大隅先生、ノーベル賞ご受賞、誠におめでとうございます。大隅先生の御発見が世界的に評価され、人類の歴史に深く刻まれたことを心よりお祝い申し上げます。
私の出身校の筑波大学附属駒場高校の貝沼喜兵先生は、大隅先生からファージや大腸菌等の分子生物学実験の材料やプロトコールを提供して頂き、生物実験の授業で使っていました。つまり、大隅先生には高校生の時から30年近くお世話になったことになります。
1989年4月に東京大学教養学部に入学した時、最初に受けた生物学の講義の先生が、大隅先生でした。お名前は高校生の時から聞いていたので、どんな先生かワクワクして一番前の席に陣取って待っていました。入ってきた先生がヒゲを生やしていらっしゃったので、やっぱり大学の先生は違うと思いました。今でも、コーン・スタンプ生化学の教科書を片手に、大隅先生が展開される分子生物学の講義に胸躍らせた記憶が鮮やかに蘇ってきます。時々、講義が終わると大隅先生の研究室に遊びに行き、蛍光顕微鏡で酵母細胞を見せて頂きました。あの時期にオートファジーの現象を大隅先生は顕微鏡で発見されていたのだと思うと、非常に貴重な経験でした。大隅先生は顕微鏡で見ることの重要性を熱心に説かれていました。結局、私はそのまま現在もイメージング技術に軸足を据えて、研究に取り組んでおります。
東京大学理学部植物学教室に進学後も、現在に至るまで、折りに触れて叱咤激励してくださり、感謝の念に堪えません。3年前には、私達が企画したシンポジウムを最初から最後まで聞いて頂きました。約10年ぶりに私の仕事の話を聞いてくださり、懇親会の席で「面白い仕事をしているね。」と感想を頂いた時は感無量でした。
これからもご指導ご鞭撻の程、どうぞよろしくお願いいたします。末筆になりましたが、大隅先生のご健康とご研究の益々の発展を心より祈念いたします。
本内容は細胞生物学会HP・大隅良典先生ノーベル生理学・医学賞受賞記念の寄稿ページに掲載された文章と同じ文章を掲載しています。
http://www.jscb.gr.jp/jscb/contribution/index2.html
2016年10月19日 松永PI記