学科紹介

システム創成学科

http://si.t.u-tokyo.ac.jp/

システム創成学科教授 石谷 久

本学科は従来の工学応用部門,即ち産業分野に立脚してきた伝統的な4学科がその共通手法であるシステム分析,設計,実現,評価など理論,技術,手法によって総合的,且つ現実に社会の要請に応じたシステム創成に対応し得る学生育成に衣替えした新しい学科です.

 具体的な内容は以下のコース案内に示されますが,今世の中ではやっている破壊的改革というのか抜本的改革を従来閉鎖的,保守的と言われてきた大学内で進めた珍しい実例といえそうです.このような新しい試みは幸い学生諸君にも評価されて多くの学生の志望を得て,この度初めての3年生を本郷に迎えました.いずれも自分で何かを創ろうという意欲に富んだ積極的な学生で,初年度にも関わらず活気に満ちた講義,或いは活動が進行中です.初めての5月祭もマンネリに陥ることなく(前例がないので陥りようもないのですが)積極的に取り組んでそれなりの成果を上げました.

 このような新学科創設の最大の成果の一つとして若手教官のきわめて積極的な学科運営への参加意識を感じています.暗黙の社会秩序と伝統的な各種の組織,規則は一度確立すると周囲環境の変化への対応に遅れが出がちですが,幸か不幸か本学科はそのようなのんびりしたことを考えている余裕もなく,活動的な若手の教官がイニシャティブを持って社会の要請に応えようと張り切っています.同時に学生諸君もこれに応えて新しい学科を皆で創っていく,まさに学科創成が最初の応用という意識で取り組んでいるような熱気を感じさせられます.我々老齢化?した教官はこれを支えつつ,今まで蓄積した学科運営,教科設定のノウハウ,或いは外部関係を活用して新しい学科が健全に発展すべく努力しており,学生諸君が将来とまどうことなく社会で重要な役割を果たしていけるような環境づくりに努めているので,安心して共に新生学科創設に加わっていただきたいと願っています.


環境・エネルギーシステムコース

http://www.si.t.u-tokyo.ac.jp/ee/

システム創成学科教授 山口 一

 人類の営みと地球環境の調和、持続可能な社会の構築は21世紀最大の課題といえます。当コースは、環境・エネルギー問題を長期的かつグローバルな視点から評価・解析し、これに取り組む人材の育成を目指しています。環境・エネルギー問題と関連する海洋と地球の環境科学やフロンティア工学、資源開発、さらには、未利用エネルギーとエネルギーサイクルなど、未来志向領域も含めた環境・エネルギー調和型システムを対象とし、工学だけでなく、環境・エネルギー経済学、環境・エネルギー政策論など、経済・社会科学的な要素も取り入れたカリキュラムを用意しています。

 このコースで教育を受け基礎を身に付けた卒業生の進路としては、以下のような分野があります。

<啓蒙活動>科学ジャーナリズム、マスコミ、研究室に閉じこもらない科学者、教育者

<社会の舵取り>国連などの国際機関、中央官庁、地方自治体、政治家

<環境エンジニアリング>環境コンサルティング、シンクタンク、企業の開発計画部門で環境影響を常に正しく考慮しながら立案する技術者、機器設計や機器開発において環境影響を常に考慮しながら取り組む技術者

 平成13年度は、53名の進学生を受け入れました。皆「自分たちが歴史を作るんだ!」という意欲に燃えています。平成12年度2年冬学期の「動機付けプロジェクト」では、環境・エネルギーに関わる種々の問題とその解決策の考案に取り組み、発表をしました。卒論顔負けの発表で、先生方が感涙にむせんだ程です。クラスの雰囲気も大変良く、「システム創成学科の癒しの空間」を自認しています。コースのホームページを是非ご覧下さい。


シミュレーションコース

(http://www.si.t.u-tokyo.ac.jp/sim/)

システム創成学科教授 大橋 弘忠

シミュレーション、あやふやな言葉ですね。何を目標に何を教育しているのでしょうか。

これまでの科学技術は、対象を分析し、簡単化してモデルを作り、分からないところは実験で確かめて、自然を理解し、人工物を設計してきました。ところが、わたしたちの理解が深まり、科学技術の扱うべき対象が広がってくるにつれ、このような方法は困難となってきました。地球環境、生命、人間、複雑なプラントなど、単純化ができない、実験ができない、切り離すと本質を損なう現象が課題となってきたからです。

新しい方法がでてきました。シミュレーションです。現象の本質を抽出してモデル化し、コンピュータの中に対象を創ります。それを使って、対象を解明し、分析し、設計し、システムを創り上げていこうというものです。

シミュレーションコースでは、人工システム、ネットワークシステム、生物・生態システムなど自然、人工物、社会における複雑なシステムを対象とし、それらを解明し、新しい発見をし、新しいシステムを創り上げていくための考え方と手続きの教育を行っています。コンピュータの教育とは違います。対象の本質を捉えること、そしてそれを表現することが重要で、基礎的な物理現象の理解や、システムの階層的な成り立ちの理解が必要になります。

対象はリアルワールドです。そのため、情報基礎、工学基礎に加え、物理モデリング、システム構造、 グラフィックス、脳システムなどについての講義と演習、具体例に基づいたプロジェクトを行います。これらを通じて、深い洞察力と豊かな想像力を持ち、自然・人間・人工物・社会の様々な現象を予見し、斬新なアイデアを提案して試行錯誤的に実行していく能力を備えた人材を育成します。



生体・情報システムコース

(http://www.si.t.u-tokyo.ac.jp/bis)

システム創成学科教授 稲田 紘

今後のわが国では少子高齢社会がいっそう進展しますが、このような情勢下で安全・快適な生活を送るには各種の高度技術に基づく支援が不可欠です。本コースでは、このような高度技術としての情報技術およびこれをベースにした生体の解析・制御のための手法・技術、情報技術を支えるナノテクノロジやメカトロニクスに関する幅広い研究・技術分野に取り組みます。具体的には、ウエアラブル情報機器とこれを用いた環境の評価と制御、大容量光通信技術、医用画像を含めた画像処理技術などの情報機器・技術、遺伝子解析装置、各種生体計測機器、手術支援ロボティクスなどの治療機器、VRを用いた身体機能訓練のための福祉システムなど生体機能解析や医用・福祉に関連した機器・システム、さらにはこれらの基盤技術としてのマイクロマシン、ナノシステム、微小物製造科学といったことに関する研究・開発を行います。そして、これらを通じてこうした広領域で活躍できる人材育成をめざします。

本年に立案されたわが国の科学技術基本計画の重点的開発分野として、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料などの分野があげられていることからも理解されるように、生体・情報システムは今後、最も重要な分野として発展が期待されます。

本コースのカリキュラムは、基礎理工学教育に加え、携帯情報端末を使った位置探査、自分専用PCの組み立てやプログラミング演習から先端加速器を用いた実験に至る豊富な実践的工学教育を柱に、問題解決能力を持つ技術者養成をめざしています。とくに卒論の研究室配属を4年生の4月に行い、現役外科医を含む多彩な教授陣の指導による卒論研究を通して、必要な能力・資質を学生諸君が自主的に修得することを期待しています。


知能社会システムコース

(http://www.si.t.u-tokyo.ac.jp/psi/)

システム創成学科教授 木村 文彦

 本コースはデザイン・テクノロジーとテクノロジー・マネジメントの教育を行い,技術系の経営/政策エリート(エグゼクティブ・エンジニア)を養成するために設けられました。エグゼクティブ・エンジニアとは,従来の工学体系が大切にしてきた要素技術の重要性を認識し,その可能性と発展性を広い視野から探求することのできる新しいタイプのエンジニアです。情報技術などの先進的アプローチによって,新しいプロダクト/サービスや産業を創出したり,環境,行政,福祉,金融などの複雑な問題を解決できる新しい社会システムを創成する人材の育成をめざします。

 カリキュラムは,工学の基礎科目に加えて,技術マネージメント,起業論,ビジネス戦略,ライフサイクル工学,産業情報システムなどを体系的,効率的に学習し,応用できるように小人数のプロジェクト演習を核として構成されています。また,各教官が勉学,進路等で小数の学生のアドバイザーとなる「ビッグブラザー制」が導入されています。多様な経歴を有した教官を配してカリキュラム内容の充実に力を注いでいます。

 学生の就職や大学院進学などの進路については、上記のようなコース理念とカリキュラムに基づく多様な選択肢があります。就職先では,デザイン・テクノロジーの主旨に沿う情報・機械・電機・エネルギー関連企業や,テクノロジー・マネジメントの主旨に沿う政府関係機関・経営戦略・金融関連企業などが挙げられます。

 東京大学大学院の進学先についても、工学系研究科,新領域創成科学研究科,などの中に,上記の理念を実現する数多くの研究室が用意されています。本コースで培われた基礎的素養をいかし,各自の希望に合せた選択機会を提供できるようになっています。