東京大学大学院 農学生命科学研究科
生物材料科学専攻 材料・住科学講座

木材物理学研究室
The University of Tokyo
Wood Physics Laboratory

研究室メンバー紹介

信田 聡 教授

農学生命科学研究科教授

学位論文

木質材料・木質壁体の断熱性能に関する研究(1982)

 木材・木質材料の熱伝導率の温度、含水率、密度依存性について検討した。含水率依存性について熱伝導率に関するkollmann式の検討を行った。
 木質材料表面における結露現象のモニタリング手法を検討した。結露時に発生する凝縮熱を熱電対により温度として検出する方法、和紙等吸湿性フィルムを電極間にはった結露センサ試作と電極間の吸湿性材料の水分増加による電圧変化検出による方法、アルミテープなどの光沢性の表面への結露の目視による検出など、いずれも観測可能。
 木質壁体内結露による木質材料の含水率上昇を観察し、壁内結露による木質材料の水分状態変化が熱損失に及ぼす影響を検討した。木質壁体内分の水分状態改善のために壁内温風通風により結露を防止する方法についてモデル実験により熱損失を含めて検討した。
 木質壁体内の温度性状について、壁内部の水平方向各位置の温度変動曲線を三角多項式により解析し、振幅、位相のずれから、壁体内部のタイムラグなどの温度性状特性を解析し、現場測定による木質壁体の断熱性能を評価した。
 木質材料の平衡含水率を測定し、その値を木材と比較するとともに吸湿等温線についてHailwood&horrbin式の有効性を検証した。
 実際住宅における木材含水率調査を行い、腐朽材は含水率が低いことを検証した。
 2つの異なる空気環境に挟まれた木質材料内熱さ方向の含水率分布を精査し、透湿抵抗と密度分布の関係を考察した。

研究テーマ

トドマツ人工林材の乾燥

 水食い材(心材部が異常に高い水分を示す)をいかにしたら適切に乾燥できるかを検討した。天然乾燥、熱気乾燥(中温、高温)、マイクロ波乾燥などを試み、核乾燥法における水食い材の水分状態を把握するとともに最適乾燥スケジュールを検討した。
 水食い材の乾燥特性について、水食い材すべてが乾燥性が悪いわけではなく、乾燥性が悪い材の原因として、製材内部の水分移動方向中に傷害樹指道が存在する場合、それが水分通道を妨げるダムとして働き、結果、残留水分が出やすいことを指摘した。

コンピュータによる木材乾燥操作の自動化

 人工乾燥室内のように温度変動が激しい室内で、安定してサンプル材の重量を計測できるロードセルを利用した重量法による含水率センサ(特許)の開発を行った。
 開発した含水率センサおよび乾燥操作の自動化に不可欠な乾燥スケジュールの連続変化型への変換(スケジュールカード化)などをシステムに組み入れ人工乾燥室の乾燥操作の自動化システムを開発し、実際に技術移転した。

エクステリアウッドの利用と評価

 エクステリアウッド、木材の屋外での利用方法について、海外・国内事例を調査した。
 ウッドデッキ、サークルベンチなどのエクステリアウッドが人に対してどのような影響があるのかを木材物性との関係で検討した。

木質系住宅の居住性の評価

 室内環境の快適性について、温熱快適性指標を用いて検討している。また生理的な応答(血圧、心拍数ほか)の測定と木材などの視覚的イメージとの関係について検討を加えた。
 屋内ホルムアルデヒド濃度と新築住宅の換気性能の関係について検討を加えた。

その他

 そのほかにもいくつか研究しているが、思い出しながら書いているので、網羅仕切れていない。

今後

 快適な住環境の創出、木材と人間の良好な関係を復元できるような木材利用を考えたい。新たな製品の提案とそれに関連する木材物性の研究を進めたい。
 住宅における様々な場面での省エネルギー化(木材乾燥への自然エネルギーの活用含む)、自然素材の導入による住宅の省エネルギー化などの研究もしてみたい。

研究業績

 2010年以降のもののみ紹介します。それ以前の業績についてはこちらをご覧ください。

論文

・信田聡、前田啓、浪岡真太郎:日本産50樹種のデジタル画像による視覚的好ましさの評価、木材学会誌、62(6)、pp301-310(2016)
・斎藤周逸、信田聡:日本の気候値平衡含水率,木材学会誌, 62(5)、pp182-189(2016)
・斎藤幸恵、山本篤志、信田 聡、太田正光:スギ樹皮炭素化物の細孔構造と燃焼特性、木質炭化学会誌, 13(1), 10-16 (2016)
・Takashi TANAKA, Yasuo KAWAI, Masanori SADANARI, Satoshi SHIDA, Takahiro TSUCHIMOTO: “Air permeability of sugi (Cryptomeria japonica) wood in the three directions”, Maderas- Cienc Tecnol , 17(1),17-28(2015)
・東島祐真, 荘保伸一, 村上知徳, 信田聡:木製外装の紫外線反射, 木材工業, 69(7), 338-342 (2014)
・平野勝久, 守屋翔一, 信田聡:木質系高齢者施設の快適性に関する調査・研究- 室内の温熱快適性と床の滑り特性- , 木材工業, 69(4), 149-153 (2014)
・信田聡, 小淵義照, 荘保伸一, 山口秋生:木製外装のヒ- トアイランド抑制効果, 木材工業, 68(12), 576-579 (2013)
・信田聡, 川井安生, 定成政憲, 槌本敬大:10か月間の水中貯木処理スギ材の乾燥性, 木材工業, 68(7), 296-300 (2013)
・田中孝, 信田聡:吸湿過程にある木材および木質材料の厚さ方向の水分分布の経時変化(第3報)-合板およびシ- ジングボ- ド内部に形成される水分分布の非破壊測定-, 木材学会誌, 58(5), 271-278 (2012)
・信田聡, 田中生, 安藤直人, 加藤禎宏:木製内窓施工による窓の断熱性改善, 木材工業, 67(9), 394- 397 (2012)
・田中孝, 信田聡:吸湿過程にある木材および木質材料の厚さ方向の水分分布の経時変化(第2報)-実験結果との比較による熱水分移動モデルの評価-, 木材学会誌, 8(4), 173-180 (2012)
・田中孝, 信田聡:吸湿過程にある木材および木質材料の厚さ方向の水分分布の経時変化(第1報)- スギ材の含水率分布の非破壊測定- , 木材工業, 67(5), 203-207 (2012)
・北村健, 信田聡:簡易ブ- スを用いた木質内装の主観評価, 木材工業, 67(2), 61-64 (2012)
・Watanabe K, Lazarescu C, Shida S, Avramidis S: (2012) A Novel Method of Measuring Moisture Content Distribution in Timber During Drying Using CT Scanning and Image Processing Techniques, Drying Technology, 30, 256- 262
・守屋翔一, 信田聡:透過型中性子木材含水率計の開発, 木材工業, 66(12), 577-581 (2011)
・北村健, 信田聡:木質内装が単純作業に与える影響, 木材工業, 66(9), 392-396 (2011)
・北村健, 信田聡:室内環境の快適性と知的生産性, 木材工業, 66(8), 338-342 (2011)
・Ken Watanabe, Satoshi Shida, Masamitsu Ohta : Evaluation of end check propagation based on mode I fracture toughness of Sugi (Cryptomeria japonica), J Wood Sci, 2011, 57:371-376
・Satoshi Shida, Salim Hiziroglu: Evaluation of shear strength of Japanese wood species as function of surface roughness, Forest Prod. J, 64(4), 400- 404, 2010
・Takashi Tanaka, Stavros Avramidis, Satoshi Shida: A preliminary study on ultrasonic treatment effect on transverse wood permeability, Maderas. Ciencia y tecnologia, 12(1), 3-9, 2010
・Joo Hoon Song Satoshi Shida:Infrared thermography for monitoring surface checking of wood during drying, Wood Material Science and Engineering, 5, 73- 77, 2010

総説等

・信田聡:乾燥による断面の収縮変形を設計段階から考える必要はあるのか,建築技術,No.784,138 (2015)
・信田聡:Wood/human Relations研究-居住性研究の未来のために, 木材学会誌,61(3),141-147(2015)
・信田聡:Wood/human relationsの視座, 第30回木質の利用シンポジウム, 29-52,  (公社)日本木材加工技術協会関西支部 (2014)
・信田聡:エクステリアウッドの課題- 温故知新- , 第5回木材利用シンポジウム, 21- 36,  土木における木材の利用拡大に関する横断的研究会, (一社)日本森林学会, (一社)日本木材学会, (公社)土木学会,  (2014)
・信田聡:熱中性子線による木材含水率測定, 2013年度木材と水研究会講演要旨集「新しい木材水分計測技術」, 11-37, 日本木材学会木材と水研究会 
・信田聡:住宅への木材利用がもたらす健康増進効果のエビデンス構築, 1- 5, (公財)LIXIL住生活財団2013年度調査研究助成報告書 (2014)
・信田聡:住宅の温熱環境試験による省エネ効果の検証実験, 住宅と木材, Vol.35, No.9, 14-24 (2012)
・信田聡:健康維持増進住宅のための木材活用課題, 木の建築, 33号, 38-41 (2012)
・信田聡:健康維持増進住宅のための木材活用技術開発課題考, 木材工業, 67(8), 328-333 (2012)
・信田聡:天然乾燥, 木材工業, 66(7), 290-295 (2011)
・信田聡:構造材の耐久性と含水率の関係, 新しい木造住宅(計画, 設計, 施工マニュアル), 125-127, エクナレッジムック (2011)
・信田聡:第11回IUFRO国際木材乾燥会議-木材乾燥研究の最近の進展-, 木材工業, 65(5), 227-230 (2010)

報告書・講習会テキスト等

・平成24年度 国土交通省補助事業報告書 伝統的構法の設計法作成及び性能検証実験検討委員会報告書, 1287- 1296, 特定非営利活動法人緑の列島ネットワ- ク (2014)
・平成25年度森林整備加速化・林業再生事業(地域材利用開発)間伐材を利用した木製外装財等の断熱工法の開発に関する報告書, 79-102, 国産材を活用したヒ- トアイランド対策協議会 (2014)
・第9回坪井記念研究助成報告書, 木質高齢者施設室内の快適性に関する調査・研究, 1- 41 (2013)
・長期優良住宅等に対応した新たな地域材製品の開発及び普及促進事業報告書, 91-119, (財)日本住宅・木材技術センタ- (2010)
・健康維持増進研究委員会・コンソ- シアム平成22度報告書, 145-176, (財)建築環境・省エネルギ- 機構 (2013)
・平成24年度才の木委託研究事業木育コンテンツ拡充事業- 木材教育コンテンツ(修正版)開発- 報告書, CD付, 1-76, (社)日本木材学会 (2013) 
・平成24年度 地域材供給倍増事業のうち木造建築物等の健康・省エネ等デ- タ収集支援事業報告書, 9-22 (2013)
・平成23年度才の木委託研究事業木育コンテンツ拡充事業-地球環境に関する教育プログラムのコンテンツ開発-報告書, 1-158, (社)日本木材学会 (2012) 
・木質内装化などによる省エネ改修の性能向上調査「地基材使用住宅の温熱環境試験による省エネ効果の検証」(監修), 1-157, 木構造振興株式会社 (2012)
・小径木加工機械検討会報告書, 1-10, (社)日本プロジェクト産業協議会(JAPIC) (2011)
・岩手県補助事業「森林整備加速化・林業再生基金」, 地域材利用拡大に向けた製品開発・商品開発, 合板の透湿抵抗試験, 1- 21 (2011)
・利用加速化緊急対策支援事業の内屋上木化等の外構材による環境貢献度調査事業報告書, 11-20, 95-107, 160-163, 国産材を活用したヒ- トアイランド対策協議会 (2011)
・平成21年度住宅分野への地域材供給シェア拡大総合対策事業デ- タ収集・整備事業報告書, 131-193, 301-346, (財)日本住宅・木材技術センタ- (2010)
・健康維持増進住宅研究委員会・コンソ- シアム平成22度報告書, 461-462, (財)建築環境・省エネルギ-機構 (2010)

趣味&自己紹介

 昔ワンダーフォーゲル部で山登りや川下りなどの活動をしていたせいか、山や海などの自然での休息が好きな性質があるようである。少し前まではオートキャンプ(車を使ったお引っ越しごっこ)に凝っていた。家族(妻+娘2人)をつれてご多分にもれず車はミニバンで出かけている。ルーフボックスも持っている。
 小さいときは東京にも「原っぱ」が多く、そこで野球をしていたせいか、生来運動神経が良いせいか、バッティングセンス、捕球能力が平均以上であるためか、野球が好きである。
 中学高校と剣道をしていたせいか、剣道はまたはじめてみたいと思っている。中学では3年間●●区の個人戦で優勝している。高校では関東大会に団体戦で出場したことがある(ほかのメンバーが強かったおかげ、ちなみに私は先鋒であった)。
 水泳は得意である。一応大会で賞状をもらったことがある。ブレストの選手。
 音楽は好きである。70年代フォークが全盛だった頃には、肩まで伸びた長髪で、アコースティックギターを奏でていた。
 スキーはあまり得意ではない。山スキーではワンダーフォーゲル部で3月の立山を一乗越から麓まで荷物背負って一気にすべりおりたことがあるが、途中スキー板(木製:このころから木材に縁があった)を折ってしましい、釘で打ち付けてガタガタいわせながら滑り降りたことがある。ゲレンデスキーは初心者の頃、五竜・遠見か八方尾根あたりの急傾斜のゲレンデまで先輩につれてゆかれ、ただ滑ってみろといわれて、転がり落ちて雪だるまになって以来、北海道旭川に5年間住んで近くにスキー場があったにも関わらず、うまくならない。
 総じて運動会系趣味が多いが、詩を読むのも好きであった。また詩作もしていた。最近は忙しさに紛れて読んでいない。
 あと温泉はとりあえず好きである。最近は浅草の銭湯に良く出かける。
 グルメもしたいが、ダイエットの身である。