生物の生存戦略

これまでシロイヌナズナを中心に陸上植物について多くの理解が進んできたが、その内容が植物だから新しいと捉えられる場合と、生物全体の中で位置づけてその面白さを感じる場合を比較すると、時に見え方が違うことがある。細胞レベルで動的な営みをみてやると、動物のものと引けを取らないくらいにダイナミックな姿を見せてくれる。新しい研究テーマが尽きることはないというのが実感である。それに人が気づいていなければなお楽しい。

植物に対する素朴概念が変わる

植物はどこまで真核生物として共通なのか、動物とどう異なるのか。現象自体が面白い場合に生体分子がその現象を起こす機構を考え、RNAが関与した営みの多彩な姿やユニークさを感じる経験をしてきた。ユニークな視点、柔軟に様々な視点で生物を眺めることができると、同じ事実も研究の中で様々な楽しみ方が可能となる。研究者仲間の中でも様々な固有のコメント、反応をもらえると、人生楽しくなる。

生物の営みの中で基本である“子孫を残す”過程で、RNAを介した制御が関与していることが見出され、最近、私たちは大変興奮している。

子孫を残す戦略を知る

生物は環境条件が変化しても簡単には死滅しないためには、多面的な遺伝子の発現制御があり、生物の環境応答を理解知る上でその理解をすすめたい。現在、高温条件への適応過程で起こる分子レベル現象を解析している。

環境変化との戦いを探る

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制御ネットワーク

これまでの専門分野の枠組みを超えて、異分野の人どうしが理解しようとするところからも昨今新しい発見がなされている。遺伝子発現の制御というトピックも、ここの遺伝子の名前を抜きで、フィードバックなどの関係を浮かび上がらせ、制御ネットワークとしてみてやると、その制御のロバストネス(頑強性)を浮き彫りにしたい。

撹乱との戦いを探る

遺伝子の名前が異なっても、フィードバックのトポロジーに共通性が見出されると、遺伝子よりも制御系の存在の重要性を感じさせ、制御モジュールの重要性を痛感させる。

進化適応過程で維持されるモジュールの発見

植物は通常、24時間の昼夜サイクル下で生きている。植物が持つ体内時計はどのようにして24時間を刻んでいるのだろうか。時刻が近づいてくると、内在的な遺伝子の発現は見えない時計に従うようにリズムを刻む。

リズムの根源を探る

種子を蒔いてみて一斉に揃って発芽するのは人の手がかかったの作物の種子であり、自然界の植物からとった種子の発芽時期はバラバラである。休眠状態がここに違うと解釈されるが、そのようにしてこの不均一性が生まれるのであろうか。個体ごと、細胞ごとにみてやると決して形質が均一でないことが非常に多くあるのである。それがどのようにして生まれるのか。これまでの生物学は“平均生物学”をやってきたともいえ、この不均一性への理解は進んでいない。ブレンドとしてはなく、個性ある形質がいかに生まれるかの科学も興味深い。

個性の根源を探る

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人間との共生デザイン

さらに新しい知見が生物と人間の共生の中で、応用として分子デザインといった観点からの新しい生物学、サステイナブルな社会につながる技術開発を行っていきたい。物理的パラメーターと生物学的パラメーターとを関連付けようとする研究が多くなされている。温度などの気象条件が自動計測され、その中で成長している植物の成長も記録され、農業分野でのIoT技術応用が、外的な環境の条件と植物の成長との関係を理解する上で研究されている。真に必要なパラメーターが何なのか。植物細胞内における細胞小器官の機能の理解、遺伝子発現の機構の理解に基づく必要があるであろう。

技術と植物の成長の共生

気候変化に基づいて、今後行うべき農作業、収穫などに向けての時間を明らかとすることが可能となろう。食品生産につながる場面で、必要な肥料の量、最小限の植物の防除などについて、積極的に人間との関わりの中で、指針を出せるようになるだろう。

次世代の農業に向けて

植物の遺伝子研究と言っても、植物に外から遺伝子を入れた組換え植物を作成することのみが将来に向けての問題解決にはならないと思っている。まだまだ、植物が持っている様々な能力のあるがままを理解しきれていないし、それを知って生かすということがまだまだできていない。

植物の自然知を支える

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大学院生、ポスドク候補募集

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<渡邊研>東京大学大学院総合文化研究科

東京大学大学院
総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
理学系研究科 生物科学専攻 兼任
渡邊雄一郎 栗原志夫 研究室

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