori, Aus)のWolbachiaが同一個体に多重感染しており、しかも、その頻度は日本全国どの個体群でも90%以上という高頻度を示す。これは世界でも、非常に希な例である。さらに、そのうちAus系統は、その遺伝子のいくらかを細胞質から宿主のX染色体に転移させていることが明らかとなった。なぜこんなにも高頻度で多重感染が生じたのか?
この問題を解明するため、細胞質不和合性/非感染宿主の適応度コスト/垂直感染率の3要因を含め、さらに、アズキゾウムシのメタ個体群系を想定し、各々の局所個体群は、flush-crash
cycleという移住−増殖−生息地崩壊−消滅を、頻繁に繰り返すとした。これは、アズキゾウムシの野外での状況に近いと考えられる。その結果、単一の大きな連続する個体群よりも、はるかに多重感染が進化しやすいと言う予測を得ている。この研究は、当研究室のOG・今藤夏子、産業技術総合研究所の深津武馬氏との共同研究である。
サイカチマメゾウムシはサイカチの種子を食害し、日本産野生マメゾウムシ中、最大の体サイズの種である。このマメゾウムシは、1齢幼虫が卵殻の外に這い出て、しばらく辺りを徘徊してから、サイカチ種子に穿孔し潜り込む。本種の幼虫の種子潜入分布を実験系で観測したところ、有意な均等分布を示し、多くの場合、1粒の種子に1匹の幼虫が潜り込んだ。幼虫密度を人為的に高めてやると、複数の幼虫が1粒の種子に潜り込んだが、羽化成虫の体重は、潜り込んだ幼虫数に無関係に、一定した値であった。さらに、時々2匹が同時羽化する場合があったが、その場合も大きい方の体重は、単独羽化の場合に比べって変わらなかった。よって、1粒の種子内では資源が余っているにもかかわらず、勝ち残った幼虫は種子資源を独占しており、極端なコンテスト型競争であることが分かった。
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