工学部化学・生命系3進学振り分け部門について

―新しい時代に対応する教育と研究体系―

     工学部 化学・生命系

         進学指導担当 小宮山 真


 皆さん、工学部の化学・生命系が、昨年度か ら従来とは全く違う新しい進学振り分け部門を 採用しているのをご存知でしょうか。1)分子 物性工学部門、2)化学システム部門、3)生 命工学部門の3部門から構成される進学振り分 け部門です。一口で言えば、この改革は、化学 ・生命系科学の著しい進歩に、これまで以上に 十分に対応した専門教育を行うことを目指した ものです。カリキュラムもこの理念のもとに全 面的に刷新しました。

 しかしながら、この方式を採用してからまだ 間もないこともあって、皆さんに十分に理解さ れているとは言えないようです。そこで、この 紙面をお借りして分かりやすく説明したいと思 います。

 近代科学、特に化学はここ数年の間に目ざま しい発展を遂げるとともに、ますます学際化の 傾向を強めています。もちろん、工学部の化学 教育にもこうした変化に柔軟に対応することが 必要です。また、私たちの学科名から皆さんが 持つイメージが、必ずしも当を得ていない場合 も多いことも分かってきました。そこで、私た ちは、皆さんにとって分かりやすく、しかも実 状に沿った枠組とカリキュラムを構成するよう に、検討に検討を重ねたわけです。こうして生 まれたのが、

   (1)分子レベルで物質の創造と機能を追求する分子物性工学部門、

   (2)量子から地球環境規模までの物質・エネルギー・情報をシステムとしてとらえ諸問題  の究明に当たる化学システム工学部門、

   (3)生命現象の基礎過程の解明とその工学的応用を目指す生命工学部門、

から構成される今回の振り分け部門なのです。

 ここで私たちが目指しているものは、化学に 基礎を置きつつ、しかも学際的かつ組合的な知 識と理解力を持ち、その結果として先端科学で 十分に活躍し得る視野と柔軟性を身につけた学 生を生み出す、そのような教育です。そのため、 カリキュラムも質・量ともに豊富で、しかも皆 さんが比較的自由に選択して、楽しくかつ有効 に学べるように配慮されています。詳しくは化 学・生命系が発行しているガイダンスブックを 参照して下さい。これまでの枠にはまらない専 門科目が随所に配置されており、私たちの工夫 の跡がわかっていただけると思います。

 4年生の卒業論文では、皆さんは化学・生命 系のいずれかの研究室に所属し、教官の指導の もとで一年間の研究成果をまとめます。ここで 初めて、研究とは何かを学びます。研究室への 配属は、ごく少数の例外を除き、原則として皆 さんが在籍する部門に所属している教官の研究 室になります。従って、進学に当たっての部門 の選択は非常に重要です。

 最後に、これまでの学科との関連について少 し触れましょう。これまでの応用化学系4学科、 すなわち、工業化学科、合成化学科、反応化学 科、化学工学科の名称も存続しています。しか し、おおむね次のように解釈して下さい。つま り、4学科は予算の執行など運営と行政上の区 割りであり、3部門ほこれまで説明した教育体 系の区割りです。したがって、本郷進学後に皆 さんの教育や研究に直接関連するのは3部門の 方で、皆さんが4学科を意識することほほとん ど無いと思います。

 科学がめざましい発展を遂げている中でも、 全く未知の新しい化合物を作り出すことができ るのは化学だけです。そして、まさに、これが、 さらなる化学の進歩の原点なのです。現在もそ して将来も、化学無しの豊かな生活はあり得ま せん。最近、いわゆる化学産業以外の、例えば 電気、半導体、自動車、医薬品、食品などの産 業から我々の学科出身者を求める動きが非常に 盛んですが、これも社会が化学の重要性をます ます認識してきた証拠と言えると思います。

 化学に少しでも興味のある人、また進学振り 分け部門に関して疑問点のある人は、是非、気 軽に工学部5号館を訪ねてみて下さい。どこの 研究室でも、必ず親切に君を迎え、また君の疑 問に答えてくれるはずです(必要ならば私が窓 口になります:内線 7206)。