教養学部進学情報センター主催シンポジウム
「いま環境問題を考える」

進学情報センターのホームページに戻る


開催日時:   平成10年6月4日(木)16:30--19:30
会 場:    13号館1321, 1322(予定)

 いま環境に関わる問題は一番注目されている。本学の前期課程の学生に とってもこのことは例外ではない。本学は研究のあらゆる問題を網羅している が、環境問題への視点から本学において行われている研究の現状と将来につい て,全学部から第一線で活躍されている本学の先生方が一堂に会して、前期課 程の学生たちにその重要性を各学部からのアプローチでわかりやすく語ってい ただくシンポジウムである。そこでの内容例をキーワード的に以下に示すと


    温暖化、南北問題、森林・環境保全、公害・ゴミ・ダイオキシン問題、環境法、

    資源問題、人口問題、CO2・気候問題、食糧問題、住民運動、情報環境問題、

    環境に対する教育問題、遺伝子操作と環境問題、海洋汚染、原子力問題,環境ホルモン

などである。
 時間の関係から2会場に分かれて開催することになるので、すべてを聞くことがで きないのは残念であるが、より聞きたい講演を各自が会場を移動して選択してほしい 。大変興味ある講演が期待でき、また親しく先生方との質疑応答も期待できるので、 大勢の諸君が参加されることを希望している。

参加くださる先生方と講演内容は以下の通り。

         

法学部 :

横田 洋三 教授 (国際法)
「国際法から見た環境問題」

医学部 :

徳永 勝士 教授 (国際生物医科学講座人類遺伝学教室)
「人類の健康に関わる環境・遺伝要因」

工学部 :

板生 清 教授 (精密機械)
「環境情報センシングと光記憶システム」
柳沢 幸雄 客員教授 (化学システム工学)
「身の丈から考える地球環境問題」
磯部 雅彦 教授 (社会基盤工学)
「東京湾の青潮の数値シミュレーション」

文学部 :

似田貝 香門 教授 (新領域創成科学研究科創設プロデューサー)
「地球環境問題と地域環境問題」

理学部 :

近藤 矩朗 教授 (生物科学)
「植物の環境適応」
松本 淳 助教授 (地理学科)
「グローバルな環境問題と地理学」

農学部 :

樋口 廣芳 教授 (応用生物学)
「生物の多様性と地球環境の保全」
佐藤 洋平 教授 (生物・環境工学)
「山間地域、ウィンターツーリズム、および予想される気候変動 (オーストリアおよび日本の双方における統合的アセスメントのための枠組み)
松本 聡 教授 (応用生命化学・応用生命工学)
「土壌資源と食糧問題」

経済学部 :

石見 徹 教授 (国際経済)
「経済学は環境問題にどのように取り組むか」

教養学部 :

石 弘之 教授 (国際社会科学)
「コップ一杯の環境学」
高橋 正征 教授 (広域システム)
「生態学から見た地球環境--現状・原因・解決の方向--」

教育学部 :

山岡 寛人 教諭 (附属中・高校)
「創造的な営みとしての環境教育」

薬学部 :

本間 浩 助教授 (生体分析化学教室)
「薬学と環境化学」

司会 :

阿波賀 邦夫 助教授
松田 良一 助教授


内容紹介


先生方と講演内容の一覧に戻る


「国際法から見た環境問題」
横田 洋三 (法学政治学研究科)

環境問題は、海洋や大気の汚染を見ても分かるように、人為的に引かれた国境線 を無視して、地域的あるいは世界的な広がりをもつ。したがって環境問題との取り 組みには、一国家を越えた国際的協力が不可欠である。世界的レべルで環境問題を 扱う上で大きな役割を果たしているのが国際法であるが、それには欠陥や限界もあ る。環境問題に関する国際法の規則の歴史的発展と現状を理解し、その問題点を摘 出し、将来の可能性を探る。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「人類の健康に関わる環境・遺伝要因」
徳永 勝士 (医学部 国際生物医科学講座人類遺伝学教室)

医学部で行なわれている環境に関連する研究から、二つの分野をとり あげて紹介したい。

  1. 糖尿病などの成人病(生活習慣病)の発症には、生活習慣など様 々な環境要因に加えて複数の遺伝因子が関与すると考えられ、その実 態が少しづつ解明されようとしている。
  2. 開発途上国における水銀などの環境汚染が人々の健康に及ぼす影 響を明らかにし、経済発展、健康の増進、環境保全を達成する具体策 を見出そうとしている。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「環境情報センシングと光記憶システム」
板生 清 (工学部 精密機械工学科)

従来、コンピュータは軍事・科学・産業・娯楽分野にその威力を発揮してきた が、来るべき21世紀においては、人間、地球などの生命体の診断・保全に対 しても本格的に活用される時代に入るであろう。このためにはまず自然の発出 する膨大な情報をキャッチして、信号処理して、通信網を介して伝達すると同 時に、各種サイズの記憶装置に貯えることが重要である。つぎにこれらの情報 をうまく活用して、状態の把握・監視および環境保全へ向かうことが求められ る。これらの情報技術について述べる。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「身の丈から考える地球環境問題」
柳沢 幸雄 (工学部 化学システム工学科地球環境工学寄付講座)

地球環境問題の厄介な点の一つとして、私たちの実感でこの問題を捉えるこ とが難しいという点を挙げることができる。地球は半径6400キロメートルの、 宇宙全体から見れば小さな惑星だが、私たちの身の丈から見るととてつもなく 巨大な星である。地球環境問題を実感するうまい方法はないだろうか。いろい ろな例を挙げながら、実感できる方法を探っていきたいと思う。たとえば、今 地球上には約60億人の人が生きている。60億人の出席を採ることを考えてみよ う。一秒間に一人ずつ名前を呼ぶとすると、昼も夜も休みなく呼び続けたとし て、一体どれくらいの時間が必要だろうか。私の話を聞きにくる前に計算して おいて欲しい。

参考文献:柳沢幸雄著、「CO2ダブル」、三五館 (1997)


先生方と講演内容の一覧に戻る


「東京湾の青潮の数値シミュレーション」
磯部 雅彦 (工学部 社会基盤工学)

東京湾では,秋口になって南寄りから北寄りの風に変わると,湾奥の浦安などで海 水が緑白色に突然変わり,同時に大量の魚介類がへい死するという深刻な環境問題 を抱えている.本講演では,このような現象がどのように起きているのかを明らか にした現地観測結果を示し,さらにその数値シミュレーションについて解説するこ とを通じて,生態系のモデリングをどのように行うかの研究の一端を紹介する.


先生方と講演内容の一覧に戻る


「地球環境問題と地域環境問題」
似田貝 香門(文学部 新領域創成科学研究科創設プロデューサー)

地球環境問題の中における日本社会の位置付けと、この問題をめぐる制御の 方法としての地域環境問題への接近を考える。そして東京大学で試みつつあ る学融合としての環境学という研究分野の動向について議論する。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「植物の環境適応」
近藤 矩朗 (理学部 生物科学)

地球の大気環境は植物のガス交換などを通して徐々に変化し、植物も環境変化 に適応して進化してきた。近年の地球環境の変化は極めて急速であり、生物は適応し きれない可能性がある。クロロフルオロカーボン等によって成層圏オゾン層が破壊さ れ、地上に到達する紫外線が増加すると推察されている。植物は紫外線により様々な 影響を受けるが、紫外線に対して身を守る複数の仕組みをもっている。植物の紫外線 防御機構を例に、植物の環境適応について私見を交えて概説する。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「グローバルな環境問題と地理学」
松本 淳 (理学部 地理学科)

地球表面でおこるあらゆる現象を研究対象としてきた地理学にとって、グロー バルな環境問題は重要な研究課題である。なかでも自然地理学では、過去数十万年間 に起こった地球環境の歴史の解明に取り組んでおり、このような長期的な視点から、 具体的な場所における環境変化の原因や、自然変動と人為変動との関係などを研究し ている。砂漠化・氷河変動・海面上昇・CO2・気候問題などに関する研究の一端を紹 介したい。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「生物の多様性と地球環境の保全」
樋口 広芳(大学院農学生命科学研究科 野生動物学研究室)

この地球上には,森林から草原,湖沼,干潟,海洋までいろいろな環境があり, そこにアメーバ,ヒトデ,ナマズからゾウ,キリン,クジラにいたるまで,1,00 0万種とも5,000万種ともいわれる生物が存在している.今日,この生物の多様性 は,人間の生活圏の拡大や諸活動によって,世界中のあちこちで急激に失われて いる.そうした中で,生物の多様性を保全しようとする活動が各地で行なわれて いる.生命の星,奇跡の惑星,地球の生物多様性の未来は,今や,われわれヒト という生物の1種の手にゆだねられている.われわれはあらゆる叡知を集め,こ のかけがえのない地球の自然や生物を保全していく必要がある.それは,われわ れ自身の存続にもかかわっている.


先生方と講演内容の一覧に戻る


「山間地域、ウィンターツーリズム、および予想される気候変動 (オーストリアおよび日本の双方における統合的アセスメントのための枠組み)」
"Mountain Regions, Wintertourism and Possible Climate Change (Two Integrative Assessments Frameworks for Austria and Japan)."
佐藤 洋平 Meinhard Breiling
(大学院農学生命科学研究科  生物・環境工学専攻農地環境工学研究室)

気候の変動しやすさと予想される気候変動とは、寒冷な気候を持つ山間地域にとって 、大きな経済的脅威である。これまでのところ、起こり得る温暖化による潜在的な損 失を計量化するためのアセスメントはまったく行われておらず、そこでわれわれの研 究室では昨年、日本における影響を評価するためのプロジェクトをスタートさせた。 外国で行われた既往の研究によれば、ウィンターツーリズムによる収入を抜きにして は、経済が立ち行かないのが山間地域の多くの状況である。もし他に収入を得る手だ てが見つからなければ、住民は住み慣れた故郷を追われる羽目になるかもしれない。 オーストリアでは、GNPの約4%がウィンターツーリズムの貢献によるのだが、この国 のデータ−を用いて、山間地域のウィンターツーリズムに対する依存性を示す。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「土壌資源と食糧問題」
松本 聰 (農学部 応用生命化学・応用生命工学)

人類が土壌を培地に生物生産を行うようになって既に7千年が経過しようと しているが、土壌培地に種子を播種し、一定期間の栽培後に収穫するというパ ターンは今日に至るまで基本的には何らの変化もなく続けられている。しかし、 土壌培地はこの間次々と荒廃し、今ではまったくの荒野に化した所も少なくな い。土壌培地が生物生産のための永久機関ではないことを明確に示めすととも に、今後の持続的な生物生産方式をどのように展開して行くべきかを土壌環境 問題と食糧問題を関連させて論じてみたい。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「経済学は環境問題にどのように取り組むか」
石見 徹 (経済学部 国際経済)


先生方と講演内容の一覧に戻る


「コップ一杯の環境学」
石 弘之 (教養学部 国際社会学専攻 国際環境科学)

君の前に水の入ったコップがある。この分子の1個は徳川家康のオシッコだっ たかもしれない。何百年か何千年、地球をめぐっていま君に飲まれようとして いる。中には微量な金属、化学物質、有機物・・・さまざまなものが溶けてい るはずだ。半世紀前の水にはまったく含まれていなかったものがほとんどだろ う。環境が刻々と悪化を続けている。コップの中にもその現実がある。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「生態学から見た地球環境--現状・原因・解決の方向--」
高橋 正征 (教養学部 広域システム科学系)

地球環境は人間の生活する場としては相応しくない方向に変化していて、こ れが地球環境の問題として取り上げられる。地球環境の現状は、1)地球上の 土地利用の変化(森林が潰されて都市・農地・荒れ地に変化)に伴う生物活動 の変化、2)様々な濃縮資源の大量利用による環境の汚染や変化、3)人工合 成物質の生産と利用による地球環境の汚染や変化、に分けられる。この根本的 な原因は、過剰な人口と個人の欲望の増大である。解決は、地球環境を人間を 含めた生物にとって安全な生活環境に回復・維持することで、そのためには上 に上げた三つの現状の解決が必要で、さらにはその奥にある人口と個人の欲望 の問題に正面から取り組む必要がある。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「創造的な営みとしての環境教育」
山岡 寛人 (教育学部附属中学校・高等学校)

環境問題の絶望的な現実は、子どもたちが作り出したものではない。環境破 壊の現状あるいは危機感だけをいくら示しても、困惑に終わる。はやりの解決 のための活動には徒労感がつきまとい、しらけるだけだ。演者は、先進国に生 活する私たちが大量生産・大量消費・大量廃棄の構造から解放されることが解 決の糸口だと考える。自らの創造的な生き方を模索しながら、「新しい」環境 教育を子どもたちとともに創り出す試みを続けている。


先生方と講演内容の一覧に戻る


「薬学と環境化学」
本間 浩 (薬学部 生体分析化学教室)

環境問題をいま考える時、薬学の立場からは「環境問題を化学的に考える」こ とになります。つまり、「環境化学」と言うことです。中でも、毒性学と分析化学が その中心を成すものとして大切ではないかと、私は思っています。環境汚染物質がど のようなメカニズムでどのような生理活性・毒性を示すのかを明らかにする毒性学と 、汚染物質がどこにどのくらい存在するのかを明らかにする分析化学です。薬学での 研究例を紹介します。


agc@park.ecc.u-tokyo.ac.jp

Last modified: Thu May 28 16:16:37 JST 1998