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東京大学牧原ゼミ「読み破る政治学ハイスクール編」2020年春期ゼミナールで行われたこと

(1)はじめに


 これは表記の高校生向けゼミナールで何が行われたかを記録したものです。大学が各分野に関心の強い高校生にエクステンション教育を行うことは、年々進みつつあります。そこで、このプロジェクトでは、2018年3月・2019年3月と同様、教養学部1・2年生を対象にしたゼミでのメソッドを高校生向けに行うというエクステンション教育を繰り返し、そのヴァージョンアップを目指しています。

 ただし、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、説明会のみ対面で行い、ゼミそのものはすべてオンライン授業となりました。大学の新学期開始以前であったため、教員も受講生もほぼ初対面の中で手探りで進めたゼミとなりました。






(2)内容


2020年3月の東京大学牧原ゼミ「読み破る政治学ハイスクール編」春期ゼミナールは下記の日程で開催されました。

①2/21(木)17:30~18:30

説明会

②3/11(水)15:00~17:00

 イントロダクションとディスカッション

 課題文献:デイヴィッド・A・ウェルチ「可能性としての未来 100年後の日本 名探偵コナンはまだ続いている」(『アステイオン』第91号、66~69頁、2019年)

③3/18(水)15:00~17:00

 課題文献:岡義武『山県有朋』岩波文庫、2019年

④3/25(水)15:00~17:00

 課題文献:柏木博『家事の政治学』岩波現代文庫、2015年


⑤4/1(水) 15:00~17:30

 課題文献:M・I・フィンリー『民主主義』講談社学術文庫、2007年


 昨年までの経緯を踏まえて、今年度は以下の点に配慮しました、一つには昨年同様、教養学部ゼミの修了生に母校に対して、高校生向けゼミについて案内を送るよう依頼しました。校内に周知して頂くことで、高校側の了解をある程度確保した方がよいという判断です。なお、ちょうど2019年度の後半に、東京都のある高校での演習形式の授業に数回出席して、ともに議論する機会を得ました。その高校にもアナウンスしています。二つには、文献の選定にあたって、高校の教科書等で登場する人物や出来事についての本を選定するというものです。いずれも現役ゼミ生と話し合う内に、彼ら/彼女らからのアドバイスを取り入れたものです。

 また、学生への案内については、HP、Facebook、twitterでも発信を図りました。高校とは別に個人としての関心から受講を志す学生も受け入れようという判断がありました。

 説明会では、学生3名が来場して、ゼミの進め方についていろいろと話しました。かなり積極的な姿勢で話をしてくれていて、ゼミを開くのが楽しみになる時間でした。高校での授業を受け持った先生が、東京大学教養学部ゼミ「読み破る政治学」をご存知で、授業の中で強く進めていただいたと知りました。もっとも、結果としてはこれが学生と対面で話をする最後の機会となりました。学生にご紹介いただいた高校の先生方には、趣旨をご理解いただき、お取りはからい頂いたことに、心より御礼申し上げます。

 受講した学生は全部で8名でした。次第の新型コロナウイルス感染症が拡大しつつあった時期でしたので、全員首都圏の高校生でした。6名は高校の紹介から受講を決め、2名は直接的・間接的にtwitterやHPでゼミの開講について知ったとのことです。8名ですと、4回のゼミの間に、全員のペーパーをそれぞれ2回ほどとりあげることができるという意味で、このゼミの形としては適正な規模でした。

 ゼミを開始するまでに学生にはプロフィールを送ってもらい、志望した経緯や講読したい本などについてアンケートを取りました。ペーパーのやりとりをするためメーリングリストを用い、学生一人ひとりにメールアドレスを配布して、個人用のメールアドレスを相互に参照しなくてすむような形を取りました。メーリングリストという仕組みは、やや旧式のもののようにも思いますが、学生同士が慣れるまでは、多少相互に距離感のある連絡方法が適切であると思われます。

 また今年度はKUBIを使う機会はありませんでしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大が収まれば、対面のゼミを行いつつも、一部の遠方の高校生はKUBIで参加することもあり得るという考えから、機器の準備はしていました。

 初回のゼミの2日前に、海外とりわけ欧米からの渡航者が3月の大学に出入りすることが考えられることを理由として、対面のゼミはとりやめることとし、Zoomを使ってゼミを行う場合でも参加する意思があるかを確認しました。全員から参加したいという強い気持ちのこもったメールを頂き、こちらも初めての試みですが、Zoomでゼミを行うこととしました。すでに所属先の東大先端研では学内の会議にZoomを取り入れていたことから、利用については自分としても慣れていましたので、対応そのものは必ずしも難しくはありませんでした。また、学生の方からも、すでに高校の課外活動のミーティングをZoomで行っているというサポーティヴな意見も出て、このあたりはスムーズでした。なお、私を含めた9名でのゼミの最中、映像も音声もトラブルはなく進めることができました。ここは、高校生たちの情報システムへのリテラシーが高かったことに助けられました。

 初回のゼミの前日に全員から課題のペーパーが送られてきました。ゼミでは自己紹介の後、早速議論を始めました。基本的には、学生のペーパーを一つ取り上げて全員で議論し、次に別のペーパーを取り上げて全員で議論するというスタイルを繰り返していきます。以後のゼミも全てそうでしたが、討論の時間に入るとすぐに挙手をする学生が次々と出てきて、議論は中断することなく2時間続きました。Zoomでのゼミでしたが、積極的に発言する学生が多いため、質疑は滞りなく進みました。教員の側は、Zoomの枠の中に映る学生の挙手のタイミングを逃さないことに当初は慣れませんでしたが、段々表情でそろそろ意見を言いたい学生がそこここにいることが分かってきますので、何とか対応できたのではないかと思います。

 講読文献は全体に量も多く、難易度が昨年並に高いものとなっています。もっとも難易度は実はさほど問題ではなく。学生が意欲的に読むかどうかでゼミでの議論は変わってきます。今回は、ゼミの前に、その文献を選んだ狙いをHP上に書いてみました。どの本についても学生たちは強い関心を持ち、深く読もうと努めていました。

 もっとも、これは後に行った大学での授業も同じでしたが、図書館がどこも閉館しており、関連する文献を渉猟することが難しく、その点でペーパーを書くことに苦労せざるを得ませんでした。それでも、自分なりに文献を見つけてペーパーを仕上げるようになっていきます。通常のゼミでは、「もっと色々調べてみたらどうか」という形で能動的に文献を探索するよう促すのですが、事情は個々様々であるように見えましたので、むしろペーパーとどう向き合うかという点に議論を向けていくことにしました。論点をどう提示するか、どういう切り口が他にもあり得るかなど一人ひとりと考えていくように努めた方がいいだろうと方針を切り替えました。最終回の前に「自分が考えた問いをさらに一歩自力で新しい問いへと組み直し、その応答を考えてみることが何にまして大事です。ではどうペーパーを仕上げるか、ですが、まとめてみることと、破綻してもいいからさらに問いを進めてみることとを、同時に着手してみて下さい。まとまらなくてもまずはいいのです。まとまらないところには、問いの力強さがあるからです。」とメールで書きました。「問いの力強さ」に賭けてみたらどうだろうという提案をしてみたわけです。最終回のフィンリーの『民主主義』では、それぞれの「問い」を打ち出しながら考えようと格闘していたように思います。

 最終回は、学生たちの意見を確認したところ「ぜひもう一度やりたい」ということでしたので、翌週水曜の午後に開催しました。ここでは、ゼミの時間が2時間ではやや未消化のまま残る傾向があることを勘案して、2時間30分まで延ばして行いました。終了後は、オンラインでの懇親会のように、軽く1時間ほどいろいろな話をしました。

 今回はオンラインでのゼミとなったため、それぞれが一人で考えることになるのだろうという見通しから、「ある『考え』を展開するときには、次々に問いが生まれるはずです」という点を強調しました。型にはめようとはせず、まずは考えるところをペーパーにするよう促しました。
 オンラインで学生たちと接していると、学生それぞれがふとしたきっかけで理解を深めていくプロセスが、かなりはっきりと見えてきます。対面だと、もっときらりとした瞬間があるのですが、そこまでZoom画面からははっきりと読み取れませんでしたが、少し遠方から見ていると「おっ変わってきたみたい」と気づきます。人がいかにして理解を深めていくかという問いへのそれぞれなりの応答を、確かに感じ取れました。それは、新型コロナの時代での研究・教育を行う者にとっては、思考の原型のようなものであったのかもしれないと、大学生のゼミでの教育を一学期終えた今、感じつつあります。

 全体として言えることは、4回という短い時間でしたが、学部のオンラインでのゼミを一通り高校生に体験してもらえたのではないかと考えています。ただし、ゼミ後の学生たちの感想を見てみると、4回ゼミを行ったからこそ、同じメンバーで対面でのゼミに出席したかったという切実な声が出ていました。オンラインで何ができるか、もしこれを次に展開するなら、どのようなゼミを行えるかと悩ましく感じたのが、終了直後の偽らざる受け止めです。これまでと同様全員に「修了証書」を作成しましたが、手渡すことはできず郵送しましたが、それが区切りとはならず、大学生向けのゼミが、あたかもこの高校生ゼミの「延長戦」のようにすら感じられました。結果として、「ゼミを終えて」をまとめきるのが、大学生向けのゼミを終えたあとになりました。

 本来このようなゼミの教育効果とは、徐々に学生の中で読みの深まりが起こることにあると私は考えています。無理に成長を求める姿勢は教員としてはとらず、ある種の「きっかけ」になれば当面は十分だと判断しています。そうした当面の変化については、以下に掲載した参加学生の感想にゆだねたいと思います。

 こうしたゼミは継続が大事であると改めて感じており、また来春にオンラインの可能性も含めて、開講することを計画し、どうすればより意義あるゼミと行えるか考えてみたいと思っています。



(3)学生たちの感想


(1)学生の感想①

 私はこのゼミを通して、これまでに読んだことの無い本を読むことになりました。私は専ら小説を読んでおり、ファンタジーの世界が大好きです。ここ二・三年はライトノベルと図鑑くらいしかレポートを書く時以外手に取っていなかったものですから、歴史人物の本には大変時間がかかりました。しかし、時間がかかってもちまちまと調べながらならば読むことは出来るということが分かりました。難しそうなものであってもこれからはたまには読んでいきたいと思います。でもやはり、ゼミが終わって最初に手に取ったのは第三回「家事の政治学」序盤に登場した「顧りみれば」(ベラミー)でした。ディストピア・ユートピアものが好きな方は楽しく読めると思います。これが終わったら何か挑戦してみようかとも思いますが、久しぶりに本を読んだら読みたいものがどんどん出てきてしまったのでしばらく後になりそうです。

 話し合いも又楽しかったです。ペーパーは書くのが大変でしたが、解決策を私の想像とは逆に持ってくる方が居たのでとても面白かったです。どんな策にもメリットとデメリットが多くあると再認識しました。この新型コロナウイルスへの対策も、この時こうしておけばよかったということもありますが、それならば今からは何をどうするのかが大切です。しかし、例えば今、都市直下型地震が発生したら、避難場所でさらに拡散してしまうことになるでしょう。さて、そうしたらどうするのがベストなのでしょうか。今は一人であれこれと想像していますが、こんなもし、のテーマでも皆さんと又話せたら有意義で楽しいだろうなと思います。

 私がこのゼミで特に面白いと思ったのは、全員離れたところにいる初対面の人であるにも関わらず活発な議論ができていた所でした。部活でLINE通話でのミーティングをすることもあるのですが、誰が今言っているのかもわかりにくかった為一体どうなることかと思っていましたが、実際にやってみると想像以上に円滑なコミュニケーションをとることが出来ていたことに今も尚驚いています。でもやはり、一度くらいは集まってみたかったとも思います。


(2)学生の感想②

 今回のゼミを終えて、大変だったけれど楽しかったというのが正直な印象です。普段の学校の授業は、先生の板書を写す、ワークの問題を解くといった機械的に作業をこなすだけの授業が多く、物足りなさを抱いていました。しかし、牧原ゼミは常に考えることが要求され、非常にシビアでしたが、その分毎回のゼミを終えた後の達成感は大きかったです。

 私は、このゼミで多くの気付きがありました。まず、「論理の飛躍は恐れることではない」ということです。これまで、文章を書く時には、論理が飛躍していたり短絡的だったりしていないだろうかと恐れていました。しかし、回を追うごとにそういった恐れは無くなり、論理の破綻は悪いことではないと考えるようになりました。次に、同じ本を読んでも多様な解釈があるということです。毎回のペーパーでも着眼点が人によって全く異なり、考え方も違っていました。今回のゼミで、本の感想について人と話してみるという新たな読書の楽しみ方を見つけました。

 一方で、自分の力不足をつくづく実感しました。ペーパーや議論において自分と他の参加者の皆さんとの間には、雲泥の差があったように思います。同世代の人たちがこんなに凄いのに自分はまだまだだと情けなくなることもありましたが、追いつけるようにこれから精進しなければならないという風に良い刺激にもなりました。特に今回のゼミ期間中は、学校が臨時休業中で学校の友達とも会えなかっただけに、モチベーション維持に大いに役立ったように感じます。

 最後に、今回のゼミはオンラインの形式で行われましたが、同じ場所でゼミを行っているのと大差が無く、自然に行えたように思います。一度先端研に集って議論をしたいという思いはありましたが、それでも充実したゼミであったことには変わりありません。参加者の皆さん、牧原教授改めてありがとうございました。


(3)学生の感想③

 僕は当ゼミに、活気のあるディスカッションがしたい、また、自らの思考力を試したい、鍛えたい、と思い参加した。しかし残念ながら、コロナウィルスの感染拡大に対する懸念から、今年のゼミはzoomというウェブ会議ソフトを用いて行われる運びとなった。画面を通じての学友との議論は、率直に申し上げて非常にやりづらかった。その理由は、自分が話しているときは、相手の反応が汲み取り難いため、いつ話を切ればいいか分からないこと、また、他の人が話していて質問や意見を述べたいときは、一人一人のターンがはっきりしているため、パッと思いついたことがあっても割って入れないことだと思う。これらは画面を通じた会議に慣れていけば解消される不自由さかもしれないが、今回の僕にとっては非常に大きな障害となった。しかし、議論は、先述のようなやりづらさがあったにせよ、それでも非常に刺激的で、優秀な学友たちの意見考えはとても興味深かった。今後も、ハードルが高い本にどんどんチャレンジして自らの知見を広げ、しっかり考える習慣をつけたいと思った。そう思うきっかけとなったので、今回はこのような形になり不自由さもあったが、当ゼミに参加して良かったと心から感じている。

 牧原先生、本当にありがとうございました。


(4)学生の感想④

 まず、今回このような場を設けてくださった牧原教授はもちろんのこと、共に議論を繰り広げてくれた参加者の方々に謝意を示したいと思う。僕の拙い(そして提出の遅い)文章を読んで、そして向き合ってくださったことには、本当に感謝しかない。結局画面越しのまま終わってしまいましたが、いつか会えたらもっと面白い話ができるでしょう。

 正直、僕は軽い気持ちでこのゼミへの参加を決めた。別に素養に自信があって余裕だろうと思っていたというわけではない。学校で紹介されたとき、最近あんまり本読んでないな~とか、ゼミってよく聞くけどなんだろう?とか、単純にその程度の軽い動機で申し込みをしたのだ。寧ろ社会にはそんなに自信はない方だ。そんなわけで、当然始まってからは大変なこともあった。まず日頃の読書量の少なさを思い知ったし、読んでも全然理解できないこともままあって、基礎知識のなさを痛感した。そんな状況下でも何かしら文章を書いて提出せねばならないので、必死に自分の持ちうる素材を無理やりにでも組み合わせて「それっぽく」する。これでは僕の醜態を解説しただけのようだが、個人的にはこの「それっぽく」する

 作業に大きな意味があったように感じた。どんなテーマであれ、はじめは皆初学者であるわけだから、初めてのものに食らいつく姿勢を高校生のうちに身につけておくのは大切なことだと思う。このゼミで扱うテーマは毎回違う。単純に新たな分野に触れるというだけでなく、そういう意図もあるのだろう。他の方々は僕なんかより遥かに教養ある方々だったように思うが、こんな風に僕でも学ぶことは大いにあった。

 参加したのは正解だったと心から思う。この文章はHPに掲載されるかもしれないという。もしこれを見ている人で参加を迷っている人がいたら、是非参加してみてほしいと思う。きっと何かの役に立つでしょう。
 最後に改めて、皆様に感謝を。お陰で唐突な余暇の間も探求心を忘れることなく過ごすことができました。ここでの知的な刺激の数々を大事にしたいと思います。本当に、ありがとうございました。


(5)学生の感想⑤

 私はこのゼミを通じて⽂章の構成に⾃覚的になった。調べたことや考えたことをそのままの順で並べるのではなくて、いかにわかりやすい形で読者に読んでもらうかが⼤事だということに気がついた。どこまで⼀つのテーマについてわかりやすく、そして深く書けるかということを意識するようになった。最初に読んだ時点では全く興味が湧かなかった本も、「この本でレポートを書く」という視点で何回も読むうちにどんどん⾯⽩くなっていった。

 他の⼈のレポートからも刺激を受けた。⽂章構成や題名の⼯夫は参考になった。また、各々が異なる関⼼と知識を持っているため⼀冊の本を読んでも多種多様なレポートが⽣まれる。

 それらのレポートを基にした議論にいつもわくわくした。

 ここで⾝につけたものを普段の読書にも⽣かしたい。どんな本でも、何らかの視点を持つことで魅⼒的に⾒えてくる。何らかの問題意識を持って能動的に本に向かおうと思う。
牧原先⽣と受講⽣の⽅々へ、短い間でしたがありがとうございました。直接会うことができなかったのは残念ですが、またどこかで機会があれば。


(6)学生の感想⑥

 私はこのゼミを、学校からの案内で知った。初めにその案内を目にしたときは「こういうのあるんだー。すごいな。」とだけ思いその日を終えた。しかし、数日経過してもなぜか頭から離れない。もう一度案内を読み、躊躇いながらも参加を決めた。

 いざゼミが始まるとそれは想像以上にハードであった。普段あまり手に取らないジャンルの本を読み、ペーパーを書き、議論する。この4週間あまり、私にとっては1週間が3日程のサイクルで回っているかのように感じられたが、今振り返れば忙しいと同時に充実していた証なのだろう。また、1番の醍醐味でもあった議論において私は大いに刺激を受けた。新型コロナウイルスの影響で対面することは叶わなかったが、画面を越えて感じ取ることのできる何かがあった。同世代であるにも関わらず、自分では思いつかないような考えや論理の展開を繰り広げるメンバーを目の前に初回はただただ圧倒されていたが、回を重ねるごとに段々と慣れてきて問いを深めることもできるようになっていったように思う。普段学校に通い生活している中で、これ程までに議論しお互いの考えを吟味し合い、また考えさせられる機会はほとんどない。私にとって、今回のゼミは本当に貴重な体験であり、これから直面するであろう出来事に対する考え方や読書のあり方を広げる入口となった。

 先ほども少し述べたが、私たちくらいの年齢の頃に言葉にして外に表せない「何か」に触れること、そしてそれに気付くことは本当に大切だと思う。

 最後にメンバーの皆さん、色々な切り口から生まれた数多くの議論が新鮮且つ刺激的でいつの間にか毎週の楽しみになっていました。いずれ会えたら楽しいだろうなと思います。ありがとうございました。
そして牧原教授、今回はこのような機会を高校生の私たちに提供して下さりありがとうございました。長期にわたる休校の中、このゼミは私の生活に適度な張りをもたらし知的好奇心を目覚めさせる、そんな存在でした。ゼミを終えた今、私は政治学に限らず、「読み破る」ということの重要性に気付かされました。この先終わりなく活かすことのできる、物事に対する姿勢、考え方のステップを与えて下さったことに感動すると同時に大変感謝しております。鮮やかな4週間でした。本当にありがとうございました。


(7)学生の感想⑦

 このゼミを受けて私は非常に勉強になり、かついい刺激を受けました。私は傲慢ながら本を読むことには慣れているつもりでしたが、ゼミをする事によって一つの本や短いエッセイでさえも色々な読み方があることを学ぶことができました。これは一人で読書をするだけでは絶対に出来ない事なので、良い経験になりました。これを見て参加を迷っている方は是非参加してみてください。きっと大きな収穫を得る事ができるはずです。最後になりますが指導をしてくださった牧原先生、及び共にゼミに参加した同じ高校生の方々に感謝意を申し上げます。


(8)学生の感想⑧

 初めの『名探偵コナンはまだ続いている』を読んだ時、「これは面白くなりそうだ」と強く感じたのを覚えています。知的好奇心をストレートに刺激してくれるこのような文章にこれから毎週触れ、それについて考え抜いて、集団で議論する。それを想像しただけで普段、学校ではなかなか得られない、楽しく貴重な学びの体験になることが予想できたからです。

 しかし、現実はそう甘くはありませんでした。2週目、3週目と本の難易度は予想以上のもので、議論にも時々ついていけないような有様でした。文字通り、「読み破る」という表現がぴったりくるような難解な本の数々との闘いの日々の連続。何より悔しかったのは、必死で読み終わり、さあ、レジュメを作成しよう、という段になって自分が本の大部分を全然理解していないことに気づくことです。2時間半に及ぶ議論も、終わった後になってどっと疲れが押し寄せる、という状況が続きました。

 たくさん本を読んでいる人であればあるほど、読んでいる本のレベルや内容は偏ってくるように感じます。日本だけで年間75,000冊もの本が (実に一日約206冊…!) 出版されているうえ、その数が毎年毎年積み重ねられていくのですから、自然、選択の必要が出てくるからです。そういった意味で、このゼミに参加することは (どのような人にとっても) 自分の可能性を大きく広げてくれるものになる、と思います。自分一人では絶対に出会うことのなかった本との出会いが待っています。参加するか迷っているのであれば、ぜひ、参加すべきです。あなたがどのようなレベル、どのような環境にあったとしても、得られるものは多いに違いありません。

 僕個人で言えば、その後、回を重ねるにつれて議論の力がついていっていたように思います。初めは意識して「発言するようにしよう」と力んでいた部分があったのが、だんだんと自然に発言できるようになっていました。本が難しい、というのは相変わらずでしたが、議論のレベルは上がっていたのではないかと思います。

 Zoomでの実施になったことは残念ではありましたが、この状況においてはこのような形でも開催に踏み切ってくださった牧原先生に感謝すべきでしょう。牧原先生、そしてほかの参加者の皆さん、本当にありがとうございました!贅沢な時間でした!