!!!2016年 夏学期 第7回 物性セミナー !!講師 溝川貴司氏 ( 早稲田大学先進理工学部応用物理学科 ) !!題目 フラストレートした格子を持つIr カルコゲナイドの電子構造 !!日時 2016年 7月 27日(水) 午後4時50分 !!場所 16号館 119 !アブストラクト Ir パイロクロア格子を持つ CuIr 2 S 4 が 230K 付近という比較的高温で金属絶縁体転移を示 すことが発見され [1] 、フラストレートしたパイロクロア格子上での Ir 3+ /Ir 4+ の電荷秩序の 安定性の問題が提起された。 Ir 4+ の電子配置は Ir 5d t2g 軌道に 1 個のホールを持つことから、 この Ir 5dt2g ホールの軌道秩序化に伴い Ir 4+ -Ir 4+ の2量体が形成されるモデルによって、フ ラストレーションの効果を除きながら Ir 3+ /Ir 4+ の電荷秩序を伴う絶縁相を安定化することが 可能である [2] 。一方、 Ir の三角格子を持つ IrTe 2 も 270K 付近に電気抵抗の異常を伴う構造 相転移を示し、 CuIr 2 S 4 と同様な軌道秩序と Ir-Ir の2量体を持つ可能性が指摘された [3,4] 。 さらに、 IrTe 2 は Pt ドープによって超伝導を示すことが発見されて [4] 、フラストレートした 格子上での Ir 5d 電子の振る舞いが活発に研究されている。また、 Ir 5d 電子は t2g 縮退縮退 を持つと同時に大きなスピン軌道相互作用を持つことから、新しいタイプのトポロジカルな 量子状態が発現することが期待されて注目を集めている。本セミナーでは、三角格子を持つ Ir 1−x Pt x Te 2 にフォーカスし、 (1) IrTe 2 の構造相転移に伴う劇的なバンド構造・フェルミ面 の変化とドメイン構造の形成 [5] 、 (2)超伝導相での複雑な多バンド構造とスピン軌道相互作 用の効果 [6,7] 、 (3) IrTe 2 の絶縁体相における特異な表面状態 [8] 、の3点について角度分解 光電子分光の結果を中心に議論する。また、電子状態に関する実験結果に基づいて、バンド・ ヤンテラー効果やスピン軌道相互作用と Ir 1−x Pt x Te 2 の興味深い物性との関係を議論する。 本研究は、永田研究室(室蘭工大)、野原研究室(岡山大)、藤森研究室(東大理)、谷口研 究室(広大放射光)、辛研究室(東大物性研)、組頭研究室( KEK- PF )、 Saini 研究室(ロー マ大)の方々との共同研究であり、 HiSOR 、 PF 、 Elettra の各放射光施設および LASOR の 支援を受けております。 [1] S. Nagata et al, Physica B 194-196, 1077 (1994). [2] D. I. Khomskii and T. Mizokawa, Phys. Rev. Lett. 94, 156402 (2005). [3] N. Matsumoto et al, J. Low Temp. Phys. 117, 1129 (1999). [4] S. Pyon, K. Kudo, and M. Nohara, J. Phys. Soc. Jpn. 81, 053701 (2012). [5] D. Ootsuki et al., Phys. Rev. B 86, 014519 (2012). [6] D. Ootsuki et al., Phys. Rev. B 89, 104506 (2014). [7] D. Ootsuki et al., J. Phys. Soc. Jpn. 83, 033704 (2014). [8] D. Ootsuki et al., J. Phys. Soc. Jpn., 82, 093704 (2013). このセミナーは集中講義の一貫としてお願いしていますが、セミナー だけでも楽しめるようお願いしています。ぜひ、ご参加ください。 !宣伝用ビラ {{ref KMB20160727.pdf}} !物性セミナーのページ http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar !駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可) http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi