2021年 冬学期 第9回 物性セミナー
講師 岸根 順一郎 氏 (放送大学)
題目 フォノンの角運動量とカイラリティ
日時 2022年 1月 21日(金) 午後4時50分
場所 Zoom によるオンライン開催
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アブストラクト
フォノンが,ベクトル場として軌道角運動量と内在的("スピン")角運動量を運ぶことは古くから指摘されている(例えば文献[1]).しかしフォトンの場合と同様,軌道とスピンの分離問題はなかなか微妙である.さらにどのような物理量を通してフォノン角運動量が測定されるのかが,本格的に議論され始めたのは最近の話である.今回は,歴史的経緯を踏まえてフォノンの角運動量(特にスピン部分)の捉え方についてお話しする.そしてフォノンの内在的角運動量が,カイラル結晶における分散を通して実測可能であることを述べる.ここで,そもそも弾性波にカイラリティの効果を入れるには通常の弾性論では間に合わず,ミクロポーラー弾性論と呼ばれる枠組みを用いる必要があることを強調する[2].次に,長波長フォノン(弾性論)と短波長フォノン(空間群の表現論)の関係性に触れる.最後に,円偏光ラマン分光によるフォノン角運動量検出について,最近の成果を紹介する[3]. 余裕があれば,カイラリティ誘導スピン偏極(CISS)と呼ばれる現象をスピンと分子振動(いわばフォノンの素過程)との結合の観点から考察した理論[4]にも触れたい.
[1] S. V. Vonsovskii and M. S. Svirskii, Phonon Spin, Sov. Phys. Solid State 3, 1568 (1962)
[2] J. Kishine, Ovchinnikov and Tereshchenko, Chirality-Induced Phonon Dispersion in a Noncentrosymmetric Micropolar Crystal, PRL125, 245302 (2020)
[3] K. Ishito, H. Mao, Y. Kousaka, Y. Togawa, S. Iwasaki, T. Zhang, S. Murakami, J. Kishine, and T. Satoh, Truly chiral phonons in α-HgS observed by circularly polarised Raman spectroscopy, arXiv:2110.11604
[4] A. Kato, H. Yamamoto, and J. Kishine, Chirality-Induced Spin Filtering in Pseudo Jahn-Teller Molecules, arXiv:2111.12917.
宣伝用ビラ
KMB20220121.pdf(64)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
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最終更新時間:2022年01月11日 10時13分41秒