2018年 夏学期 第4回 物性セミナー
講師 巻内崇彦 氏(慶応大理工,D3)
題目 原子1–2層のヘリウム薄膜の硬化と量子相転移
日時 2018年 6月 19日(金) 午後4時50分
場所 16号館 827
アブストラクト
低温の固体基板上に吸着したヘリウム4(4He)薄膜は超流動が始まる臨界吸着量(~2原子層)以下の吸着量では局在する.多孔質ガラスに吸着した4He薄膜では,基板の乱れに伴う化学ポテンシャルの乱雑さによりギャップレスなBoseグラスが実現すると予想されたが[1],実際にはギャップフルな状態であることが実験的に示された[2].局在状態がどのような相であるかは未解明であり,He薄膜における相関や乱雑さの重要性,また超流動への量子相転移を理解する上で重要な問題である.
本セミナーでは,我々の最近の実験結果について報告する[3]:我々はねじれ振り子を用いて薄膜の弾性を直接測定し,低吸着量の4He,3He,Ne薄膜が低温で異常硬化する現象を発見した. 4He,3Heでは同様のギャップフルな状態が実現しており,吸着量を増やすと臨界吸着量でギャップが消失する量子臨界現象を示すことがわかった.一方でNeではギャップの消失が起きず,古典的描像で説明できた.これらの結果はHe薄膜が強相関効果により局在するMott絶縁体やMottグラス[4]のような状態にあることを示唆する.
[1] M. P. A. Fisher, P. B. Weichman, G. Grinstein, D. S. Fisher, PRB 40, 546 (1989)
[2] P. A. Crowell, F. W. Van Keuls, J. D. Reppy, PRB 55, 12620 (1997)
[3] T. Makiuchi, M. Tagai, Y. Nago, D. Takahashi, K. Shirahama, in preparation
[4] T. Giamarchi, P. Le Doussal, E. Orignac, PRB 64, 245119 (2001)
宣伝用ビラ
KMB20180619.pdf(191)
物性セミナーのページ
http://park.itc.u-tokyo.ac.jp/KMBseminar/wiki.cgi/BusseiSeminar
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最終更新時間:2018年06月14日 11時45分15秒