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 プレスリリース

平成24年5月16日

東京大学のアレンジによる超小型大学衛星4機のクラスター打上げ決定

東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻 教授 中須賀真一

国立大学法人東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻中須賀研究室と次世代宇宙システム技術研究組合は、4機の超小型大学衛星をロシアのドニエプルロケットを使ってロシア国内のヤスネ基地からクラスター打上げ(複数の衛星を同時に打上げること)するアレンジを進めており、その打上げが本年(2012年)末と決定しました。4機の超小型衛星はそれぞれ下記の各大学で独自に開発されていて、主に衛星リモートセンシング技術の軌道上実証を目的としています。このうち「ほどよし1号機」は東京大学が中心として開発中です。

ほどよし1号機  :東京大学と次世代宇宙システム技術研究組合
ChubuSat-1  :名古屋大学および大同大学
TSUBAME     :東京工業大学と東京理科大学および宇宙航空研究開発機構
QSAT-EOS    :九州大学

これらの衛星はヤスネ基地(ロシアのオレンブルグ州)のサイロ(地下発射装置)から打上げます(添付資料1)。各衛星は打上げ時には一辺60cmの立方体にほぼ収まる大きさで、重量は60kg弱です。これらの衛星はドニエプルロケットの第3段の下部に組み込まれて打上げられ(添付資料2)、リフトオフ(地面を離れる瞬間)約15分後、高度500km - 600kmの太陽同期軌道に1機ずつ、わずかに異なる軌道速度で順に投入されます。

東京大学の中須賀教授は内閣府の「最先端研究開発支援プログラム」において世界のトップを目指す30の最先端研究課題及びそれを実施する中心研究者の1人に選ばれました。 その最先端研究として、リーズナブルなコストや信頼度で世界をリードする超小型衛星を、利用や打上げを含めて開発する通称「ほどよしプログラム」を進めています。今回の打上げは、将来の商用超小型観測衛星クラスターの国際展開を視野に入れ、「ほどよしプログラム」の1ステップとして海外の商用ロケットを使って超小型衛星のコンステレーション(複数機の衛星を地球軌道上に広くちりばめて連携して運用する方式)を実現しようとする活動の一環として、東京大学がロケット会社との調整を進めて実現しました。

なおドニエプルロケットはロシアの戦略ミサイルSS18を平和転用したもので、1999年の初号機の打上げ以来、18回の打上げのうち17回成功し、高信頼性や高精度の軌道投入、多数のクラスター打上げの実績があります。同ロケットはJAXAのOICETSやISASのINDEXを含め、これまでに17カ国の計62機の衛星を打上げてきました(添付資料3)。

リリース文の詳細はこちらからご覧ください。

添付資料1
ドニエプルロケットのサイロからの打上げ(コスモトラス社提供)
ドニエプルロケットのサイロからの打上げ

ロシアのヤスネ基地   (earth image from Google earth)
ロシアのヤスネ基地

ヤスネ基地の衛星試験棟(コスモトラス社提供)
ヤスネ基地の衛星試験棟

4機の超小型衛星のチェックとロケットへの組込み作業を行うクリーンルーム(コスモトラス社提供)
4機の超小型衛星のチェックとロケットへの組込み作業を行うクリーンルーム

クラスター打上げの設計審査
クラスター打上げの設計審査

 

添付資料2
4機の超小型衛星のドニエプルロケット搭載状態(コスモトラス社提供)
4機の超小型衛星のドニエプルロケット搭載状態

 

添付資料3
ドニエプルロケットの概要(コスモトラス社提供)
ドニエプルロケットの概要

 

ドニエプルロケットの打ち上げ実績(コスモトラス社提供)
ドニエプルロケットの打ち上げ実績

 


東京大学が開発中の次世代超小型地球観測衛星 「ほどよし1号機」の打上げ時期・ロケット決定

東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻中須賀研究室と次世代宇宙システム技術研究組合は、次世代の超小型地球観測衛星「ほどよし1号機」を開発中で、本年(2012年)末にロシアのドニエプルロケットを使って打上げます。

「ほどよし1号機」は一辺60cm以内の立方体、重量60kg以下の超小型衛星で、地球観測をミッションとします。(外観図を添付資料1に、主要諸元を添付資料2に示す)。この衛星にはコンピュータ、リアクションホイールやスターセンサ、MEMSジャイロやGPS受信機などが搭載され、高度な3軸姿勢制御を行うほか、無毒な燃料(過酸化水素水)を使って軌道制御も行います。主な搭載機器は次世代超小型衛星用に独自に開発されたもので、衛星の製造にあたってはアクセルスペース社(東大発のベンチャー企業)の協力を得ています。

「ほどよし1号機」には地上分解能約7m、観測幅約28kmの光学センサ(青、緑、赤、近赤外のマルチバンド)が搭載され、高度500-600kmの太陽同期軌道から地球を観測します。従来この分解能と観測幅の地球観測には150kg以上の衛星が使われてきましたが、「ほどよし1号機」では60kg以下の衛星で実現します。

「ほどよし1号機」は、内閣府の「最先端研究開発支援プログラム」の研究の一環として、リーズナブルなコストや信頼度で世界をリードする超小型衛星の開発を目指す通称「ほどよしプログラム」で開発された最初の衛星です。この衛星は1機あたりの製造コストが格安なうえ小型軽量なため打上げコストも安く、限られた予算で多数の衛星を打上げて衛星クラスターを構成し、観測頻度を飛躍的に高める事が可能になります。

地上分解能6.8m、観測幅約28kmの光学センサは環境や災害の監視、さらにはガス田施設のモニタリングなど産業分野での利用にも適し、衛星の製造や打上げコストの安さと相まって、多数の衛星を使った高頻度の観測が期待されています。この利用実証のため「ほどよし1号機」は打ち上げ後、環境や資源エネルギー分野を含めた内外の衛星リモートセンシング研究機関や企業と共同実証を行う予定です。さらに2013年末頃には2号、3号、4号も打上げる予定で、これらの衛星とのクラスター運用も検討中です。

添付資料-1  ほどよし1号機の外観図
ほどよし1号機外観図 外観図

 

添付資料-2 ほどよし1号機の主要諸元
<主要諸元>

ミッション系性能
 撮影方式 プッシュブルーム方式
 地上分解能 6.8[m]
 バンド B(450-520[nm]), G(520-600[nm]), 
R(630-690[nm]), NIR(780-890[nm])
 信号ノイズ比
 (太陽高度 60 度、アルベド 0.5)
B(57), G(74), R(80), NIR()
 刈幅 27.8km
 最大連続撮影距離 179km
 ビット深度 12 ビット(データは16ビットでパッキング)
軌道
 軌道種類 太陽同期軌道
衛星バス系
 サイズ 60 x 60 x 60[cm]以内
 質量 60[kg]以内
 ダウンリンクレート 10-20[Mbps]
 発生電力 50[W]
 姿勢制御 三軸制御(地球指向)

 

添付資料-3
環境試験中のほどよし1号機の開発モデル
開発モデル

電波暗室で試験中のほどよし1号機の開発モデル
開発モデル

独自開発の搭載リアクションホイール
リアクションホイール