(3) フィールド調査
~陸上付加体にみる沈み込み帯の断層運動・流体移動リンクの解明~
陸上付加体の野外地質調査と、採取したサンプルの物性測定・化学分析から、付加体の変形過程と流体移動・物質循環の解析を行っています。四国四万十帯牟岐地域、九州四万十帯延岡地域(図7)、美濃帯犬山地域、米国アラスカ州コディアク島などがこれまでの主なフィールドです。四万十帯では、テクトニックメランジュの変形構造解析、鉱物脈の主要・微量元素・同位体分析(図8)などから、プレート境界の深さ5-10km程度の場所における流体の起源や組成に関する研究を行いました。
四万十帯は若い海洋プレートの沈み込みにより形成された付加体で、南海トラフの陸上アナログに近いと考えられます。一方、美濃・丹波帯や足尾帯、秩父帯、北部北上帯などのジュラ紀付加体には、1億年を超える遠洋性堆積物(チャート)の連続堆積が認められ、古い海洋プレートが沈み込んでいたという点で日本海溝の陸上アナログと考えられます。この観点から、2011年東北地方太平洋沖地震の震源付近での変形の実態を探るべく、ジュラ紀付加体に注目して野外調査と試料分析を行っています(図9)。
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図7 四万十帯北川層群の厚いタービダイト層
図8a 四万十帯延岡衝上断層周辺の剪断帯に産するアンケライト脈
図8b 電子線プローブマイクロアナライザー (EPMA) によるアンケライト脈内部のFe組成マッピング像(寒色系ほど低いFe濃度、スケールバー0.1 mm)。断層沿いの流体の酸化還元状態が変化し、脈の成長とともにFe量が減少していることを示す (Yamaguchi et al., 2011, EPSL)。
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図9 美濃帯犬山地域の褶曲したチャート層
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