学科紹介

工学部精密機械工学科

大学院工学系研究科精密機械工学専攻
教授 板生 清 /助教授 鈴木宏正

特色:

 精密機械工学科は、常に時代の先端をゆく製品を開発する技術の研究と教育に携わってきました。古くは兵器からはじまり、時計・カメラ・自動機械を経て、今日、それは医用磯器、生体情報システム、光情報システム、ウェアラブラル情報機器、ロボットなどのマイクロメカトロニクス機器群となって、その設計・生産技術に力点を置いた研究を行っています。

 歴史的には明治20年の造兵学科に始まり、当時の最先端技術である弾道制御技術、超精密加工技術を中心に兵器の開発研究が行われていました。戦後、平和産業の時代になって、時計・カメラなどの精密機械の研究開発教育に転向し、いち早く日本の精密産業を立ちあげるのに貢献し、今日に至っています。さらにこの間、メカトロニクス技術を確立し、ロボット技術立ち上げの中心的役割も果たしてきました。

 したがって、精密磯械工学科は、電気と機械の接点の少なかった時代に、機械・電気系と情報系を組み合わせたメカトロニクス、あるいはロボテイクスを学科の教育研究の中心的課題として最初に取り組んできました。この分野は、今や機械システムの基本技術となっています。また、近年急速の進歩を遂げているマイクロマシン技術も、当学科のお家芸である精密加工、精密組立、精密測定技術の延長上にあり、そこに半導体プロセスが融合されたものとして位置付けられます。それらの応用のうえに、医用精密・情報マイクロシステムがあります。さらに、従来のアナリシス中心の工学から、複雑な問題領域に対するシンセシスの重要性を説き、旧来の工学領域を横断的にする体系へ展開する人工物工学も当学科に在籍されていた前吉川総長の一般設計学の思想が起源といえます。

分野:精密工学は未来社会のコアテクノロジーです。

 なぜ、このように精密機械工学科が時代の先端を走って来られたのか。それは、我々が常に、「豊かな未来社会を実現するために何をしなければならないか?」という問題を考えてきたからだと思います。そのために、常に社会や企業との接点を保ち、活動をオープンにする努力も続けてきました。

 そして今、豊かな未来社会実現の鍵は、人間一人一人の生活の質を向上させることにあると考えています。21世紀を間近に迎え、我々は、新しい工学研究のフロンティアとして、○環境・生産、○医療・福祉、そして新しい基盤産業としての○高度情報・通信技術の三つの分野を重視し、教育・研究を展開しています。図は、関連する分野のキーワードを示しています。

学科の組織 精密機械工学専攻の教育・研究は本郷、六本木、そして駒場のキャンパスで行われています。学部教育は本郷にある精密機械工学科で行われ、3年生60人、4年生60人が在籍しています。大学院は本郷および六本木の生産技術研究所、駒場の先端科学技術研究センターや人工物工学研究センターを含めた精密機械工学専攻で教育研究が行われ、大学院生130人、教職員80名(概数)の組織です。さらにインバースマニュファクチャリングラボ、メンテナンス工学(JR東日本)寄付講座、実装工学ラボなどと連携しています。

カリキュラム

 精密機械工学は、非常に広い分野を含みます。そこで、カリキュラムも下記のように広い分野に亘っています。このような分野を一貫して体系的に学ぶことで、精密工学の目標とする、新しい工学のパラダイムを学ぶことができると考えています。

情報・数理:情報システム、信号処理、応用数学、最適化理論

マテリアル・プロセス:材料工学、精密加工プロセス、精密測定、量子工学

ダイナミックス:材料力学、連続体力学、機械力学、振動学

医用・福祉:生体機能論、医用工学、医用機器学

設計・シンセシス:計算機援用設計、信頼性工学、設計学、機械デザイン、

メカトロニクス:自動制御、ロボット工学、メカトロニクス工学、情報機器工学

プラクティス:設計製図、応用物理学実験、小グループ演習、自由設計演習、工場見学、工場実習、英文輪講

講義の特色 講義の中で、特色のあるものをいくつか紹介します。小グループ演習では、3年生が各研究室に4〜5名ずつ配属され、研究室の研究内容を教わったり、大学院生と簡単な実験を行い、4年生からはじまる卒業研究の雰囲気を学びます。

 輪講は、英語論文を読み、他の学生や教官の前で発表する授業で、発表の後の質疑ではみんなかなりの緊張を強いられます。工場見学および工業実習では、近郊の工場を見学したり、夏休みに企業で実習を行うことで、実社会について学ぶ機会を設けています。

 卒業論文は、4年間の学部学生として学んだ知識を、工学研究としてまとめることによって集大成するためのカリキュラムです。また、研究テーマの決定、研究方法の選定、研究の結果のまとめ方などについて、研究室において体験的に学ぶことができます。一年間のこの経験は、将来、研究者となる者には勿論、技術者にとってもその後の人生の原点となります。

 また、学科のアクティビティーとして、毎年春休みに、3年生以上の学生を対象とした海外研修旅行を実施しています。これまで、北アメリカや西ヨーロッパを中心に約2週間の日程で、企業や大学を訪問し、最先端の技術・研究に触れ、また現地の研究者や学生とも交流できるので、海外に対する理解を深める大変いい機会になっています。

卒業生の進路 精密機械工学科の卒業生の進路は、年を追うごとに多彩なものとなってきています。最近の就職先は情報・通信がトップですが、電機、機械、精密機械、自動車、素材、エネルギー関連、さらには、官庁、商社、航空、建設、マスコミに至るまで、あらゆる分野で活躍する先輩の姿を見ることができます。今産業界は、21世紀へ向けて既製の業種の枠を越えた新しい姿へと変貌しつつあり、単一学問分野にとらわれず、シンセシスを中心として新しい技術の体系化を目指す精密機械工学を学んだ者は、未来型の技術者として、さらに広く活躍の場を見出すでしょう。

大学院 大学院は広い視野を持った専門技術者、独創的な研究能力のある研究者を養成するために設けられたもので、学部卒業後2年間の修士課程(定員37名)とその後さらに3年間の博士課程(定員17名)とがあります。いずれの課程も本学科以外の出身者にも広く門戸を開き、毎年、他大学や他学科、他専攻から多くの受験者が受験しています。

進学に関する相談は、 土肥教授(内線6480、dohi@miki.pe.u-tokyo.ac.jp)、鈴木助教授(内線6490、suzuki@cim.pe.u-tokyo.ac.jp)、太田助教授(内線6456、ota@prince.pe.u-tokyo.ac.jp)、または、事務室(工学部14号館7階、内線6444)までお願いします。また、学科のホームページhttp://www.pe.u-tokyo.ac.jp/にも詳しい情報があります。


agc@park.itc.u-tokyo.ac.jp