脳を開かないで、働きをそのまま外から見ることができる機械がある。磁場や光を使うのである。これらを脳機能イメージングという。残念ながら、現在はまだ幼稚園のような状態で、数人の平均の結果しか得られないのが実情である。もちろん知りたいのは個人差であるが、平均がわからないと、それから飛び出た個人的能力はわからないので、仕方がない。幼稚園といったのは、そのような状況だからである。
その中でとりわけ興味ある報告が、Nature Neuroscience 誌の第6巻, 90-95ページに、今年になって発表された。World Memory Championshipという大会に出席した記憶術に自信のある人を被験者にしたfMRIによる機能比較が発表されたのである。被験者は10人男性と同年齢の10人の男性対照である。このような世界記憶術大会に出て、しかも脳の写真を撮られてもよいというような人間は男に限られるというところが面白い。多分女性は、役に立たない記憶をすること自体を嫌うのだろう。
まず調べたことは、記憶術に優れた人は一般知性にも優れているわけではない、ということだった。また記憶術に優れた人は、脳の構造が違うのでもなかった。そこで、脳の働く場所が違うに違いないという仮説を立て3つの実験が行われた。
まず、3桁の数字を4秒ずつ6つの数字を提示したあと、2つの数字を出してどちらが先に出たかをYesかNoで答えさせる、というものである。これは記憶術に優れた人が得意な試行で、対照群との差を見るのに使われた。次に行ったのは人の顔の提示である。もちろん記憶術に優れた人はこの課題もよくできるが、一般人も負けずによくできる。3番目には、いろいろな雪の結晶を順に提示した。雪の結晶は数字や顔とは違って覚えにくい。つまり、2、3番目の試行は、両軍で差がないと予測された。このいくつかの試行結果の比較によって、記憶術に優れた人の使う脳の部位が特定できるのである。
わかったことは、両群とも右の小脳が活性化したが記憶術に優れた人はより強くあらわれること、そしてどの試行においても記憶術に優れた人では左上中頭回、両側後部板状皮質、右海馬後部、の活性化が強く認められた。加えて、数字試行で記憶術に優れた人にのみ活性化が認められた場所として、右帯状皮質、左紡錘状皮質、左下前頭溝後部が挙げられた。これらの部分がわからない人は、教科書を調べて下さい。
つまり、記憶術に長けた人がよくやる「場所とともに覚える」方式が、空間記憶に大切な部分の活性化を引き起こしているのではないかと考えられるのである。やはりそうか、ではなく、どうしたらそうなるか、の方を皆さんもよく考えて下さい。アタマがよくなるかもしれません。
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