八田研究室(Hatta Lab)
乳酸を中心に運動のエネルギー源と利用能力の観点から、運動を考える研究室
第21回乳酸研究会は2025年2月15日午後、東大駒場キャンパスK011教室で行います。
今回が駒場での開催は区切りとなることから、これまでの乳酸研究を振り返るような内容になる見込みです。
身体運動シンポジウム 12月14日午後駒場キャンパス13号館1323教室
最終講義の代わりとなる基調講演を行います。
新しい本が出ました
ミトコンドリアトレーニング 〜筋肉中心で考えるトレーニングサイエンス
八田秀雄編著 市村出版
トレーニングの結果として筋肉でミトコンドリアの量や機能が増える、その基礎的なメカニズム、実際のトレーニング方法による効果、栄養面でのサポートについて、まとめました。八田研の卒業生と共同研究者による、定年記念本の様な形になりました。
最近の本
疲労のスポーツ・運動生理学
ショーンフィリップス著、八田秀雄監訳 大修館書店
運動疲労における筋肉の代謝的要因について、多くの文献によって詳細に記述した著書の訳書です。運動の疲労を考える上で大変参考になる本です。
マラソンのエネルギーマネジメント 少ない糖をうまく使うために
大修館書店
マラソンを走りきる時に最重要課題となる体内の糖が少ない点を克服するために、どうトレーニングし、どう走ったらよいのか、という内容です。マラソンランナーだけでなく応援する方にも。自分でもマラソンの本を書くとは思っていなかったのが率直なところですが、できあがってみると、できてよかったかと思います。
身体運動科学アドバンスト
東京大学身体運動科学研究室編 杏林書院
身体運動科学教室のメンバーがそれぞれの専門分野で主として研究していることをまとめたもの。専門書ですが、広く身体運動科学を学ぶに適しています。
乳酸サイエンス —エネルギー代謝と運動生理学—
市村出版
2009年に出しました「乳酸と運動生理生化学」をベースにして改訂し、乳酸に絞った内容にして新たな知見を加えました。これまでの乳酸の研究を受けて、新たな提言の章を最後に加えました。
運動と疲労の科学 疲労を理解する新たな視点
下光輝一、八田秀雄編
大修館書店
抗疲労研究会として行ってきた疲労についての研究会と、体力医学会で3年行った疲労のシンポジウムをベースに、疲労を捉える新たな視点、疲労のメカニズム、栄養からみた疲労について、まとめました。
乳酸をどう活かすかII
杏林書院
乳酸研究会の内容をベースにした本「乳酸をどう活かすか」の続編。第4回乳酸研究会以降に発表のあった内容から、競技における血中乳酸濃度の利用に関する内容を中心にしました。長年にわたり測定を行って来られた先生方の内容が充実しています。また最新の乳酸に関する科学的見方も知ることができます。
新版 乳酸を活かしたスポーツトレーニング
講談社 1900円
2001年に出した、私には思い出深い、乳酸についての最初の本格的な本を改訂しました。全体の体裁や論調は初版の流れを残しながら、最新の知見を加えました。カラーになり見やすくなりました。
研究室連絡先
八田秀雄教授 Prof. Hideo Hatta tel 03-5454-6862, fax
03-5454-4317 E-mail:hatta[@]idaten.c.u-tokyo.ac.jp、9号館209室
HP http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/hatta
研究室概要
われわれの研究室では、運動時の糖代謝を生理学的生化学的に検討しています。中でも乳酸に関する研究が中心です。乳酸は多量に作られれば作業筋内を酸性化させることから、これまでは「疲労物質」というような見方がされ、疲れの素になる老廃物といった程度の理解がされてきました。しかし実際には乳酸は溜まるだけの老廃物ではなく、酸化されて利用できるエネルギー源です。さらに運動時の疲労は乳酸だけでは説明できないのに、疲労=乳酸と極端に誇張されてきました。乳酸ができるということは、脂肪に比べて量に限りある糖が分解されるということです。そこで運動を考える上で乳酸を中心とした糖代謝について検討することは非常に重要です。特に乳酸のトランスポーターMCT (Monocarboxylate Transporter)のタンパク質量とそのトレーニングなどによる変化が乳酸の代謝にどのように関係するのか、それにミトコンドリアとの関係ということから乳酸の代謝を検討するというのが、現時点での主たる研究内容になっています。基本的にはラットやマウスを用いた動物実験を行っています。またJRA競走馬総合研究所と協力して、サラブレッドの乳酸の代謝についても研究をしています。この他牛乳ペプチド、脂肪酸、ビタミンB1、などの摂取と運動時のエネルギー代謝との関連についても実験しています。一方マラソンを中心に長距離走とそのトレーニング効果に関する科学的検討についての研究にも力を入れています。
そしてそれらに共通しているのは、運動時に最も重要なエネルギー源は糖であるということです。そして糖の貯蔵量は多くはありません。このことが運動と疲労を考える上での、1つのキーポイントとなります。そして糖の利用の過程で乳酸ができますから、糖を多く使うということと乳酸が多くできるということが同様のことなので、使いやすいが量が多くはない糖と、糖からできる乳酸が、エネルギー代謝の調節因子としての役割を持っているという観点で研究しています。マウスが中心ですが、ヒトの中長距離選手の特性に関する研究も多く行なっています。高橋祐美子研究室と共同しています。また寺田研究室とも協力しています。
当研究室は定年のため、2025年3月で終了となります。新たな大学院生の募集は行いません。
研究題目
マウスの高強度トレーニングがMCT発現と乳酸の代謝に与える影響
高強度トレーニングがミトコンドリアの発現や機能に与える影響
サラブレッドにおける乳酸の代謝とMCT
運動前や運動後の乳酸摂取による持久的運動の効果
持久的トレーニングの効果を高める方法の検討
カゼインペプチド摂取がトレーニング効果に与える影響
乳酸測定の長距離走を中心とする運動への応用
低酸素トレーニングの効果に関する乳酸の観点からの検討
構成メンバー
八田秀雄
高橋謙也(助教)、渡邊拓也(D3)、王文昕(D3)、清家空併(D2)、森田雄貴(M2)、稲葉建(M2)
共同研究
高橋祐美子研究室、柿木克之(Blue Wych合同会社)、北岡祐(神奈川大)、星野太佑(電気通信大)、増田紘之(新潟医福大)、田村優樹(日体大)、竹井尚也(日本女子体育大学)、寺田新研究室
今後の予定
11月21-24 Canadian Society of Exercise Physiology, モントリオール、カナダ
12月14日 身体運動シンポジウム(最終講義に代わり)
2月15日 乳酸研究会
乳酸研究会
2月に行うことの多い、乳酸を中心に運動の代謝や疲労を考える会。
第21回乳酸研究会
2025年2月15日になります。
これまでの抄録集お分けできます。メールsport@arkray.co.jp、
またはアークレイ株式会社 050-5527-7701まで
最近のニュース
2024年
9月体力医学会(佐賀大)に参加しました。
8月今年の発表論文がこれまでの最高となる10編になりました。
7月 International Biochemistry of Exercise Conference (アイルランド)に参加しました。
ビッグデータ解析が今後の1つの流れであることはわかりましたが、それだけでもないようにも思いました。
素朴なアイルランドがなかなかよく、ホテルの窓からも牛がたくさんでした。
4月
アメリカ生理学会 American Physiology Summit (ロングビーチ、アメリカ)に参加しました。生理学会単独の形になって2回目、運動関係の内容も1回目より増えました。日内周期やケトン体の内容について興味深く思いました。
ロサンゼルス近郊なので、夜はドジャーズ球場に行き、大谷選手のドジャーズ初ホームランを見ることもできました。
3月
研究員の竹井尚也さんが日本女子体育大学に転出しました。修士2年の一正太さんが修了しました。
発育発達学会(同志社大学)で、Meet the Expertとして、持久走の疲労と考え方について講演しました。その後高校野球を観戦し、修学院離宮に行きました。
2月
第20回となる乳酸研究会を行いました。ハイブリッド開催は定着し、懇親会も再開されました。今回は酸化ストレスが、1つのキーワードになりました。酸化ストレスも一概に悪者と決めつけるべきものではなく、良い面も持ち合わせていて、やはりなんでもバランスであることがわかりました。腸内細菌の発表もあり、乳酸、活性酸素、便と老廃物とされてきたものが、実は身体に重要で望ましい働きをしており、悪者とばかり決めつけるものではない、ということは大変重要なことです。
2023年
12月
八田研1期生大阪教育大学榎木泰介さんの研究室を訪問しました。コロナの影響がまだ残るものの、実験機器は揃っていて、今後に期待です。
ホノルルマラソンに行ってきました。気温28度でゴールまで辿り着いただけですが、制限時間なく、楽しくゴールまでというのはよかったです。完走証にも、ネットタイムだけで順位が書いていないという点も感心しました。
11月
FAOPS(アジアオセアニア生理学会、韓国デグ)に参加しました。D.Bishop, 高橋謙也助教と、運動よるミトコンドリア適応に関するシンポジウムを行いました。一正太さんが初の国際学会発表をポスターで行いました。知り合い2人がいて、楽しく充実した学会滞在ができました。
10月
久留米大学でセミナーを行いました。今年赴任した、八田研出身の松永准教授を訪ねました。研究環境はよく、今後の発展を期待します。
カナダの運動生理学会CSEP(カルガリー)に参加しました。この学会に参加したのは留学中だった1995年以来28年ぶりでした。
カルガリー留学中の院生渡辺さんが口頭発表、修士の稲葉さんがポスター発表を行いました。久しぶりにカナディアンロッキーにも行けました。
9月
1日だけの体力医学会で、コロナのために延期されていた、2020年のJPFSM奨励賞受賞論文 Seike et al. JPFSM 9, 191-198, 2020の表彰式がありました。
7月
ICANS(International Conference of applied nutrition and sports)2023に参加しましたシンガポール7.19-21。乳酸摂取の可能性について講演しました。1980年以来43年ぶりに訪問したシンガポールでした
LT程度の強度における走行分析と血中乳酸濃度変化との関連を検討した論文が出ました。
5月
台北市立大学のKuo教授の研究室を訪問し、大学院生に講義するとともに、2023 Sport Event Taiwan Workshop Series Coursesの一環として、他の3人の先生とともに、オンラインシンポジウムを行いました。その様子は
https://www.youtube.com/live/3VXtCRoylnk?feature=share でみることができます
4月
久々の海外学会、アメリカ生理学会によるAmerican Physiology Summit(ロングビーチ)に参加しました。これまでExperimental Biologyとして複数の学会による大きな会だったのが、生理学会単独に戻りました。
大谷選手のロサンゼルスエンゼルスの試合も見に行けました。
3月
松永助教が久留米大学人間健康科学部講師となり、転出しました。
高島良平、児山祥の2人が修士を修了し、卒業しました。
東京体育学会で基調講演を行いました。
日本生理学会100回大会(京都国際会館)に参加しました。
母校である小山台高校で、講師派遣講演会を行いました。
2月
運動の疲労に関して筋肉の代謝の面から詳細に記述されている原著の訳書「疲労のスポーツ・運動生理学」が刊行されました。
高橋謙也助教を筆頭とする、卵巣摘出マウスでもトレーニングによって効果があることを示した論文がMedicine and Science in Sports and Exerciseに掲載されました。
2022年
11月
ウマ科学会で、高橋謙也助教の、サラブレッドの高強度インターバルトレーニングに関する発表が優秀演題賞をいただきました。
松永助教を筆頭とする、BCAAが脱トレーニング時の機能低下を少し抑制するという論文がFASEB ジャーナルに掲載されました。
10月
秋入学で稲葉さんがM1に入学しました。
9月
体力医学会で競走馬に関するシンポジウムを行いました。学会自体はオンライン改正になりましたが、演者全員競走馬研究所に集まって行い、顔を合わせるよさ、大事さを再認識しました。
8月
スポーツ栄養学会で、助教松永さんの発表が優秀発表賞をいただきました。
運動生理学会が行われ、社会人D2渡邉さんの発表が、奨励賞をいただきました。
5月
ifia ヘルスフードエキスポでタウリンに関するシンポジウムを行いました
4月
修士2名(一正太、森田雄貴)が入学しました
高橋祐美子准教授が赴任されました。今後共同で研究を進めていきます。
高校の保健体育教科書が改定され「新高等保健体育」の中で、乳酸は疲労物質ではないという記述がコラムの形で載りました。
3月
修士の3人が修了しました(坂口諒、新屋輝長、吉田拓生)
教室の新しい教科書「身体運動・健康科学ベーシック」(東大出版会)が発刊されました。これは文字通り、1年生の必修授業で使う教科書です。さらにこの発展編として「身体運動科学アドバンスト」(杏林書院)があります。
2021年
9月
体力医学会大会がオンラインでありました。
8月
運動生理学会がオンラインでありました(8月20,21日)。藤井先生の教育講演の座長をしました。高橋謙也助教がポスター発表をしました。
5月
ifia HFE ヘルスフードエキスポ(5月12日 パシフィコ横浜)で運動疲労に関する栄養のシンポジウムを行いました。久しぶりに通常の対面開催シンポジウムでした。
4月
高橋祐美子助教がJISSに転出しました。高橋謙也助教が就任しました。
王文昕(D1)、児山祥(M1)が入学しました。
3月
博士(竹井、高橋謙也)、修士(近藤、山田)、学士(児山)と論文作成と審査が続き、無事に修了、卒業となりました。
1月
M2近藤がニューイヤー駅伝に出場し6区5位と健闘しました。トラックでも自己新を連発しています。
2020年
コロナ禍で大きな影響を受けましたが、研究はなんとか継続でき、論文も多くできました。
秋入学で高島君が修士に入学しました。
卒研生の奥永君が卒業しました。新たに修士2人(吉田、新屋)、博士1人(渡邊)の入学がありました。
乳酸をトレーニング前に経口投与することで、ミトコンドリアをより増やす効果が得られるという論文が出ました。注射で行った前報とは少し違い、遅筋線維主体の筋で効果が上がりました。Takahashi et al. Nutrients
著書
・マラソンのエネルギーマネジメント 少ない糖をうまくつかうために
大修館書店
マラソンの運動生化学的背景、その中心となる身体の少ない糖をどう最後まで持たせればよいのか、について
・乳酸サイエンス エネルギー代謝と運動生理学 市村出版 2600円
2009年に出しました乳酸と運動生理生化学をベースにして、乳酸に絞った内容にして新たな知見を加えました。これまでの乳酸の研究を受けて、新たな提言の章を最後に加えました。
・乳酸をどう活かすかII 杏林書院 2500円
乳酸研究会の内容をベースにした乳酸の本、続編です。
・新版 乳酸を活かしたスポーツ・トレーニング 講談社 1900円+税
2001年に出した思い出深い本を、アップデートしました。カラーにして見やすくしました。
・乳酸を使いこなすランニング
大修館書店 1500円+税
短距離走からマラソンまで、ランニング時の乳酸を中心とするエネルギー代謝について解説しました。
・乳酸 運動 疲労 健康との関係は?講談社 1600円
一般向けにQ and A方式で、見開き左に回答、右は絵という絵の多い本です。70の質問に答える形で乳酸のことをまとめました。
・運動と疲労の科学 —疲労を理解する新たな視点- 大修館書店 2300円
抗疲労研究会として運動と疲労を考える研究会で行ってきた内容を中心に、運動と疲労研究について現時点での状況をまとめました。
・著書 (分担執筆)
八田秀雄、高強度運動におけるエネルギー代謝、身体運動科学アドバンスト、東京大学大学院総合文化研究科身体運動科学研究室編、29-43、2020
八田秀雄、筋肉を中心とする運動時の疲労、井上和生、山崎英恵編、抗疲労・抗ストレス・睡眠改善食品の開発、シーエムシー出版、3−16,2020
八田秀雄、ある物質の蓄積や枯渇で疲労が起こるのか、宮下充正編、疲労と身体運動、杏林書院、50-57、2018
「サラブレッドもヒトも乳酸を使って走っている」東京大学教養学部教養学右報編集委員会変、「東京大学「教養学部報」精選集 「自分が知りたい」ほか教養に関する論考」東大出版会、110-111、2016
「スポーツとエネルギー代謝」、村岡功編著、「新スポーツ生理学」、市村出版、62-73、2015
「乳酸代謝」宮村実晴編、「ニュー運動生理学II」、真興交易医書出版部、45-53、2014
「運動時の乳酸代謝」、樋口満編著、「スポーツ現場に生かす運動生理・生化学」、市村出版、112-121、2011
・ 原著論文 Recent Publications
Kenya Takahashi, Kazutaka
Mukai, Yusaku Ebisuda, Fumi
Sugiyama, Toshinobu Yoshida, Hideo Hatta, Yu Kitaoka. Effects of pacing
strategy on metabolic responses to 2-min intense exercise in Thoroughbred
horses. Sci Rep. 14: 18352, https://doi.org/10.1038/s41598-024-69339-x, 2024
Naoya Takei, Ryuji Muraki, Olivier Girard and
Hideo Hatta. Inter-individual variability in peripheral oxygen saturation and
repeated sprint performance in hypoxia: An observational study of
highly-trained subjects. Frontiers
in Sports and Active Living, section Exercise Physiology, DOI 10.3389/fspor.2024.1452541, 2024
Naoya Takei, Takeru Inaba, Yuki
Morita, Katsuyuki Kakinoki,
Hideo Hatta, Yu Kitaoka. Differential patterns of
sweat and blood lactate concentration response during incremental exercise in
varied ambient temperature: A pilot study.
Temperature, https://doi.org/10.1080/23328940.2024.2375693
Kenya Takahashi, Yu Kitaoka, Hideo Hatta. Effects of endurance training under caloric restriction on energy substrate metabolism in mouse skeletal muscle and liver. J Physiol Sci, https://doi.org/10.1186/s12576-024-00924-5, 2024
Kenya
Takahashi, Yu Kitaoka, Hideo Hatta. Better maintenance of enzyme capacity and
higher levels of substrate transporter proteins in skeletal muscle of aging
female mice. Applied Physiol Nutri Metab, dx.doi.org/10.1139/apnm-2024-0016 1,
2024
Takuya
Watanabe, Takeru Inaba, Cody R. van Rassel, Martin J. MacInnis, Katsuyuki Kakinoki, Hideo
Hatta. Identifying physiological
determinants of 800m running performance using post-exercise blood lactate
kinetics. Eur J Appl Physiol, https://doi.org/10.1007/s00421-024-05504-4, 2024
Suguru Nakano, Kohei Seike, Mai Banjo,
Yumiko Takahashi, Kenya Takahashi, Yoshiyuki Matsumoto, Hideo Hatta. Effects of combination of concentrated Kurozu supplementation and endurance training on
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Ai Takemura , Yutaka Matsunaga , Terunaga
Shinya, Hideo Hatta Differential
Mitochondrial Adaptation of the Slow and Fast Skeletal Muscles by Endurance
Running Exercise in Streptozotocin-Induced Diabetic Mice. Physiol Res, 73:
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Kenya
Takahashi, Kazutaka Mukai, Yuji Takahashi, Yusaku Ebisuda, Hideo Hatta, Yu Kitaoka. Metabolomic responses to high-intensity
interval exercise in equine skeletal muscle: effects of rest interval duration.
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Naoya Takei, Gaku Kakehata, Takeru Inaba, Yuki Morita, Hinata Sano, Oliver Girard,
Hideo Hatta. Effect of hypoxic sprint
interval exercise and normoxic recovery on
performance and acute physiological responses. Eur J Sports Sci. 24, 279-288, DOI:10.1002/ejsc.12076, 2024
Takuya Watanabe, Ryo Sakaguchi, Naoya Takei, Katsuyuki Kakinoki, Hideo
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Takuya Watanabe, Shuichi Kondo, Katsuyuki Kakinoki, Hideo
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skeletal muscle of ovariectomized mice.
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Yutaka Matsunaga, Yuki Tamura, Kenya Takahashi, Yu Kitaoka, Yumiko Takahashi, Daisuke Hoshino, Tomoyasu Kadoguchi, Hideo Hatta.
Branched-chain amino acid supplementation suppresses the
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muscle. FASEB J, 36: e22628, https://doi.org/10.1096/fj.202200588R, 2022
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Wenxing Wang, Kazutaka Mukai, Kenya Takahashi, Hajime
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・総説
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八田秀雄 低酸素トレーニングと乳酸の代謝、Sports Medicine 224:34-36, 2020
八田秀雄、高橋祐美子、タウリンによる運動後における筋グリコーゲン再合成の促進、タウリンリサーチ 2 : 37-39, 2016
乳酸はエネルギー源で適応を起こすシグナルである。日本スポーツ栄養研究誌、6、3-9、2013
運動後の筋肉痛は年と共に遅れて起きるといわれているのは本当ですかClinical Neuroscience, 31(2)249, 2013
提言「無酸素」という用語を使うのはやめませんか。
無酸素運動といいますが、体内が無酸素になることはありません。乳酸は無酸素状態でできるものではなく、酸素があってもそれ以上に糖分解が進めばできるものです。このことを糖分解に見合うだけの酸素が足りないからとする見方ができないことはありませんが、それにしても酸素がないのではありません。乳酸ができることは酸素を必要とはしませんが、そのことと酸素があるないとは別の話です。ましてや例えば短距離走や自転車最大パワーのような強度の高い瞬発的な運動であっても、必ず酸素は使われてもいます。本来の無酸素という言葉が意味することと、実際に起きていることとは違っています。Anaerobicという言葉の訳として「無酸素」となったと考えられますが、anaerobicは酸素を使わないというのが本来の意味のはずで、酸素の有無を言っているのではありません。そこで無酸素運動、無酸素的代謝、といった用語を使うのは不適切です。強度の高い運動は、高強度運動といえばよいことです。最大のパワーを自転車で計ったならば、自転車最大パワーといえばよいことです。高強度運動時の肺での酸素摂取量を測定して、それで説明できないエネルギー供給分を無酸素的代謝とするという報告を見ます。しかしスプリント走の様な短時間の高強度運動では、肺での酸素摂取はイコール筋での酸素消費とはいえない状態になっていますから、肺の酸素摂取量だけでは筋での酸素消費は必ずしも明らかではありません。数10秒程度の運動で肺の酸素摂取量が増えずに発揮パワーが上がったとしても、筋での酸素消費は上がっている可能性が十分考えられます。おそらくこれまで考えられている以上に筋肉での酸素消費は速くまた多く進んでいると私は考えています。
乳酸=疲労ではない
乳酸ができるということをこれまでは、筋が無酸素状態だからと考え、筋を酸性にして疲労を起こす老廃物である乳酸は、運動後に糖に戻されるという見方でした。しかし実際には、乳酸ができるのは酸素がないからではなく、糖の利用が高まるからです。そして糖の利用過程で一時的にできるのが乳酸ですから、乳酸は老廃物ではなく、エネルギー源です。遅筋線維や心筋で多く酸化されエネルギーになっています。乳酸=糖なのです。そして糖を完全に利用する過程の途中でできるのが乳酸です。疲労ということも乳酸が無関係とは言いませんが、乳酸だけで疲労を説明するのは誤りです。体内には酸性になるのを防ぐ多くの機構があって、乳酸が多く出る400m走の後のような時でも、せいぜいpHが6.5くらい、弱酸性になるくらいです。これだけで疲労は説明できません。それ以外に多くの要因が疲労を起こします。中でもリン酸が最近注目されています。疲労というのは様々な状況で様々な原因があって起きている複合的な現象です。運動時の疲労を乳酸だけで説明することがあまりに多すぎたのです。
通常の疲労は乳酸とは無関係
通常多くの場合には、運動の疲労というのは長時間にわたって運動をすることによって感じます。マラソンでは筋グリコーゲンが枯渇することが30キロの壁と呼ばれるような後半の速度低下の原因となることはよく知られています。筋グリコーゲンがなくなるということは、筋グリコーゲンから多くできた乳酸もなくなるということです。このように筋グリコーゲンがなくなると乳酸はできにくくなるので、マラソン後半疲労のピークの時には、乳酸はできていません。サッカーなど球技も1-2時間は試合が続いていて、マラソンほどではないものの、ダッシュを繰り返すことで特に速筋線維の多くの筋グリコーゲンが使われます。そこで前半と後半を比較すると、後半の方が筋グリコーゲン濃度が低下し、その結果として血中乳酸濃度も低下します。このように多くの運動時の疲労は、マラソンに限らず長時間にわたって試合なり練習なりを続けたことで感じる一方で、長時間運動を続けたことで、乳酸はよりできないようになっているわけです。乳酸ができることが疲労で、乳酸ができないことが疲労しないことならば、長時間運動では終盤にいけばいくほどより元気になることになってしまいます。したがって運動時の多くの疲労は乳酸が原因ではありません。疲労というのは様々な状況で、様々な原因によって起こるものです。科学が進めば進むほど、疲労の原因がいろいろあることがわかってきて、疲労は簡単にはわからないことがわかってくると思います。
いまだに「乳酸がたまった・・・」というコマーシャルやスポーツ放送
乳酸が老廃物ではなく、疲労の原因としても限定的である、ということは次第に広まってきたことと思っています。しかしいろいろな広告や健康情報の中でまだまだこうした過去の見方を引きずっている場合があります。内容の正しさにはかなり厳しいと思われる製薬会社が、乳酸がたまるから疲労といった宣伝をやっている場合もまだ見られます。またスポーツ中継でも「乳酸が溜まって疲労する」といった解説が入ることもあります。
それは乳酸産生ー筋や体内が酸性化ー疲労という図式です。ところが
・乳酸ができれば酸性ということ自体が怪しく、高強度運動で酸性になるのはATPを多く使うこと、解糖系が進むことが大きく関係していると考えられます。
・筋内体内が酸性になると筋収縮が低下というのも、実際はその影響は小さく、さらに酸性の方が神経刺激に対する筋の反応が高くなる=筋力発揮が高まるという研究結果もあり、酸性=疲労とは必ずしもなりません
・乳酸はエネルギー源であり、またカリウムが漏れ出すことによる筋収縮の低下を防ぐ、すなわち疲労を防ぐような働きもある、運動の敵ではなく味方です。
・長時間運動になると、糖を多く使うので、糖が減るので、乳酸も糖からできるのですから、より乳酸ができなくなりながら疲れて行きます。
このように、乳酸ができて疲れるは否定されます。
このことに限らず、世の健康やからだの情報には、断定的なおかしなものが多くあります。イメージ先行で、科学的事実が2の次になっています。メディアの情報をそのまま鵜呑みにはせず、取捨選択することやまたその能力のことを「メディアリテラシー」といいます。これは本当に大事なことと思います。
健康情報では、何か悪者をしたて、それを退治する正義の味方を仕立てるのがよくみられることです。しかしある1つのものがいつも悪者で、あるものがいつも正義の味方といったことはありません。状況によって、その量や場面であるものが悪者にもなればいいものにもなるのが生体ではないでしょうか。
乳酸は日常生活で多く溜まることはありません。また全力ダッシュであれば乳酸が蓄積はしますが、その疲労であっても乳酸以外の多くの要因で起きています。代謝が上がった運動時の疲労と、運動もしないで座っているだけの日常の疲労では違う要因が関係しているのは、当たり前のことです。そして疲労の原因といっても、それは簡単にいえることではありません。しかしそれでは話が面白くないので、原因を乳酸にしてしまい、乳酸さえ対処すれば疲労回復としてきたのがこれまである、という例がまだまだあります。
乳酸があった方がトレーニング効果が高い
われわれは乳酸を与えると、その乳酸を利用するので、糖が保存されて、マラソンなどの長時間運動ではよいことがあることを明らかにしてきました。そこでさらに持久的トレーニングを行うときに乳酸を飲ませながらやってみると、さらに乳酸の利用能力が上がるのではないかという実験をやってみました。そうしたところ、これは予想外であったのですが、乳酸を飲ませながらトレーニングしたマウスの方が飲ませないマウスよりも元気がよく、結果としてミトコンドリアが多く増えて、トレーニング効果が高いという結果が得られました。これは乳酸が豊富にあることそのものが、よい結果をもたらす可能性、また運動前に糖を補給してトレーニングすることがよい可能性もあります。糖は運動で最も重要なエネルギーであると同時に、脳や神経の唯一のエネルギーです。したがって糖を利用しやすくすることが、疲労の軽減につながるのではないかと考えています。疲労というのはさまざまな状況で様々な原因がありますが、マラソンのようにいずれ糖がなくなってくるような条件でなければ、糖の利用を高めることが筋肉だけでなく脳や神経にとって好ましく、そのことが疲労軽減に関係すると考えています。
乳酸は無酸素状態だからではなく、糖分解の高進でできる
乳酸ができるから無酸素運動とは言えません。無酸素運動の代表の様にこれまでスプリントは考えられ、スプリント中の酸素摂取の役割が過小評価されています。実際には100mでも全体の2-3割、400m走になるとほぼ半分は酸素を摂取したエネルギー産生で行われています。その際には乳酸が使われています。乳酸ができることで、エネルギーは出せますが、その量はスプリントを走りきるにはとても足りません。スプリントのエネルギー供給でもっとも重要なのは酸素の利用です。これまで乳酸耐性という言葉で、乳酸に対処するといったイメージでスプリントトレーニングが語られすぎてきています。もちろん乳酸が出ることで筋内が弱酸性になることも影響はしますが、スプリントトレーニングはより酸素を使えるようにミトコンドリアを増やすということが、もっと認識されてよいのではないでしょうか。無酸素運動と呼ばれた運動は、基本は有酸素運動であり、それにプラスしてその時には酸素をエネルギー産生が加わるということです。
体内にはATPの貯め、ということは酸素の貯めとも見なせるクレアチンリン酸があります。その量は10秒程度持つくらいの量です。また実際に体内には、若干酸素が貯められています。これらを合計すると、酸素摂取量に換算して2リットル程度になります。これが、走る際に酸素摂取量に加算されて、ラストスパートの速度上昇を生み出すのではないかという考えです。つまりラストスパートを効かせるためには、最初からあまりがんがん行かないで、ぎりぎりの余裕を持って行くということです。それを最後まで温存しておくことが、酸素の貯めを残すことです。そうしないとクレアチンリン酸が減り、リン酸が溜まって、力が出なくなり、スパートが効かない、ということになると考えています。もちろんスパートが効くためには、トップスピードの高さが必要です。そのトップスピードを最後まで温存するということです。
200+100は乳酸耐性の練習ではない
最近200+100のように、一度200m走って90秒なり休んでまた100m走るという練習がよく見受けられます。この練習は+100mが感覚的には苦しい中での練習なので、スプリント後半の能力に働きかけると思いこんでやっているのでしょう。しかし実は筋肉内は+100mの時には感覚とは違ってきつくなっていません。最初走ってから90秒なり休む間に、クレアチンリン酸が再合成されます。それによって+100mではそのクレアチンリン酸を使えるからです。ところが最初に走った際にできる二酸化炭素は遅れて出てきますから、呼吸は荒くなっていて、感覚的にはきつくなっています。さらに最初の200mでできた乳酸が遅れて血液に出てくるので、血中乳酸濃度も高くなります。それでスプリント=乳酸耐性、それには乳酸が多くできる中で走ると思いこんでの練習と思いますが、実際には感覚のきつさと筋のきつさとに差が出てきてしまっています。スプリント後半の状況では、本来クレアチンリン酸がなくリン酸が蓄積して筋がうまく働けない状況になっているのに、+100mの局面ではクレアチンリン酸がありリン酸が減っている状況になってしまっています。つまり意図されたスプリント後半での能力アップにはなりません。後半のトレーニングをしたいならば途中で休みを入れないで200mなり300mなりを走り続けることです。こうした誤解が出てくるのは、スプリントの疲労は乳酸が原因、そこでスプリントトレーニングは乳酸が蓄積している中でも運動できるような乳酸耐性を獲得することが主目的としてしまうからと思われます。実際にはスプリントの疲労に乳酸が無関係ではありませんが、他の多くの要因によって起きています。特に最近はリン酸が注目されています。またスプリントは乳酸ができるから無酸素運動と誤解してしまい、乳酸耐性の獲得が主目的と考えてしまうために、200mの後血中乳酸濃度はむしろ運動後の方が上がってきますから、それでその中で100m走れば、乳酸蓄積している中での運動だから乳酸耐性によいと短絡的に考えてしまうと思われます。筋の中ではエネルギー供給源となるクレアチンリン酸が再合成されていることなど考えないわけです。