!!!2022年 夏学期 第8回 物性セミナー !!講師 白石 直人 氏 (東大院総合文化) !!題目 孤立量子系の熱平衡化の決定不能性 !!日時 2022年 7月 15日(金) 午後4時50分 !!場所 Zoom によるオンライン開催 ・物性セミナーMLに登録されている方は、セミナー案内メールでZoomアドレスを通知します。 ・登録のない方は、以下で予め登録をお願いします。(自動的に物性セミナーMLへ登録されます。)登録フォーム https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdT67ZsTDiKsvutP59tY4tOUlx4WTInMKkTQIGWLqYCrPAQKA/viewformをご利用ください。 !アブストラクト 外部から孤立した量子多体系において、初期状態を非平衡状態にとってユニタリ時間発展させると、系は唯一の熱平衡状態に緩和する。これは「熱平衡化(熱化とも)」と呼ばれている現象で、ほとんどすべての自然なマクロ系において観察できるものである。その一方で、可積分系などの熱平衡化しない系の存在も知られている。「何が熱平衡化の有無を決めるのか」という問題は、孤立量子系の熱平衡化の研究における中心的な問題である。 これに対し我々は、理論計算機科学の手法を援用することで、孤立量子系の熱平衡化の有無の判定は一般に決定不能であることを証明することに成功した[1]。すなわち、与えられた系が熱平衡化するかしないかを判定する一般的な手続きは原理的に存在しえないということである。特に、ハミルトニアンは1次元並進対称で近接相互作用、観測物理量は1体物理量の並進和、初期状態は1サイトの直積状態という極めて単純な問題設定に限定してもなお熱平衡化の有無は決定不能である。今回の結果は、単に熱平衡化が決定不能であることを示すのみならず、熱平衡化現象は任意の計算課題を計算する能力を持つ(チューリング完全)ことを示しており、熱平衡化現象の予想以上の複雑さを示唆するものである。 [1] Naoto Shiraishi and Keiji Matsumoto, "Undecidability in quantum thermalization", Nat. Comm. 12, 5084 (2021) !宣伝用ビラ {{ref KMB20220715.pdf}} !物性セミナーのページ http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar