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生命分子間相互作用解析:

生命分子間の相互作用は、非共有結合の組み合わせによる特異的多点結合により形成されています。本研究室ではこれらの多点結合の相互作用への寄与を明らかにするために、抗体―抗原、受容体―リガンド、多量体形成蛋白質など様々な蛋白質を題材とした解析を行っています。アミノ酸等を用いた溶媒制御によって蛋白質をハンドリングしながら、部位特異的変異導入を活用し、等温滴定型熱量測定(ITC)、表面プラズモン共鳴(SPR)、示差走査型熱量測定(DSC)等の物理化学的手法を用いた速度論的/熱力学的解析、円偏光二色性測定(CD)をはじめとした分光学的解析、さらには結晶構造解析といった手法を駆使して、多角度的に生命分子間相互作用を精密解析し議論することにより、特異性・親和性創出機構の解明を試みています。これらの知見を踏まえ、高機能かつ優れた物性を持つ機能性分子の開発や特定の分子間相互作用を制御する分子種の探索を通じて創薬基盤の構築へと繋げるとともに、生命における“相互作用”の本質を理解することを目指しています。

biomolecularinteraction



生命システムの理解を指向した相互作用解析:

生命システムは、蛋白質、核酸、脂質、糖、有機小分子など多様な分子が秩序をもって互いに相互作用することによって組み立てられています。生命システムがどのように構築されているかを理解するためには、これら生命分子間の相互作用を精密に解析し、理解することが重要です。本研究室では、蛋白質―蛋白質間、蛋白質―生体膜間、蛋白質―核酸間の相互作用を主な標的とし、熱力学解析・速度論解析・構造解析を駆使して、分子レベルで定量的な議論をしていくことにより、生命分子間の相互作用メカニズム解明を通じた、生命システムのより深い理解を目指しています。


研究テーマ例
  • 抗体Fc領域とFc受容体複合体の構造解析
  • 生体膜と相互作用する蛋白質の物性と作用機序解析
  • 核酸結合蛋白質−核酸間相互作用の熱力学的解析
  • 翻訳後修飾に関連する蛋白質相互作用解析

  • biosystem



    疾患治療を指向した相互作用解析:

    疾患細胞(例えばがん細胞)では、疾患特異的に異常発現した蛋白質があります。これらの蛋白質によって正常細胞とは異なる分子間相互作用が生じることから、正常な細胞内システムが破綻し、細胞が異常に増殖・機能・転移することで疾病が引き起こされます。そこで、有力な治療法の1つとして注目されているのが、疾患特異的な蛋白質の分子間相互作用の人為的な制御です。本研究室では、主にがん化に関わる蛋白質−蛋白質間相互作用に関する研究をしています。細胞内の正常なシグナル伝達を乱す蛋白質や細胞接着に関わる蛋白質などを標的としています。

    また本研究室では疾患を引き起こす微生物にも着目しています。近年の病原性微生物に関するゲノム解析により、疾病に関与する因子(病原因子)が新規に同定されています。感染症に対する創薬研究を行う上で、これらの病原因子蛋白質の分子機構を解明することは極めて重要です。本研究室では、院内感染の原因菌として知られる黄色ブドウ球菌と、溶連菌感染症を引き起こすレンサ球菌に焦点を当てて研究をしています。例えば宿主のヘモグロビンからヘム鉄を奪い取り、自身の菌体内部にヘム鉄を取り込むことにより増殖能を維持するシステムを対象の1つとしています。このような病原因子蛋白質群の分子マシーナリーを相互作用解析と構造解析により原子レベルで記述し、病原性微生物によって引き起こされる疾患の治療あるいは予防につながる研究を展開しています。


    研究テーマ例
  • シグナル伝達に関与する蛋白質の相互作用解析
  • 細胞接着に関わる蛋白質の構造・相互作用解析
  • がん関連蛋白質の細胞外システムにおける相互作用解析
  • 病原性微生物の増殖システムに関連する相互作用解析
  • 病原性微生物の宿主侵入に関連する相互作用解析
  • biomolecularinteraction



    材料創製を指向した相互作用解析:

    蛋白質を用いた機能性分子は医薬品のみならず、エネルギー産業や機能性材料など様々な分野への応用が期待されています。例えば毛髪は蛋白質の高度な自己組織化と線維化によって構成されており、また微生物の世界においても、蛋白質の重合によって形成された線毛と呼ばれるナノメートルサイズの超極細線維が菌体表層に存在します。これらの分子レベルでの蛋白質間相互作用解明によって、合理的な線維形成制御を可能とし、次世代の産業展開が期待されます。本研究室では分子機械としての蛋白質高次構造を利用し、物性解析の知見を基により高機能かつ優れた物性を持つ分子種の合理的設計を目指した研究を行っています。


    研究テーマ例
  • 環境応答性重合性蛋白質の設計に基づく機能性蛋白質高次構造体の創製と利用
  • 毛髪関連蛋白質の構造制御を指向した構造化メカニズムの研究と応用
  • biomolecularinteraction


    さらに、上記のような「生命システムの理解」「疾患治療」「材料創製」を指向した相互作用解析の先に、抗体や低分子を活用した医薬開発・生命分子探索・材料制御などの応用展開を見据えた研究を行っています。本研究室では、バイオ医薬品として応用される抗体、また低分子薬剤の両者について、新しい活性分子作製へとつながる技術の創製を目指した研究を進めています。


    バイオベター・バイオスペリア時代の抗体エンジニアリング:

    抗体は抗原分子を高い親和性と特異性によって認識するため、バイオ医薬品や診断薬として多様な用途に使われています。今世紀に入り、抗体医薬を中心としたバイオ医薬が医薬品売上高上位を占めるようになり、一方で次世代の抗体には物性の改良(バイオベター)、さらなる高機能化(バイオスペリア)が求められるようになっています。本研究室では抗体の抗原認識を中心とした様々な物性について、「抗体を知る」「抗体をさがす」「抗体を作りかえる」という3つの視点から、多角度的な解析、エンジニアリングを行うことで、新時代に求められる抗体分子の創製に寄与する研究を行っています。

    「抗体を知る」抗体の分子認識機能、物性について、SPRやITCなどの物理化学的解析手法、構造生物学に加え、細胞生物学的手法を組み合わせ、分子認識における各アミノ酸残基の役割を記述します。

    「抗体をさがす」ファージディスプレイ法による抗体改変、人工ライブラリーからの抗体探索を行います。M13バクテリオファージの表面に抗体ライブラリーを提示し、標的に対する親和性などを指標として抗体を選択します。

    「抗体を作りかえる」抗体の小分子化、融合抗体の作製によるターゲティング能の変換、化学修飾による多機能化を行っています。さらに、計算科学による抗体改変を通じて、抗体の抗原親和性のデザインによる向上を目指した研究も行っています。


    研究テーマ例
  • 抗体の分子認識メカニズムの解明:蛋白質抗原から低分子抗原まで(がん抗原蛋白質、オリゴペプチド、翻訳後修飾、金属錯体など)
  • シングルドメイン抗体VHHの分子認識メカニズムの解明
  • 新規デザイン人工ライブラリーを用いたファージディスプレイによるVHHの探索
  • DDSやイメージングのための改変抗体の作製と修飾:多重特異性抗体、抗体薬物複合体(ADC)など
  • 計算科学に基づいた合理的デザインによる抗体改良
  • biomolecularinteraction



    物理化学的アプローチによる低分子創薬:

    生命分子相互作用を制御する低分子化合物の探索とその最適化に関する研究を行っています。低分子薬剤の開発は、近年の標的分子の難易度の高さと多様化(膜蛋白質、蛋白質―蛋白質間相互作用、天然変性蛋白質など)により、標的分子の同定や調製、また探索方法(スクリーニング)の構築といった薬剤開発初期の段階で滞る例が少なくありません。従来の探索技術では対応できないことも多いのが現状です。したがって生命分子の物性を正確に知り、その機能・相互作用を精密に解析できる技術を利用することで、新たな探索技術を開拓することが望まれます。

    そこで、探索(スクリーニング)、選抜(バリデーション)、そして最適化(ヒットtoリード、オプティマイゼーション)にて物理化学的解析手法(SPR、ITC、DSCなど)を活用し、相互作用の“質”を定量的に解析することによって新規な低分子化合物の取得を試みています。標的とする生命分子は、酵素からPPIまで多岐にわたります。また、フラグメントライブラリー、PPIライブラリー、天然物ライブラリーなど、さまざまなライブラリーを用います。本学創薬機構DDIとの緊密な連携のもと低分子化合物ライブラリーを活用することにより、治療薬等への応用のみならず、生命科学研究へ貢献する機能性薬剤を創製します。


    創薬機構DDIにおける支援事業

    研究テーマ例
  • 薬剤探索における物理化学的解析技術の開発
  • 蛋白質-蛋白質間相互作用PPI阻害剤の探索
  • Fragment-based Drug Discovery
  • 新規低分子薬剤の精密な相互作用解析
  • biomolecularinteraction