一行日記

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2006年6月1日(木) セミナー

ランチセミナーと福島研セミナーがあった日。夕ご飯にスープカレーを食べるために早めに帰った。

2006年6月2日(金) 物性セミナー

今日は産総研の三宅さんの「第一原理計算」の話だった。本人はあまり「第一原理」という言葉は使いたくないらしい。自分もついこないだまでシュレーディンガー方程式をごりごり解くものだと思っていた。しかしどうやら経験的にうまくいくという方法などを使い近似的に多体系の電子状態を計算するらしい。原子間のボンド長などは実験と1%以内の精度で一致するというのはすごい。最近バンド計算について調べていたので、丁度予習をしたような形になり、セミナーの内容が比較的良くわかった。

2006年6月4日(日) ハイキング

小形研吉岡研加藤研合同のハイキングがあり、御岳山に登った。ハイキングというよりは登山だった。全部で三つの山の頂上を通過した。つまり、上って降りて上って降りて上って、という状況だった。少し曇っていて肌寒かったが、山の中は良かった。

2006年6月5日(月) 時間差

日記をその日のうちに書かず次の日に書いているせいで、その日何をやっていたかわからなくなることがある。また、その日に悩んでいたことが次の日に解決していたりしてその日に悩んでいたことを書く必要性を感じなくなってしまうこともある。一日の終わりに書くとその日一日を振り返ることができるので、やはりその日のうちに書いたほうがよいのだろう。ちなみに今日は様々な異方的ギャップを考えて状態密度をエネルギープロットしていた。ポイントノードである、ということがどういうことなのかわからなくなってきたからだ。

2006年6月6日(火) 良いニュース

学部時代に大変お世話になった北大工の明楽先生が、私の卒論の内容を28th International Conference on the Physics of Semiconductors (Vienna, Austria, July 24-28 2006)でポスター発表するらしい。うれしい。いつか自分も国際会議で発表したい。

2006年6月7日(水) 論文読み

YNi_2B_2C関連の論文を読み漁る。同じバンド計算の論文を引用して異なる結果を引き出しているものを発見してしまった。今までの仮説をひっくり返せるかと思ったけれど、すべての実験結果をひっくり返すほどの力はその仮説にはないようだということがわかった。なぜ、実験と合わないのだろう。

2006年6月8日(木) 大きな間違い発見

異方的なフェルミ面への拡張で、かなり大きな間違いを発見した。LDOSパターンが大きく変わるかもしれない。FullPaper一号の結果は変わらない。異方的なフェルミ面への拡張を直感的にやってしまったところの詰めが甘かった。もしかすると、これで実験と合ってしまうのかもしれない。一応全部確かめるため慎重を期して取りかかる。

2006年6月12日(月) いい感じ

大きな間違いの部分を修正したプログラムを組んで走らせた。かなりよい結果が出た。STM実験の結果と非常によい一致をしている。

2006年6月13日(火) プログラムチェック

今日はプログラムをチェックして、まともに動いていることを確認してから、さまざまな計算を行った。ここ一月で一番希望の持てる結果になっている。しかし、また間違いかもしれない。確かめることはまだいろいろ残っている。
と上に書いたが、帰りの電車の中で致命的な間違いをまた発見してしまったため、振り出しへと戻る。

2006年6月14日(水) 何故。

昨日の夜に気がついたミスを直して計算。予想と異なる結果がでてきた。今回の方が実験とよく合っているような気がする。しかし、解析計算からなぜか結果が予想できないので、また間違っているのかもしれない。根気良く行こうと思う。

2006年6月15日(木) うーん。

研究停滞中。プログラムが間違っているのか、解析解が間違っているのか、どちらなのかがわからなくなってきた。一から計算をフォローしてみるべきなのだろうと思う。

2006年6月16日(金) 物性セミナー

今回の物性セミナーは早稲田の多辺さんの「液晶に見られる散逸構造」だった。
単分子膜状の液晶に水分子を当てて回転させよう、という話。自分が感じた疑問点を佐々先生がちょうど質問してくださっていたので、とてもスムーズに聴けた。水分子を当てて回転させて、そのあと溜まった弾性エネルギーを解放させると逆回転する、という。逆回転したときに水を吸い上げる効果があればなあと思ったがものすごく能力が弱い吸上げ機にしかならないだろう、とのこと。水分子が流体的に液晶分子に当たっているのではなく、力学的に衝突しているために吸い上げられないのだろうか。

2006年6月17日(土) 解決、か?

二つの方法の不一致問題は解決しそう。何をすれば解決できるかというアイディアを今日軽く試したところ手応えがあった。

2006年6月19日(月) 惜しいなあ

大分追い詰めたのに、まだ解答が手に入っていない。関数が複雑すぎてMathematicaがプロットミスすることっていうのはありえるのだろうか?

2006年6月20日(火) いいところ

いいところまで追い詰めているような気がする。実験結果を再現するためには、フェルミ面の異方性を取り込むことが必須であることは間違いないように思える。比熱の実験からギャップが満たすべき関数形もわかってきた。PRLの実験によるフェルミ面は複雑すぎてそのままじゃ取り込めないから、なんらかのそぎ落としが必要なわけだけれども、なにを削ればいいのだろうか、悩む。

2006年6月21日(水) 悩む。

引き続き論文を読みながらフェルミ面の形状を考える。

2006年6月22日(木) フェルミ面

ETHの林さんに教えてもらった論文を読む。バンド図とフェルミ面に大分見慣れてきた。YNi_2B_2Cがなぜポイントノード的な構造を持つのかが、もしかしたらバンド図をよく見るとわかるかもしれない、と思っている。バンド計算によるフェルミ面は閉曲面だけれども、運動量空間である方向を決めたときにフェルミ面が二つある場合があって、面倒。本質的でない構造は削りたい。

2006年6月23日(金) 早起きと物性セミナー

日本時間午前四時からのW杯日本-ブラジル戦を見る。ブラジルすげえやってことで負けた悔しさもありそのまま七時前に家を出て七時半前に研究室に到着した。今日の物性セミナーはERATOの澤井さん「社会性アメーバの時空間パターン」。社会性アメーバという存在を知らなかったので、インパクトがあった。単細胞が合体してナメクジみたいになる。自然界ではナメクジのままでいるのかそれとも単細胞-ナメクジサイクルを繰り返しているのか、それを聞けば良かった。セミナーが午後五時半頃に終わり、午後六時には気力的にいっぱいいっぱいになり、七時前に帰る。

2006年6月24日(土) 良く考えれば

いきなりリアルな三次元フェルミ面を構築しなくても、輪切りフェルミ面だけを再現してもいいということに気がつき、二次元的フェルミ面を考えてみる。

2006年6月26日(月) 日曜日に

ホワイトプラネットを見た。とてもよかった。氷河の間の映像など、どうやって撮ったのかわからなかった。やはり雪の白は好きだ。

2006年6月27日(火) さて

YNi_2B_2Cはかなりやっかいものだということがわかってきた。自分がオリジナルでできることは何があるのか、ということを探すべきだなと思う。今日気づいたことが、暗黙のうちに常識になっているから論文になっていないのか、みんな二回勘違いしていて元に戻ってたまたま正しい理解になっているのか、どっちなのだろう。

2006年6月28日(水) 物理部会談話会

物理部会の談話会があり、ミシガン大学医学部の植田先生が 「記憶学習のシナプス機構」について話してくださった。目的と結論はなんとなく理解できたけれど、途中はほとんどわからなかった。唯一わかったのは解糖系くらい。これも「新しい高校生物の教科書」(ブルーバックス)を読んでいなかったらわからなかった。生物・化学の専門用語を英語で、動詞も専門用語だったので、何がなんだかわからなかった。

2006年6月29日(木) 完成

YNi_2B_2Cのバンド計算によるフェルミ面を、解析的な関数によって再現するということをここ数日行っていた。超伝導現象を担っていそうな部分を取り出して、その三次元的なフェルミ面をtanhとかcosとかを使って再現しようとしていた。Mathematicaで確認したあとノートにその関数を書き出したが、書き出すだけで20分以上かかった。これをFortranに組み込んでごりごりと計算する予定。

2006年6月30日(金) 物性セミナー

今回の物性セミナーは藤谷さん(富士通)の「Computational drug designと非平衡統計力学」だった。計算機による創薬の話。非常に興味深く面白い話だった。薬ひとつ作るのに100億円近くかかるらしい。なので、計算機上で物質合成してテストするということが考えられているらしい。しかし、2000個のCPUの計算機を独占して使える、というのはコンピュータメーカーならではなのだろうな、と思った。これだけすごい計算機を使ってもまだすぐにはブラインドテストを行えるほどの計算ができない、という(今回の手法を用いるとそろそろ信頼性のある計算ができそうらしい)。すごい、の一言。
自分の研究は完成だと思っていたフェルミ面が間違っていたので、修正を試みることになった。

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