加藤雄介のページ

略歴

1990  東大工学部物理工学科卒業

1992  東大大学院工学系研究科修士課程修了(超伝導工学)

1994  同博士課程中退、東北大学理学部物理学科助手

1995  博士(工学)取得

1996  東大大学院工学系研究科物理工学科講師

この間、 ドイツ・ケルン大学理論物理学科客員研究員(1997-1998)

2000  東大大学院総合文化研究科相関基礎科学系助教授

今までの研究概要

 大学院在学中は、まず、第二種超伝導体の混合状態(ボルテックス状態)における熱揺らぎの効果を研究した。特に2次元超伝導体におけるアブリコソフ格子の融解転移をギンツブルグ・ランダウ模型に対するモンテカルロ法によって調べ、有限温度における1次相転移をはじめて見出した。 

 次に、量子スピン系における量子相転移を, 当時Whiteによって開発されて間もなかった密度行列くりこみ群の方法(DMRG)を用いて調べた。 その結果、「ハルデイン系」として知られるS=1の反強磁性ハイゼンベルグ模型に、絶対零度の下でボンド交替を導入すると、ある大きさのボンド交替の下でエネルギースペクトルのギャップがゼロになることを見出した。 

 東北大学へ移って以来、東京大学、ケルン大学と約4年間にわたって、一次元量子可解模型、特にグツビラー型波動関数を基底状態とする一次元可解 t-J 模型(長距離 t-J 模型)と、 1/r^2 型の長距離相互作用をもつ多成分一次元ガス(多成分Calogero-Sutherland模型)を研究した。 長距離t-J模型に関しては、グッツビラー波動関数が単なる固有状態ではなく基底状態を与えることを示し、他成分Calogero-Sutherland模型の強結合極限を用いて、厳密な分配関数をはじめて構成した。さらに結果として得られた熱力学から、素励起が従う分数統計を長距離t-J模型に対してはじめて導いた。

 またハーフフィルドにおける、ホールのグリーン関数の厳密な結果をCalogero-Sutherland模型へのマッピングを用いることで得た。このグリーン関数の計算は、近年盛んに行われているモット絶縁体に対する角度分解光電子分光を契機として行ったものである。 また多成分Calogero-Sutherland模型における動的相関関数(グリーン関数)の厳密解をはじめて得た。

1999年から現在まで(2007年4月)は超伝導体の渦糸状態を研究している。 とくに銅酸化物超伝導体を念頭においた電荷をともなう渦糸のホール効果の研究や、Sr2RuO4の超伝導渦糸状態における量子効果の研究を行っている。 さらに超伝導渦糸状態を研究している実験グループと超伝導体に関する共同研究もおこなった。