「本で考える訓練を  担当教員・履修者に聞く 主題科目紹介」『東京大学新聞』2015年4月14日号

『読み破る政治学-多読・乱読・精読ゼミ』では毎週授業の前に、牧原出教授(先端科学技術研究センタ-)が課す課題図書を1冊読み、考えたことをA4用紙1枚のペーパーに書いて提出する。授業では牧原教授が受講者を指名し、その人のペーパーについて議論する。

とにかく質疑応答は絶やさない。


このゼミの主題は本を読むこと。与えられた課題図書を読み、それについて議論をする。ただ課題図書を読むだけではなく、考えること、考えるために他の本を読む必要がある。課される課題図書は政治学に関する日本語文献、マックス・ウェーバー『職業としての政治』のような古典的なものから、本田靖春『不当逮捕』のような比較的新しいテーマを扱うものもあり、内容は多岐にわたる。

このゼミでは普段の教室で行う授業の他に、合宿や食事会を行う。合宿ではテーマを定め、班を分けてそれぞれが課題図書を基に勉強して臨み、合宿当日は昼間から真夜中まで議論する。先学期は「英語化する世界」をテーマに合宿を行った。また、学期に1回は課題図書の著者を招いた食事会を行う。著者も交えて本について議論する。

「本と向き合い、自ら考え、議論して、知識を付けるだけでなく深める思考の訓練をしてほしい」と牧原教授。1,2年生のうちに多読と精読を経験し、考える体力を培ってほしいという。文理・科類は問わない。初めは議論に入れなくても、くじけずに議論に参加すれば、、回を重ねるごとに発言できるようになる。前期教養課程の後でも通用するたくましい思考力を付けたい人にはお勧めだ。

負担が大きいことが有名なゼミだったが、自分の成長のため履修することを決めた吉田亮平さん(文I・2年)。「毎週毎週こなすだけで精いっぱいでしたが、自分の思考の方法を見直せたなど得られたものは大きいです。」
課題図書を読み、A4用紙1枚のペーパーを書くという最低限をこなすだけならば大変ではないが、深く考え、良いペーパーを書くには努力が必要だという。

吉田さんは毎週10時間程度をゼミの勉強に充てた。ゼミは誰もが発言を求められる雰囲気で、ためらわず議論ができるようになる。冬休みのみの課題だった鄧小平の伝記2冊が最も膨大で印象に残っているという。「毛沢東との比較でペーパーを書きましたが、議論があいまいで、冬休み後の授業でかなり指導されました……」

本が好きで、熱意ある人に勧めると吉田さん、学問的な話を気兼ねなくできる場なので熱く語り合える。負担は大きいが継続する人も多い。「僕も継続して履修する予定です」