トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

物性セミナー/2015-7-3

2015年 夏学期 第7回 物性セミナー

 講師 泉田勇輝氏(名古屋大学 大学院 情報科学研究科)

 題目 有限時間熱機関の熱効率における普遍則

 日時 2015年 7月 3日(金) 午後4時50分

 場所 16号館 827

アブストラクト

熱機関による熱から仕事への変換効率に原理的限界があることはカルノー以来良く知られている. 一方, カルノー効率を与える理想的熱機関は,その仕事率が準静的極限を仮定するためにゼロとなってしまうという問題がある.「熱流を有限の仕事率に変換する熱機関の効率に適用可能な普遍則はあるか?」という問いは実用上も非平衡熱統計力学の観点からも重要である.最大仕事率時の効率に対する近似式として提案されたCurzon-Ahlborn(CA)効率[1]は,こうした問題に対して現実の熱機関の効率を近似する側面から興味をもたれてきた. 近年,線形非平衡系においてCA効率が最大仕事率時の効率の上限値であることがある程度の一般性をもって示されたことで[2],より基礎物理学的な観点から再び注目を集めてきている.

本講演では, 最初にこうした問題の背景を説明し, 続いて熱機関の最大仕事率時の効率に関してこれまで我々が行ってきた仕事を紹介する.まず理想気体を作業物質とする有限時間カルノーサイクルの統計力学モデルを提案し, その最大仕事率時の効率を調べた研究[3]を紹介する.このモデルにおいては, 最大仕事率時の効率は一般にはCA効率と一致しないが, 温度差の小さい極限でCA効率と一致し,[2]と整合する結果が得られる. 続いて有限時間カルノーサイクルがなぜ上限値であるCA効率を達成するのか,そのメカニズムを線形非平衡系におけるオンサーガーの輸送係数を具体的に計算しその性質を解析することで明らかにする[4].このようにオンサーガーの理論が有限時間カルノーサイクルに応用されることから分かるように,非平衡熱統計力学と熱機関の効率という工学的なものが結びつくところにこの問題の面白さがある.講演ではこうした関係の背後にある描像(局所平衡仮定)[5]についても議論したい. 最後に,有限サイズの熱源(有限の熱資源とみなせる)から取り出せる仕事の上限値(エクセルギー)と最大仕事率の関係に関して我々が得た最近の結果についても簡単に紹介する[6].

[1] F. Curzon and B. Ahlborn, Am. J. Phys. 43, 22 (1975)

[2] C. Van den Broeck, Phys. Rev. Lett. 95, 190602 (2005)

[3] Y. Izumida and K. Okuda, EPL 83, 60003 (2008)

[4] Y. Izumida and K. Okuda, Phys. Rev. E 80, 021121 (2009)

[5] Y. Izumida and K. Okuda, arXiv.1501.03987 (submitted)

[6] Y. Izumida and K. Okuda, Phys. Rev. Lett. 112, 180603 (2014)

宣伝用ビラ

KMB20150703.pdf(320)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

[ページのアクセス数: 0282070]

最終更新時間:2015年06月08日 23時57分09秒