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物性セミナー/2016-6-23

2016年 夏学期 第4回 物性セミナー

 講師 角野浩史 氏(東大総合文化)

 題目 揮発性元素の同位体からみた天然ダイヤモンドの起源

 日時 2016年 6月23日(木) 午後4時50分今シリーズは木曜日が定例日となります

 場所 16号館 827

アブストラクト

ダイヤモンドは常温常圧ではグラファイトより熱力学的に不安定であるため、地上でダイヤモンドを合成するには特殊な方法が必要となる。一方で天然に存在するダイヤモンドは、ダイヤモンドが安定な高温高圧の環境、すなわち150 kmよりも深い地球内部のマントルで生成し、キンバーライトマグマと呼ばれる特殊なマグマによって、この深さから地表まで速やかに運ばれてきたものがほとんどである。ダイヤモンドは天然物質中で最高の硬度や化学的安定性などの物性を持つため、形成してから数億年、あるいは数十億年以上にわたり風化などに耐え、形成時に獲得した情報を現在まで保持している。ダイヤモンドには窒素や水素などが結晶格子中に取り込まれているほかに、より大きなスケールの不純物として、形成した時に周囲の環境から取り込んだ、鉱物や流体などが包有されている。ダイヤモンドの形成した時期(年代)や環境を知るためには、それを構成する炭素そのものの同位体比だけでなく、このような不純物ないし包有物から得られる情報が鍵となる。これまでに演者らは、シベリア産のダイヤモンドと、それを地表にもたらしたキンバーライトの両者の希ガス同位体比から、(1) これらがマントル深部からの上昇流(マントルプルーム)に起源をもつこと、(2) プルームが比較的浅いマントルまで上昇してきてから、キンバーライトマグマが形成し地表へと上昇するまでの(地質学的スケールでは)極めて短い期間にダイヤモンドが形成したことを明らかにした[1, 2]。また過去にマントルへと一旦沈み込み、再び地表へと戻ってきた大陸地殻のかけらである超高圧変成岩に含まれるダイヤモンドの希ガス同位体比から、マントルに沈み込んだ地殻物質の循環過程に、マントルプルームから供給される揮発性物質が重要な役割を果たしている可能性を指摘した[3]。セミナーではこれらのような、天然ダイヤモンドに関する研究を例として、さまざまな元素の同位体比がどのように地球惑星科学で用いられているかについて紹介したい。

[1] Sumino et al. (2006) Geophysical Research Letters 33, L16318.

[2] 田子修也 (2014) 東京大学大学院理学系研究科修士論文

[3] Sumino et al. (2011) Earth and Planetary Science Letters 307, 439-449.

宣伝用ビラ

KMB20160623.pdf(310)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

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最終更新時間:2016年06月21日 11時01分38秒