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専修紹介

農学部第五類 農業構造・経営学専修

       開発政策・経済学専修

 

        ガイダンス担当 岩本純明

 

1.農業・農村問題への社会科学的アプローチ

 両専修は、旧農業経済学科を母体として誕生した、いわば双子のようなものです。農学部のほとんどの研究室が自然科学的手法をとるのに対して、本専修は農業経済学を基礎に社会科学的なアプローチをとる点で大変ユニークな存在です。農業経済学は、経済学の応用を基本に、経営学、歴史学、社会学、さらに農学など関連領域の成果を積極的に取り入れて、農業・農村のさまざまな問題を解明しようとする学問です。応用科学・総合科学としての農業経済学は、農業や食料の問題をグローバルに考えてみたいという学生諸君の期待に、十分に応えてくれる学問分野だと確信しています。以下、具体的に両専修の特徴を紹介していきましょう。

 飽食の時代といわれる今日では、農業や食料問題を身近な問題として感じることは少ないかもしれません。確かに日本など先進国では、GNPに占める農業の比重は数パーセントにまで低下してしまいました。ただしこの点には留保が必要で、食料の生産部門だけでなく、流通・加工部門、さらに外食産業などの関連分野にまで視野を広げると、農業・食料部門の範囲は著しく拡大します。今日では、農業部門も、生産から消費に至る「フードシステム」の一環として検討しなければならないわけです。

 しかし広く世界に目を向けると、農業生産のあり方が日々の生活を直接左右している地域は少なくありません。現在もなお世界人口の半分以上は農村に住み、農業を主な働き場所にしています。こうした国々では、日々の糧をどう確保するかが、依然として最優先の課題なのです。深刻な飢餓に見舞われながらも、世界の人口は毎年1億人のペースで増え続け、遠からず100億人のレベルに達すると推計されています。地球環境を破壊することなく、生存基盤である食料をいかに供給するのか−21世紀の最重要課題はまさにこの点にあるといってよいでしょう。

 食料問題と密接に関連する今一つの課題は環境問題です。農林業生産は自然環境を基盤にしつつそれに働きかけ、食料など人間にとって有用なものを取り出してくる営みですから、自然環境を壊してしまっては存続できません。農林業が環境の形成やそれを維持するうえで大変重要な役割を果たしている点については、最近多くの人が注目するようになってきました。水源涵養に果たす森林の役割はよく知られていますが、山間部に展開するわが国の棚田も、洪水や地滑りを防ぐ上で大切な役割を果たしています。また自然に恵まれた田園地域は、人々がレクリエーションを楽しんだり居住したりする空間としても貴重です。このような農林業の多面的機能をどう評価するかも、本専修の重要なテーマの一つです。

 食料問題も環境問題も、人類が21世紀に持ち越す大きな課題です。農学は、こうした人類的課題の解決を目指す学問の中心に位置しますが、わが両専修も、農業経済学をツールとしてこのチャレンジの一翼を担おうとするものです。地球大にグローバル化した市場経済システムの構造、こうした社会・経済システムの下における農家経営の行動原理、農業への政策的介入の手法と効果、農業と環境の調和的発展など、農業経済学が解明すべき研究上のフロンティアは、近年、大きな広がりを見せているのです。

 

2.研究室・研究分野

 農業構造・経営学専修は、農業経営学・農政学・農業史の3研究室、開発政策・経済学専修は、国際フードシステム学・食料資源経済学・経済学の3研究室からそれぞれ構成されています。本専修について具体的なイメージを持ってもらうために、両専修における最近の研究テーマの一部を以下に紹介しておきましょう。「農業における企業的経営の成長と管理」、「米の流通とマーケティング」、「日本・韓国・台湾・中国の農業構造の比較研究」、「条件不利地域農業の存立条件」、「旧計画経済諸国の農業改革」、「土地制度史・比較土地改革論」、「環境史・環境保護運動史」、「発展途上国の農業・農村金融」、「アグリビジネスの産業組織」、「先進国農業政策の比較研究」、「東南アジア農業の構造調整と経済成長」、「アジアNIESの成長パターンの産業連関分析」、「国際農業調整と環境保護」等々。

 農業経済学が対象とする分野の広がりがよく理解できたことと思います。また近年では、ヨーロッパ・アメリカ・アジア諸国など、海外の研究者との共同研究も急増しています。学生諸君が海外調査に参加するチャンスも増えています。グローバルな視野にたって国際的に活躍したいと考えている学生諸君の進学をおおいに歓迎します。

 

3.カリキュラム

 両専修を「双子」にたとえましたが、この点はカリキュラムにもよく表れています。ゼミが専修毎におこなわれること以外、カリキュラムは両専修に共通です。地域経済フィールドワークや卒業論文の発表会など各種行事も両専修共同でおこなっています。必修科目も大幅に減り、演習・農作業実習・卒業論文だけになりましたので、自分の関心に応じて幅広い分野から講義を選ぶことができます。

 演習は専修あるいは研究室ごとに共通のテキストを取り上げ、輪読していくものです。少人数ですので、密度の濃いディスカッションができます。地域経済フィールドワークは選択ですが、両専修が重視するユニークな科目です。現実との格闘を通して、学生諸君が自らのテーマを発見をして欲しいという期待がこの科目には込められています。具体的には、3年生の夏休み期間を利用して3泊4日の日程で農村を訪ね、農家や農業関連機関を調査します。農家に宿泊し、じっくりと話を聞かせてもらうチャンスもあります。農村や農家の実態にふれて、多くの発見をする機会となるに違いありません。調査結果は報告書にまとめますが、学生生活の貴重な記録となります。多くの学生は、フィールドワークで発見したテーマを深めて卒業論文に結びつけています。

 参考のため、本専修で開設している主な科目を以下に列挙しておきましょう。農業経済学、経済原論、ミクロ経済分析、マクロ経済分析、農業経営学I・II、農政学、比較農業政策論、農業史、農学史、農業経営情報論、マーケティング論、開発経済学、国際農業経済学、アグリビジネス論、農業財政・金融論、数量経済分析、農村計画学、比較農業法など。

 

4.卒業後の進路

 両専修と密接に関係している大学院専攻は、農業・資源経済学専攻です。両専修から毎年数名が大学院に進学しますが、このほか、他大学・他学部・他専修からの進学者も多く、修士課程には毎年10名前後の院生が入学しています。

 卒業後の進路が非常に多彩なのも本専修の特徴です。主な就職先は、農林水産省・通産省・建設省などの中央官庁や都道府県庁、食品産業・鉄鋼・自動車などメーカー、銀行・証券会社、商社、マスコミ(新聞社、NHK)、農業団体(全中、全農)、その他(NTT、博報堂、東京ガスなど)ですが、近年は国際協力事業団(JICA)や海外経済協力基金(OECF)など、国際協力の分野に就職する人たちが増えています。また、公認会計士や司法試験などの資格試験に挑み、難関を突破する人が増えてきたのも最近の特徴です。

 研究者を目指す大学院卒業生は、大学や各種研究機関に就職しています。

 

5.おわりに

 以上述べてきたように、両専修が扱う研究分野は近年大きく拡大しています。経済学・経営学・社会学・歴史学などの最新の成果に学びつつ、農業・食料問題、途上国開発、環境保護の3領域に果敢に挑戦していくのがわが専修の持ち味です。テキストブックの世界に飽き足らない学生、農業・農村の現実との格闘を通して考察を深めたいと考えている学生諸君の進学を期待しています。

 

 進学相談

  専攻長 教授  生源寺真一 内線5325

  農業構造・経営学専修担任

      助教授 岩本純明 内線5326

  開発政策・経済学専修担任

      助教授 齋藤勝宏 内線5330