高等動物教育研究センター・
附属牧場の概要




【沿 革】
 
  昭和20年4月 社団法人日本馬事会日本馬事錬成農場(新設)
  昭和21年3月 社団法人中央馬事会日本馬事会主畜農場(改称)
  昭和23年7月 農林省大宮種畜牧場分場
  昭和24年4月 東京大学農学部附属牧場(昭和28年8月官制化)
  平成12年4月 東京大学大学院農学生命学研究科附属牧場(改称)

組 織】 
  場長(併任)1/副場長(併任)1/教授 1/助教 1/技術職員 8/技能補佐員  3/事務職員 2/事務補佐員 1 

施設・設備】 
  実験室・研究室・講義室・図書室・事務室・学生宿舎・教員宿舎・食堂・高度動物研究棟・大型産業動物診療治療棟(家畜病院分院)
  各種動物舎・飼料生産用資材施設・糞尿汚水処理施設

  


業務関連: 獣医学専攻・応用動物科学専攻等の実習や演習に要する教育・研究の支援、教員の研究の補助、学生と大学院生の実習および研究の支援、大学院生受入による研究活動の遂行ならびに地域社会との連携協力等を遂行すべく下記の業務と研究テーマに取り組んでいる。

A1-1:ウシの飼養管理と研究テーマ
 ・ アミノ酸投与による効率的育成システムの開発
 ・ 高泌乳牛の導入と生殖工学的技術(受精卵移植技術)の確立、育種計画および乳量、体型にもとづく遺伝的改良の推進
 ・乳牛、和牛、高泌乳牛の育成の差異に関する研究
 ・ 病態別飼養管理および治療補助計画の確立
 ・ 黒毛和牛の生産(受精卵移植技術の確立)、育種計画および肉質改良のための飼養管理システムの確立
A1-2:ウマの飼養管理と研究テーマ
 ・ アルゼンチン原産のクリオージョを基盤とした身障者乗馬に適した系統の確立と増殖および交配計画(人工授精法の確立)
 ・ 産駒の調教計画、飼料配合計画および利用計画(乗馬用、アニマルセラピー用等)
 ・病態別飼養管理および治療補助計画の確立
A1-3:シバヤギの飼養管理および研究テーマ
 ・アミノ酸の効率的利用方法の創出のための基盤研究
 ・ 反芻動物の栄養科学研究のモデルとしてのシバヤギの確立
 ・ 人工授精技術の確立による優良系統の作出と遺伝子組換技術等による実験目的別生産システムの創出
 ・病態別飼養管理および治療補助計画の確立
A1-4:ブタの飼養管理と研究テーマ
 ・安静フェロモンの飼養管理への応用方法の確立とその作用機構の解明
 ・ ミニブタの系統調査による育種計画の確立と系統の作出(人工授精、遺伝子組換技術の利用)
A1-5:獣医師関連の業務と研究テーマ
 ・ 低薬剤使用によっても健康と進言できる飼養管理システムの確立
 ・ 病態別飼養管理および治療計画の確立
 ・ IT技術を駆使した分娩時期の遠隔把握システムの開発
 ・ 獣医学専攻、応用動物科学専攻、家畜病院等との連携対応
A1-6:飼料作物栽培管理と研究テーマ
 ・糞尿の細菌叢を用いた低エネルギー負荷型処理技術の確立と普及
 ・作物の生産性向上のための土地改良システムの確立および作物保存管理
 ・ 農機具新規導入計画
 ・ 営繕(農機具類の修理・整備、機械・器具類の作製と改修、畜舎関係の保全と補修)関連業務


教育活動

B1:大学における教育
獣医学専修、動物システム科学専修・応用動物科学専攻と深く関連しながら、獣医学・応用動物科学領域、生圏システム学領域などの牧場でなければ実施しえない大型産業動物を用いたフィールド科学の学生実習と講義を下記のように担当している。加えて国際開発農学専修、生物生産学専修、教養学部の実習も担当し、フィールドアソシエイトな実践的教育に広く貢献している。
B1-1:学部教育
・ 【獣医学専修】 獣医学牧場実習・獣医臨床学実習・獣医臨床繁殖学実習・動物飼料学(動物栄養科学)・動物行動学実習(分担)・動物医科学演習(分担)・動物医科学特別講義・現代GPプログラム
・ 【動物生命システム科学専修】 応用動物科学実習・動物栄養科学・動物行動科学牧場実習(分担)・現代GPプログラム
・ 【国際開発農学専修】 国際開発農学牧場実習・国際開発農学個別実験
・ 【生物生産学専修】 畜産学実習
・ 【教養学部】 全学体験ゼミナール「動物を利用して生きる術」・全学自由研究ゼミナール「動物とともに暮らす」・農学主題科目・生命機能の利用(分担)・動物生命科学へのいざない(分担)・応用動物科学概論(分担)
B1-2:
大学改革推進事業現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)平成18〜21年
「畜産物の安全安心を保障する人材の育成教育」


B1-3:大学院教育

・ 【獣医学専攻】 獣医学特論
・ 【応用動物科学専攻】 実験資源動物科学総論・実験資源動物科学各論・実験資源動物科学演習・動物テクノロジー概論・動物科学トピックス(分担)
・ 【生圏システム科学専攻】 動物生圏資源科学総論・動物生圏資源科学特論・動物生圏資源科学演習
・ 【研究指導学生】 応用動物科学専攻・生圏システム科学専攻・獣医学専攻・学術振興会特別研究員など
・ 【その他】 食の安全ゼミナール牧場研修・獣医学専攻セミナー
・ 【他大学の講師など】 山形大学農学研究科 非常勤講師・九州大学農学院 非常勤講師・東北大学農学研究科 非常勤講師・宇都宮大学農学部 非常勤講師・中国農業大学 非常勤講師


B1-4:社会に窓を開いて貢献する教育

・ アニマルセラピーに関わる講習会・セミナー:獣医学専攻研究室、NPOなどとの協力のもとに全日本障害者乗馬協議会研修会・NPO法人ホースフレンズ身障者乗馬講習会・福岡動物病院看護士学院フィールド研修・茨城県立友部東養護学校高等部・牧場研修・身障者乗馬セミナーなどを開催し、約200名/年が参加している。
・ 教育セミナー:食の安全性や環境の問題を主眼とした国民に開かれた教育ファームとなることを目指し、食の教育・環境の教育セミナー(NPO法人食の安全を考える会研修会)を開催し、約2100名/年が参加している。
・ 体験学習:近隣中学の職業体験学習、保育園と幼稚園の児童や小中高生の体験学習などを開催し、年間約1,200人が訪れている。


研究活動
C1:主要な研究課題

 資源動物にかかわる基盤および応用研究:附属牧場は多くの資源動物(ウマ・ウシ・ヤギ・ブタ)の系統育成を行いながら、産業動物研究や医学研究のための実験動物として各所に供給している。さらに実際に牛乳の生産などを継続して獣医学・応用動物科学領域、生圏システム学領域、生物生産学領域などのフィールド科学の実習教育の場としての役割を果たしている。加えて上記のような動物生命フィールド科学を具体的な形で実証できる最先端の国際研究拠点となることを目標にして、これらの資源動物を用いた基盤および応用研究を積極的に行っている。

(1) 哺乳類の卵母細胞・卵胞の選択的死滅の制御機構の解明とその人為的制御技術の開発:優良な遺伝形質をもつ雌家畜の卵巣が食肉処理場では廃棄されている。これに含まれる卵母細胞(潜在的卵巣卵)を救命して優良遺伝子資源を有効利用するため、卵胞死滅の制御機構を細胞死受容体の役割を中心に解明し、これをin vivo遺伝子導入やin vivo遺伝子発現阻害(RNAi)法などの最先端技術を開発して、人為的に制御する技術を創出しようとしている。この研究で得られた知見は、死滅すべき運命にある99%以上の卵母細胞と健常に発育・成熟して排卵にいたる卵母細胞を判定する技術の確立(卵子の質の判定)につながり、様々な生殖工学で利用される卵母細胞の質を保証する技術の開発に貢献する。加えて、この研究の過程で見出された新規な細胞死受容体や細胞内アポトーシスシグナル伝達阻害因子は、ヒトにおける移植医療に役立つことが期待され、遺伝子導入法適用した膵臓移植の基礎実験を進め、実用化の可能性を見極めようとしている(
学 術 創 成 研 究)。

(2) 哺乳類の卵胞発育・排卵・人工授精に関する研究:主要な産業動物である反芻動物の性成熟機構、特に卵胞発育と排卵についてプローブを自家改良した超音波画像診断法を駆使して非侵襲的に詳細に調べ、簡便で的確な人為的制御方法の開発を進めている。これに人工授精手技の改善を加えて、産業動物における受胎率の向上に貢献しようとしている。さらに、身障者乗馬を通じて心身に障害をかかえる人々の治療に貢献している乗用馬クリオージョの遺伝的多様性を確保すべく、世界に先駆けてウマの人工授精システムを確立しようとしている。

(3) 哺乳類の発育・成長・疾病に対するアミノ酸の役割:哺乳類では、アスパラギン酸などの特定のアミノ酸が成長ホルモンの産生と分泌パターンの制御にかかわっており、これを適切化することが健康の維持(恒常性の維持)に重要であることを見出してきた。また、哺乳類では、乳幼児期の栄養状況の急激な変化は臓器機能に悪影響をおよぼす。例えば、インスリンの分泌能と感受性や脂肪細胞の数とサイズなどが変化し、中枢神経系の食欲制御にも影響する。乳幼児期に適切なアミノ酸を給与することで、産業動物の生産効率の向上が計れることが判明してきている。加えて、泌乳期のウシに適切なアミノ酸を給与することで日和見感染に起因する乳房炎を予防できる可能性も高いことが分かってきた。

(4) ウシ海面状脳症(BSE)の感染ルートの解明研究:大きな社会問題となっているBSEであるが、未だその病原体プリオンの感染経路は不明である。マウスまどの実験動物ではなく、我が国でも実際に発症例が報告されている加齢乳牛を用いて、感染経路の解明および抹消筋組織への病原体の移行の有無を確認する実証的研究を進めている。

(5) 高熱性細菌叢を活用した効率的糞尿処理法の開発:全国の畜産農家で最も大きな問題は経済的負担のない糞尿の処理であるが、適した手法が未だ開発されていない。鹿児島市で30年以上下水処理場の最終産物である活性汚泥の処理を生業としてきたベンチャー企業と共同で、施設設置費用と稼働時の維持経費が安価でかつ最終産物が優良な肥料となる高熱性細菌叢を活用したコンパクトで効率的な糞尿処理法の開発研究を立ち上げ、鋭意進めている。

(6) 研究用資源動物の系統育成およびその供給:高等動物研究のためにヤギ(シバヤギ)・ウマ(クリオージョ)を安定して供給している。
C2:共同研究
 東京大学獣医生理学・公衆衛生学・実験動物学・比較病態生理学・動物行動学・獣医病理学・臨床病理学・獣医解剖学・東京大学医学部附属病院肝胆膵人工臓器移植外科・東邦大学医学部医療センター心臓血管外科・大阪大学医学部移植外科・神戸大学農学部・京都大学生命科学研究科・名古屋大学生命農学研究科・東北大学農学研究科・岡山大学自然科学研究科・茨城大学農学部・東レ医薬基盤研究所・味の素株式会社健康基盤研究所・共和化工株式会社など
C3:海外との共同研究
 フランス共和国パリ第6・ピエールエマリーキューリー大学・ハンガリー共和国国立畜産研究所・ドイツ連邦共和国国立家畜生物学研究所・大韓民国ソウル国立大学・大韓民国忠北国立大学・中華人民共和国中国農業大学・中華人民共和国延辺大学・中華人民共和国海南省科学技術庁農業科学研究院・ポーランド共和国クラコワ大学


社会貢献活動: 牧場で開催している講演会・セミナー等 全日本障害者乗馬協議会研修会・NPO法人食の安全性を考える市民の会体験セミナー・動物病院看護士学院フィールド研修会・親子の会アニマルセラピー研修会・食の安全ゼミナール牧場研修・NPO法人ホースフレンズ身障者乗馬講習会・茨城県立養護学校牧場研修および身障者乗馬セミナー・笠間市立岩間中学職業体験学習



動物を増やす

 多くの産業動物(ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ブタなど)の系統育成を行いながら、獣医学・応用動物科学領域の産業動物研究のみならず異種移植外科学の基盤研究などのような医学研究のための実験動物として各所に供給している。
 そのために産業動物の性成熟機構、特に卵胞発育と排卵について超音波画像診断法などを駆使して非侵襲的に詳細に調べ、簡便かつ的確な人為的制御方法の開発を進めている。これに人工授精法の改善を加えて、産業動物における受胎率の向上に貢献している。

動物を守る
 産業動物の発育・成長・疾病に対するアミノ酸の役割を多面的に調べている。胎仔や乳仔期の栄養状況は、インスリンの分泌能と感受性、脂肪細胞の数とサイズ、中枢神経系の食欲制御などに影響する。妊娠末期の母体や乳仔にアミノ酸を給与することで、生産効率の向上が計れることを実証してきた。また、泌乳期のウシにアミノ酸を給与することで日和見感染に起因する乳房炎を予防できることも示した。

動物を利用する
 哺乳類の卵胞・卵母細胞は発育の過程で99.9%以上が選択的に死滅する。この制御機構の解明とその人為的制御技術の開発を進めている。優良な遺伝形質をもつ雌家畜の卵巣が食肉処理場では無為に廃棄されているが、これに含まれる卵母細胞(潜在的卵巣卵)を救命して優良遺伝子資源を有効利用するため、卵胞死滅の制御機構を細胞死受容体の役割を中心に解明し、これを人為的に制御する技術を創出しつつある。この研究で得られた知見は、死滅すべき運命にある卵母細胞と健常に発育して排卵にいたる卵母細胞を判定する技術の確立にもつながり、生殖工学で利用される卵母細胞の「質」を保証する技術開発につながる。