感圧塗料を用いた翼列翼面上圧力分布の計測

研究背景
  • 近年のジェットエンジンの傾向
  • 昨今の原油価格の高騰を背景として、当然ジェットエンジンも燃費の良いものを開発しようと工夫がなされています。圧縮機やタービン翼列の軽量化・高負荷化がその一例です。翼への負荷が高くなってくると、翼列フラッターをはじめとする不安定振動現象が起きる危険性が高まります。


  • フラッターとは
  • 流体から力を受けて翼などの振動が発散してしまう現象をフラッターといいます。普通、何かが振動を始めた場合、放っておけば振動は収まる(減衰する)のですが、空気などの流体が流れている中にある物体は流体から力を受けます。この力は普段は振動を減衰させるように働きますが、ある条件においては振動を発散させる方向に働くようになります。強い風が吹いたときに窓のブラインドがばたつくことがありますが、あれも一種のフラッター現象といえます


    フラッターのモデル


  • 翼列におけるフラッター
  • ある翼がなんらかの原因で振動を始めるとその振動によって誘起される空気力が隣の翼に影響を与えます。このような相互干渉は隣り合う翼同士だけでなく、同じ翼列内のさらに遠くの翼との間にも存在します。この相互干渉によって条件によっては翼列フラッターが起きるのです。フラッターは振動が発散する現象ですので、ひとたび起これば翼の破損を引き起こし、最終的にはエンジン自体の破壊につながります。このため、その発生メカニズムを解明することによりフラッターがどのような場合に発生するかを風洞実験やCFDの解析を通して正確に予測する必要があります。


    翼列の非定常的な変形

風洞による実験
  • 感圧塗料における翼面上圧力計測
  • 実験で翼列フラッター特性を評価するためには、振動時の翼にかかる非定常空気力を計測する必要があります。感圧塗料とは模型に塗料を塗布し、光速度カメラで撮影した画像を処理することで物体表面の圧力分布を知ることができるものです。効率よく圧力の面分布を知ることができ、その計測密度も従来の圧力多点計測に比べて遥かに向上させることができます。


    風洞中に設置された翼の概観

    実験中の翼の様子


    振動させた翼の実験画像(右)と後処理によって可視化された非定常圧力(左)