専修紹介

農学部第六類
生物システム工学専修・地域環境工学専修

大学院農学生命科学研究科
生物・環境工学専攻
専攻長  蔵田意次

 両専修の名前は、あまり聞き慣れないもので、具体的イメージをつかみにくいかもしれません。この小文でなるべく具体的イメージがもてるように両専修を紹介してみようと思いますが、まずは、一般的な議論から始めましょう。

 今日、人類の将来を左右するような地球環境問題や、食糧問題などが注目され、多くの学部、学科、あるいは専修がこれらの問題と関わっています。これらの問題に関心をもち、将来、これらの問題と取り組んでみたいと思っている学生も多いと思います。上記の両専修も、これらの問題に大きな関心をもち、その活動の中心に据えています。しかし、これらの人類的な大問題は我々を取り巻く身近な問題と独立に存在しているわけではありません。両専修は、アメニティーなどの身近な問題も取り上げています。一方では、将来的な宇宙での人類の活動などの先端的な人類活動とも関係する分野です。

 上述の文章からわかるように、両専修のカバーする領域は地球環境問題や食糧問題などを含む非常に幅広い領域です。それでは、地球環境問題などを扱っている他の学部などとどこが違うのでしょうか。両専修の基本には「生物」がある点を挙げることができるでしょう。すなわち、上記の諸問題にはいろいろな切り口があり、それぞれの切り口から、いろいろな学部・学科あるいは専修が取り組んでいるわけですが、両専修では、これらの問題と「生物」をキーワードとして取り組んでいます。

 それでは、両専修は生物学を学ぶところかという質問があると思いますが、必ずしも生物学だけではありません。むしろ手法的には工学的な色彩が強いといえましょう。また、計画論的な手法を用いる分野もあります。すなわち、両専修の基本には「生物」がありますが、直接的に生物を扱う分野もあれば、生物の機能を利用するための工学や生物生産の環境を整備するための工学なども含みます。このように、両専修は、対象とする分野が広いだけでなく、手法も工学を中心に幅広いという特徴があります。少し、話が抽象的になりすぎましたので、もう少し具体的に専修ごとに説明しましょう。

生物システム工学専修

 生物システム工学専修に深く関わる大学院の大講座は大学院農学生命科学研究科生物・環境工学専攻生物システム工学大講座と生物環境情報工学大講座です。

 当専修の内容を理解するには、これらの大講座に属する研究室の課題をみるのが一番わかりやすいと思いますので、そのいくつかを列挙してみましょう。

 生物の機能を最大限発揮させる人工環境の創造やその将来的な宇宙基地での食糧生産や物質循環制御への応用、増加する大気中の二酸化炭素濃度が植生に与える影響の実験、組織培養のロボット化・システム化、自律走行ロボットの開発、生物素材の代謝制御や加工法・貯蔵法の開発、上記諸課題に関係する生体情報の獲得・解析や人工知能手法の応用などの情報工学などです。

 これらの課題からわかるように、当専修は、生物学(主に植物生理学)を基本に主に工学的手法によって食糧生産や環境問題と取り組む分野といえましょう。もちろん、ロボットの開発などのように、工学的色彩の濃厚な課題も含んでいますが、ロボットが対象とするものは生物ですので、それなりの困難さとおもしろさのある領域です。

地域環境工学専修

 深く関わる大学院組織は上記専攻の地域環境工学大講座と生物環境情報工学大講座です。これらの大講座に属する研究室の課題のいくつかを列挙してみましょう。

 食糧の持続的生産と地域生態系の保全をめざし生産性と快適性を備えた農地・農村の整備、リモートセンシソグ・GISによる地域環境解析、水資源利用と水環境保全、パイプラインなどによる水輸送とシステム解析の技術開発、土車中のエネルギー・物質環境制御、微生物活動が土壌の物理性に及ぼす影響解析、上記課題に関係する情報工学などです。

 上記の課題の多くは、生物生産や環境問題に大きく関与する水と土を扱っていますが、それにとどまらず、アメニティーなどの地域全体の問題をも扱っているところに特色があります。どちらかというと、生物そのものを扱うというよりは、生物の利用、あるいはそのための環境整備などを扱う分野といえましょう。このように両専修では、対象分野に若干の違いはありますが、両者ともに、比較的身近な問題から環境問題や食糧問題などの規模の大きな課題までを対象とするという共通点があります。

カリキュラムについて

 教養学部4学期の農学主題科目や課程基礎科目の修得後、3年春に弥生にきて本格的に六類関連の授業を受けることになります。大雑把にいうと、3年は授業・演習・実験が中心で、4年は卒業論文が中心となります。

 演習と実験は両専修で同じです(このことが、両専修が六類としてまとまっている理由です)。実験は3年の夏学期、冬学期を通して合計6つありますが、そのうち、3つ以上履修する必要があります。これらの実験を通して、両専修の分野の基本的な実験手法を修得することになります。実験の頻度そのものは、他の専修に比べて少ないのですが、このことは、それだけ実験の重要性が低いという意味ではありません。基本的に両専修とも実験を主体とする分野で、実験を通して対象を解析していく手法を修得することは六類の学生の基本的な課題です。また、このことは4年になって取り組む卒業論文の基礎にもなるわけです。我々は、学生実験の効率を上げ、コンパクトにするよういろいろ試行錯誤してきました。その結果、現在のような体制になったわけです。

 3年の冬学期期間中に、卒業論文のための研究室配属を決めます。4年は卒業論文の課題と取り組むことが基本となります。多くは実験がメインになりますが、数値解析や計画論などの課題もあり、分野の広さを反映して、卒業論文の課題も様々です。卒業論文は、授業などの受動的な学習とは異なり、学生が主体となって1つの課題と取り組むことが基本となります。その過程を通して、研究のおもしろさを味わい、もっと深く研究してみたいという動機で大学院に進学する学生も多くいます。

大学院と卒業後の進路について

 上述のように、六類と密接に関係している大学院の専攻は生物・環境工学専攻です。最近では、学部卒業生の過半数が大学院に進学しています。その他の就職先は、農水省などの官公庁、建設・土木関連会社、食品・自動車・コンピュータなどのメーカーなどです。修士課程に進学した学生の4割は、博士課程に進学しています。修士課程修了後の就職先も官公庁、建設・土木関連、メーカーなどです。官公庁の就職では、海外派遣などで国際的に活躍する卒業生も増えています。博士課程修了後は大学・公立や民間の研究期間に就職しています。

おわりに

 農学部六類では、学生諸君に、生物と環境に関する基礎知識、問題を解決するための工学的知識のみならず、それらの知識を総合して問題と取り組むトータルな力を身につけてもらいたいと考えています。積極的な志にあふれ、好奇心旺盛で気概に満ちた学生諸君の、生物システム工学専修・地域環境工学専修への進学を期待しています。

進学相談

電話(03)3812−2111

 専攻長 蔵田意次  内線5353

 専修担任(生物システム工学)
     大下誠一  内線5362

 専修担任(地域環境工学)
     島田正志  内線5347

ホームページ

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