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久恒 辰博 (ひさつね・たつひろ)
 
身分/学年: 准教授
E-mail: hisatsune@k.u-tokyo.ac.jp
 

 
研究ポリシー: 脳のはたらきを細胞レベルで解き明かす
 
「脳のことが知りたい。」私が研究を進める強い動機です。「脳のことは、だいぶわかってきたはずだ。」と思う人も少なくないでしょう。確かに脳についての研究は、20世紀にすさまじいスピードで展開されました。ところが、根本的な部分については、まだほとんど判っていないのです。
 
研究は、多くの場合、よりミクロな方向に進行していきます。今から100年以上前、脳を構成する細胞 -ニューロン- が発見されました。その後、研究者たちは先を競って、ニューロン中にある特殊な小器官、そして物質についての探求を進めていきました。こうして、ニューロンとニューロンのつなぎ目であるシナプスや、神経伝達物質と呼ばれるシナプス間の情報伝達を担う分子が次々に発見されていったのです。
 
「ミクロなことばかり研究をしていて、はたして脳や心のことがわかるのだろうか?」 こんな皆が漠然と抱いていた素朴な疑問に答えるような形で1990年代に画期的な研究手法が考案されました。脳画像イメージングという方法で、その代表格がファンクショナルMRIという強磁場を使った脳測定法です。この方法で、「ものを見ているときの脳」や「新しい情報を覚えこんでいるときの脳」、あるいはさらに「幸せを感じているときの脳」の様子など、いろいろな場面場面での脳の活動が手に取るようにわかってきました。
 
こうお話しすると、脳については多くのことが既にわかってきたような錯覚を感じるかもしれませんが、根本的なことはまだまだブラックボックスの中にあります。例えば、「どうやって、どういう仕組みで新しいことを記憶しているのだろうか?」とか、「老いていくと、どうしても脳の機能が衰えてしまうのはなぜなのか?防ぐ方法はないのか?」、そして「すがすがしいと感じる日と、気が晴れないと感じる日、脳の中ではどこが違うのか?」などなと。私たち脳科学者が的確にお答えできない質問がまだまだ山のようにあるのです。
 
分子を中心にしたナノスケールの研究、そして脳イメージングから得られるミリスケールの研究。このちょうど中間に位置する研究が、細胞を中心にしたマイクロスケールの研究です。脳神経細胞であるニューロンが発見されて100年以上が過ぎました。細胞レベルでの研究は、いまや半ば忘れられかけた分野になりかかっています。もっと細かいことが研究できるのだから、そして脳全体のイメージングといったダイナミックな研究ができるようになったのだから、細胞レベルといった中途半端なことはもうやらなくてもよいでしょうという具合に。私たちは、今やクラシカルな印象がある細胞レベルでの解析方法にもう一度光をあて、脳を知るための研究を進めています。そうすることで、脳の中では実に様々な種類の細胞が存在していることがわかってき、そして、“古くて新しい”細胞レベルでの研究からあっと驚くような新事実が次々に見つかってきたのです。
 
 
 
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