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手記

東原和成 ┃ First Annual Cell Biology and Physiology Symposium ┃ 2012年2月26日-3月2日

Seminar at Brandeis Univ. and Harvard Univ. (Boston, USA)

久しぶりのボストンである。ボストンは、私がニューヨーク州立大学の大学院生のときに、ハーバードのStuart Schreiberのところに留学していた知人のもとに遊びにいった以来である。奇しくも今回招待してくれたSteven Liberlesは、Stuart SchreiberのところでPh.D.をとっている。その後、Linda BuckのところでポスドクをしてTAAR受容体を発見するなど素晴らしい仕事をしたのち、現在ハーバードでtenure trackのAssistant Professorでがんばっている若手である。ケミストリーをバックグランドに嗅覚研究に入ってきという点では、私と共通しており、ESP関係で共同研究をはじめていることもあるが、話をしていても、研究アプローチや考え方や興味など、相通じる感覚を感じる。また、ボストン郊外にあるBrandeis大学には、現在HFSPで線虫フェロモンの作用機構で共同研究をしているPiali Senguputaがいる。今回のボストン出張は、二人の共同研究者と共同研究のディスカッションをすることと、Stevenがオーガナイズしたハーバードのミニシンポジウムで講演するためである。シンポジウムの名前は、 First Annual Cell Biology And Physiology Symposium: Cell Biology of Sexual Reproductionで、招待講演者は、Bruce Baker, Nirao Shah, Barbara Meyerと私である。私はマウスの性フェロモンであるESP1の発見からのfull storyを話した。

初日は、BrandeisのPialiのところにいった。Brandeisには味覚の高次脳・行動研究をやっているDon Katzがいるが、Pialiとともにランチを一緒にした。最近でたCharles Zukerの味覚高次野の味覚マップの話で盛り上がる。彼は、味覚マップはオーバーラップしていると主張しており、Charlesの仕事をあまり信用していない。午後は、セミナーをする。ハエや線虫をやっているひとが多いということで、すべて昆虫の話をした。フェロモン受容体の同定から、チャネルとしての機能の発見、そして最近の味覚受容体の機能解析の話まで、若干詰め込み過ぎたか。

ハーバードは嗅覚研究をやっているひとが多い。そんななか、鋤鼻研究で競合しているCatherine Dulacとはじめて会った。お互いに前から名前はもちろん知っていたのになかなか会うチャンスがなかったので、Finally!という感じである。会う前はCatherineのことはあまりいい話を聞いていなかったが、会ってみるととてもいいひとで、ディスカッション好きで、とても好感をもてる。うわさというものは信用ならないものである。いままでCatherineが私にreviewを回してきたことはなかったが、帰国後、早速あるトップジャーナルの査読を回してきた。やはり一度でも直接会って話したことがあるひととそうでないひととでは違うものである。Catherineのところには奈良先端学長の磯貝先生の御曹司が留学していて、昨年Natureをだすなど活躍している。また、京都の竹市研出身の内田さんがファカルティーとしてがんばっている。Behaving miceでdecision makingの研究でいい仕事をしている。またVenki MurphyやBob Datta(Axel研出身)など鼻息があらい若手嗅覚研究者がいる。学生たちの意識もレベルも高く、さすが世界の最高学府でもあるハーバードである。日本の最高学府である東大は、所詮、世界的には20位以下である。

ボストン美術館は浮世絵など日本の美術品を数多く所蔵しており、日本との関係も深い。岡倉天心も在職していたときがあるという。最近JALが直行便を開始したので、今後ますます日本と近くなる。

平成24年3月1日(機内)

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