南部ベトナムの研究・留学情報

渋谷由紀
[2009年6月4日]

ビザ取得に関する手続きは、申請方法・申請に要する時間等、北部ベトナムと同様である。
詳細は「北部ベトナムの研究・留学用ビザ所得ガイド」を参照されたい。ここでは、南部ベトナム研究・留学に特化したガイドとして、カウンターパートとなりうる代表的な機関と、図書館や文書館を紹介する。

南部ベトナムで研究・留学するにあたって、まず考えなくてはならないのが、そもそも自分の研究テーマ・渡航目的に対し、南部への渡航が望ましいのか、ということである。もちろん、フィールドワークであれば当然研究先の地域に滞在することになるが、それに前後する語学研修や文献収集は、ホーチミン市より首都ハノイのほうが望ましいケースもある。とりわけ南部で研究・留学する場合、明確な目的を持って南部を選択する必要がある。

1.語学習得を目的とする場合

ベトナム語初学者がベトナム語の習得を目的として留学する場合、最もスタンダードな選択肢としては、ホーチミン市国家大学人文社会科学大学の、ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科である。ホーチミン市師範大学においても外国人のためのベトナム語教育を行っているが、大半の日本人留学生が人文社会科学大学に通学している。いずれの大学も、入学試験を受験し、学部や大学院の正規の学生となる道、あるいは1ヶ月から数年の間、日本の大学や大学院に所属しながら、ベトナムの大学に聴講生(東京大学でいう学部「研究生」に近い)として所属する道がある。前者は入学試験の準備を含めて数年間かかるため、大多数の日本人留学生、ほとんどの日本人研究者は後者の方法をとっている。

ホーチミン市国家大学人文社会科学大学 ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科
(Truong Dai Hoc Quoc Gia Thanh Pho Ho Chi Minh- Truong Dai Hoc Khoa Hoc Xa Hoi Va Nhan Van, Khoa Viet Nam Hoc Va Tieng Viet Cho Nguoi Nuoc Ngoai)
・所在地10-12 Dinh Tien Hoang, P. Ben Nghe, Q.1,TP.HCM
・ウェブサイトhttp://www.vns.edu.vn/vns/

(a) ベトナム語
南部ベトナムの研究や南部ベトナムへの定住を視野に入れず、ベトナム語の習得のみ目標にしている場合、ホーチミン市国家大学人文社会科学大学への留学はお勧めしない。というのも、テキストの会話の文例は南部で使用される言い回しを多用しており、北部ハノイ方言に準ずる標準ベトナム語の習得には至らないこと、さらにそのテキストを、標準ベトナム語を意識した南部発音で教授するからである。この方式の教授方法だと、どうしても(南北)「ちゃんぽんの」ベトナム語を話すことになってしまう。もっとも、日本で標準ベトナム語を習得した学生は、標準ベトナム語で通すこともできるし、上級者の場合、南部出身の教員の指定をお願いし、完全な南部方言を学ぶこともできる。一方、同学で学ぶメリットとしては、学科の事務室および教室が人文社会科学大学構内にあるため、ベトナム人学生との交流の機会に恵まれていることである。

(b) 専門
ホーチミン人文社会科学大学には、人類学、国際関係学、文学、地理学、教育学、史学、社会学、都市学など22の学科および部門があるが、ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科を除いては、基本的に外国人の入学および授業聴講は難しい。そのため、ベトナム人研究者に師事したい場合、ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科に所属し、同学科から紹介をうけ、個人的に他学科の教員に師事することになる。ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科でも、所属教員(多くは人文社会科学大学および南部社会科学院の教員との兼任)による専門科目の講義が不定期に開催される。また、正規課程の学生には多くの専門科目の講義が開講されている。ベトナム語がある程度話せる(話せるようになった)学生に対しては、研究者、各種研究機関、図書館や文書館への紹介状の発行を行っている。なお、在籍中は基本的に、最低週5~3コマ程度のベトナム語の履修が義務付けられる。

*2009年10月追記:
(c) 留学生活のサポート
大学提携の下宿の紹介など、留学生活のサポートを受けることも可能である(大学に近い18A Ngiuyen Thi Minh Khai通りの路地がさながら外国人学生の下宿街となっており、自力で探すことも不可能ではない)。また、日本で手配した観光ビザでの短期語学研修、他機関や企業に所属しながらの語学研修、夜間コースなども可能である。

2.調査・研究を目的とする場合

すでにベトナム語の能力が中級以上で、語学研修を目的とせず、直接ベトナム人研究者に師事したり、フィールドワークを行ったりすることが目的の場合、上述のホーチミン人文社会科学大学 ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科のほか、南部社会科学院等の各研究機関が選択肢に上がる。

(1)南部社会科学院(Vien Khoa Hoc Xa Hoi Vung Nam Bo)
・所在地 49 Nguyen Thi Minh Khai, TP.HCM.
1975年に設立された、ベトナム社会科学院(Vien Khoa Hoc Xa Hoi Viet Nam)の下部機関。史学研究センター、考古学研究センター、民族・宗教学研究センター、言語学研究センター、東南アジア研究センター、経済学・発展研究センター、哲学研究センター、ハンノム研究センター、女性研究センター、文学研究センター、タイグエン(中部高原)研究センター、メコンデルタ研究センターなどを傘下に擁している。

*2009年10月追記:
南部持続発展研究院(Vien Phat Trien Ben Vung Vung Nam Bo)と改称され、所在地も移転している。

(2)ホーチミン市国家大学人文社会科学大学 ベトナム学・外国人のためのベトナム語学科
「研究生(Nghien Cuu Sinh)」として受け入れを申請する。

*2009年10月追記:
(2)の方法も制度上可能であるが、学科の重点は研究者の受け入れよりも語学教育に重きをおいているため注意が必要である。(2)の方法のほかに、(3)ホーチミン市国家大学人文社会科学大学の各学科に「研究生」として受け入れを申請することもできる。その場合、すでに人文社会科学大学のベトナム学・外国人のためのベトナム語学科以外の教員にフィールドワーク実施の受け入れ受諾を得ていることが必要である。国際合作室の定型フォームに沿った調査申請書、最新の履歴書、パスポートのコピー、推薦状、研究計画書を提出する(英語可)。研究計画書には、研究テーマ、所属期間、問題の所在、研究の目的、予定される成果、研究手法、ベトナム滞在中の計画に関して記入する。紹介状や公文の発行は受け入れ教員を通じて国際合作室が行う。

3. 図書館・文書館

ホーチミン市にある主な図書館・文書館として、以下の機関があげられる。しかし、特に図書館に関しては、蔵書数や環境、目録の整理状況の点で、ハノイのベトナム国立図書館(Th? Vie?n Quo?c Gia Vie?t Nam) (ウェブサイトhttp://www.nlv.gov.vn/)の利便性が圧倒的に高い。とくに解放(1975年4月)以前を調査・研究するのでなければ、ハノイにおける文献収集のほうが効率的な場合もある。

(1)ホーチミン市総合科学図書館(Thu Vien Khoa Hoc Tong Hop Thanh Pho Ho Chi Minh)
・所在地69 Ly Tu Trong, Q.1, TP. HCM
・ウェブサイトhttp://www.gslhcm.org.vn/

大学生や国内外の研究者に広く開かれた図書館である。短期滞在の学生・研究者にも利用しやすい。

(a) 一般の書籍・新聞・雑誌の閲覧
原則では、2cm×3cmの写真2葉、大学等所属機関の紹介状、学部卒業証明書、パスポートのいずれかを持参し手続きをすれば、2時間後にカードが発給される。閲覧時間は、7時30分から19時00分(出庫16:30まで)、月曜および祝日は閉館。開架資料および書庫内資料は、自由に複写ができるが、複写用のコピー機は全館で1台であり、大変に効率が悪い。風通しはよいが冷房はないため、適宜水分補給をしないと朦朧としてくる。閲覧室への辞書の持ち込みは不可。ベトナム語初学者は電子辞書を持込むとよい。PCの持込みは自由だが、閲覧室で電源を確保できない。南部の地誌等であっても、ハノイの国立図書館のほうが所蔵数は多いように思われる。学術雑誌の所蔵タイトル数では、圧倒的にハノイの国会図書館に劣る。南部各省の新聞もハノイで閲覧が可能である。

*2009年10月追記:
第一閲覧室に越日辞書を含む各種辞書類が配架(開架)されている。

(b) 開放以前の書籍の閲覧
解放(1975年4月)以前の資料、すなわち、仏領期・旧政権期の新聞・雑誌・マイクロフィルム・単行本は、2階閲覧室カウンター奥のマイクロフィルム室Phong Vi Phim/ Phong Tai Lieu Han Che(Tel 8295632)に主に所蔵されており、閲覧にあたってはベトナムのカウンターパートから公文(紹介状は不可)を得て、同室に申請を行う必要がある。申請後は数時間ないし1日程度で閲覧が可能だが、公文は姓名、研究テーマ、研究機関などが「十分にかつ明瞭に」記されたものである必要があり、様式を事前に確認の上用意することをお勧めする。マイクロフィルムリーダーは数台しかなく、常に混雑している。また、マイクロフィルム資料を含め、基本的に複写はできず、筆写する必要がある。PCの電源を借りることが可能である。開室時間は一般閲覧室とは異なり短い。一部の貴重書はハノイに移動している。

(2)(南部)社会科学図書館(Thu Vien Khoa Hoc Xa Hoi)
・所在地34 Ly Tu Trong, Q.1, TP.HCM

(南部)社会科学図書館は社会科学院に所属する図書館で、社会科学・人文科学関係の13万冊あまりの図書、1000タイトルあまりの新聞と雑誌が所蔵されている。閲覧・複写とも、外国人研究者の利用は比較的容易で、原則として、日本国内の所属研究機関の紹介状(英文)・パスポートを提示すれば即座に閲覧・複写が可能である。学部3年生以下の利用は不可のため、修士課程の学生は学部の卒業証明書(英文)を持参するとよい。

(3)国家第二文書館(Trung Tam Luu Tru Quuoc Gia II)
・所在地 2 Ter, Le Duan, Q.1, TP.HCM
・ウェブサイト(国家文書局サイト) http://www.archives.gov.vn/

コーチシナ政庁文書や旧南政権文書を保管している。閲覧・複写とも、短期滞在の外国人研究者の利用はきわめて難しい。入館カードの発行に1週間から10日、閲覧申請に1週間から10日、複写に1週間から10日を要するため、最低1ヶ月の滞在が必要である。

*2009年10月追記:
レズアン通りを挟んで反対側の17A Le Duanに移転している。閲覧申請時、ハノイに許可をとる必要がなくなったそうで、以前より手続きにかかる時間が短縮されている。閲覧室ではPCの電源を借りることができる。

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