学科紹介

工学部電気系3学科(電気工学科・電子情報工学科・電子工学科)

工学部電子工学科
進学ガイダンス担当 田中 雅明

 現代の電気・電子情報・電子工学は非常に広い領域をカバーしており、あらゆる工学の基幹を成す分野でありながら、かつ科学技術の最先端を担う分野として、将来もますます拡大発展してゆくことが予想されている。

教育・研究内容

 工学部電気系3学科で行われている教育・研究は、概ね次の3つの分野に分けられる。

A.「エネルギー・制御」の分野では、将来のエネルギー源をめざす核融合、原子力発電をはじめとする各種の高効率エネルギー変換、電気エネルギーの輸送・貯蔵方式、超電導材料の応用機器開発、パワーエレクトロニクスを利用した機器開発とその効率的な利用・制御など、エネルギー問題の各局面がある。また、超高速鉄道や高密度輸送システムの開発、環境の保全・制御を考慮したエネルギーシステム工学、遺伝子(DNA)などバイオ操作等の新しい応用も考えられている。さらに、ロボットや電気機器などを用いた自動制御装置などに関連した制御・情報工学もこの分野の大きな部分を占め、その技術は大規模システムを効率的に計画・建設・運用するためにも駆使されている。

B.「情報・通信・メディア」の分野では、コンピュータを中心とする情報処理の領域と、メディア通信を中心とする領域がある。コンピュータの役割はかつての単なる計算から、設計の自動化、教育や医療の高度化、個人情報管理などへと広がり、音声認識やロボットなど人工知能の方面にも進展している。一方、通信・メディアの方では、電話やテレビジョンに代表される電気・光通信技術に加えて、最近では携帯電話などの移動体通信技術、情報処理と結びついたデータ・画像通信、さらにマルチメディアのための処理・通信技術へと発展している。その基礎も、抽象数学・言語理論・情報理論・生体工学・システム工学など最近の科学の最先端の分野を含んでいる。

C.「エレクトロニクス」の分野は、ハイテク技術の根幹である半導体電子デバイス・集積回路技術、光デバイス・光通信技術を中心として、それらを支える原子レベルでの材料設計・基礎物性の分野から、実用的なシステム構成に至るまでを含んでいる。トランジスタなどの半導体電子デバイスを多数組み合わせた半導体集積回路(VLSI)は、コンピュータなどあらゆる電子機器の心臓部であり活発な研究が続けられている。また、光通信や光情報処理技術の必要性が増すと共に、光ファイバ・光スイッチ・半導体レーザなどの光エレクトロニクス分野も急速に発展しつつある。これらデバイス・システムの基礎となる半導体結晶成長技術や新電子材料の開発など、物性物理学・化学とも交わる基礎科学としての境界領域も積極的に開拓されている。上記の3分野は互いに共通の基礎をもち、境界領域や新領域も多数存在する。電気・電子情報・電子工学科に進学した学生諸君の勉学の目標は、これらの各分野の一層の発展と、関連する新分野の開拓のために、創造性と指導力をもって活躍し得る能力を養うことに置かれる。このため、学生諸君は電気・電子情報・電子工学科全般にわたる幅広い視野と各分野の基礎知識、さらに国際感覚を身につけるよう指導を受ける。

教養学部における全学ゼミ・総合科目

 以上述べたように、現代の電気・電子情報・電子工学は広い領域をカバーし、いずれも社会的にきわめて重要な位置を占めている。この一端を1・2年生に知ってもらうために、電気・電子情報・電子工学科の教官が、本年夏学期には駒場キャンパスにおいて、以下の入門的な講義を行っている。

これらの講義では、1・2年生向けに、入門的な話から研究の最前線の話題までを紹介する予定であるので、興味のある人は是非参加してみてほしい。

 また、本郷における研究室の見学会も夏学期中に行う予定である。電気・電子情報・電子工学科の一般公開も、例年7月初旬に本郷キャンパスで行われる(本年度の日程が決まり次第、教養学部の掲示板に掲示する)。

カリキュラムと進学振り分け

 カリキュラムは2年後期から3年前期までは全学生を対象とした共通の基礎科目であり、講義・実験・演習などを通して、基礎的な学力と素養を身につける。3年後期から各分野ごとの並列講義が始まり、4年前期には大部分の講義が並列になる。カリキュラム上は先に述べた3分野に対応して3つのコースが用意され、進学振り分けもコース別に募集している。それぞれのコースの定員は昨年度(平成10年度進学)の場合、

A.「エネルギー・制御」コース   40名
B.「情報・通信・メディア」コース 52名
C.「エレクトロニクス」コース   40名

であった。本年もはぼ同数となる見込みである。

実験・演習・卒業論文など

 実験は3年前期から後期にかけて、午後の半日を1回として週3回、4人1組に分かれて行われる。各テーマ毎に充分な時間が与えられているので、各組の創意が生かせるようになっている。3年冬学期の終わりには、卒業論文の所属研究室が決定される。テーマは各教官から数題目ずつ提示されたものから自由に選べる。1教官当たりの学生数は3名〜5名以内となっているので、少人数教育の長所を充分に生かした懇切な指導を受ることができる。卒業論文は、4年生前期から1年間かけて取り組むことになる。

大学院進学について

 最近では約70%の学部卒業者が大学院に進学している。一部の学部成績が良好な学生には推薦入学を認めている。大学院では学部のようなコース別はなく、指導教官のもとに自分の研究課題についての研究を進める。電気・電子情報・電子工学科の教官のほかに、生産技術研究所、先端科学技術研究センター、学術情報センター、宇宙科学研究所などの教官も加わって、一層充実した研究教育に当たっている。大学院生の中には、国際的に評価される一流の研究成果を挙げ、国際会議などで発表する者も多い。

卒業後の進路

 卒業生は電気・電子・情報通信・半導体産業を中心に、その応用分野(自動車、鉄鋼、重工)、教育機関、国立・公立の研究機関、官庁、公益事業(電力、通信、鉄道など)、その他(シンクタンク、商社、金融機関)など、あらゆる分野に進出している。本学科の卒業生に対する社会の期待はきわめて大きい。

最後に学生諸君へ

 高度情報化社会へ向けて、電気・電子情報・電子工学に関連する分野は、急速に進展しつつあり、マスコミを賑わす華やかな言葉などに目が行きがちである。しかし重要なことは、しっかりした基礎を身につけ、広い視野を持ちつつ、自らの得意とする分野については深い理解を養うことである。電気系3学科では、こうした観点から、将来の社会に貢献する専門教育を行うことを目標にしている。単に「パソコンいじりが好きだから」、「電気系なら就職に困らないから」といった浅薄な理由で進学するのではなく(もちろんパソコンを使うことはどの分野でも重要であり、電気系卒業者は就職に有利であることも事実ではあるが)、若者らしい積極的な志を持ち、知的好奇心が旺盛で、(例えば新分野を開拓してやろうといった)気概に満ちた学生諸君の進学を期待している。

 学科および講義などの細部について知りたい場合は、進学ガイダンス担当の田中雅明助教授(内線6728)、または本郷キャンパス工学部3号館の事務室(内線6711)に照会されたい。

http://www.ee.t.u-tokyo.ac.jpにてインターネット上で学科や研究室などの情報を公開している。


agc@park.itc.u-tokyo.ac.jp