我々は銀河や星団などの恒星系が、どのように宇宙に生まれ、どのように進化してきたかをシミュレーションで調べている。このシミュレーションは膨大な計算能力を必要とする。そこで我々はその計算の大部分を占める重力計算だけを高速に実行する専用計算機GRAPE(GRAvityPipE)を開発している。上の写真は我々と富士ゼロックス電子研が共同開発したGRAPE-3である。重力を計算する回路を埋め込んだ専用LSIを開発し、これを24個並列接続したボードを2枚製作した。このボードをワークステーションに接続して一つのシステムとした。GRPE-3は1991年に完成し、10GFlops(1秒間に100億回の浮動小数点演算)に相当する実行スピードを記録した。これは当時最高速のスーパーコンピュータの性能を上回るものであった。現在、さらにその百倍の計算速度を目指して、GRAPE-4を開発中である。その心臓部である専用LSIの設計はすでに終わり、工場で試作が進んでいる。この専用LSIを約2000個並列接続する。GRAPE-4は1995年には完成する予定である。文句なしに世界最高速の計算機になるであろう。GRAPEは恒星系のシミュレーションだけでなく結晶や蛋白質、非圧縮性流体のシミュレーションにも使えることがわかっている。物性分野や生物物理、流体力学の分野のシミュレーションにも大きなブレークスルーをもたらすことが期待されている。

(教養学部 宇宙地球科学教室 戎崎 俊一)


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