トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

物性セミナー/2015-7-24

2015年 夏学期 第9回 物性セミナー

 講師 明石 遼介 氏(東京大学大学院 理学系研究科)

 題目 高圧下硫化水素における高温超伝導の第一原理計算による解析

 日時 2015年 7月 24日(金) 午後4時50分

 場所 16号館 827

アブストラクト

昨年12月,硫化水素が超高圧下で金属化し,これが転移温度(Tc)=190Kの超伝導を示すとの報告があった[1].Tcの最高記録は水銀系銅酸化物の発見(高圧下においてTc =160K)以降長年頭打ちになっていたが,本報告は久しぶりのレコード更新であり多くの人々の興味を引いている.

実験においては大きな同位体効果が観測されており,一方フォノンが媒介するペアリング引力が非常に強いと示唆する理論的研究も多数報告されている.このことから超伝導機構は大まかにはフォノン起源の従来型機構でよいと思われるが,さらなるTc上昇への道筋を見つけるためには実際どのような化合物が高Tcをもたらしているのかを突き止める必要がある.しかし100GPa以上という超高圧環境での水素化合物の構造決定は非常に難しい.

「様々な組成・結晶構造を仮定した場合,各々から理論的に見積もられたTcが実験とどの程度一致するか?」という観点から我々はこの問題を検討した[2].結晶構造・圧力の差異がTcにもたらす影響を定量化するために,我々は超伝導密度汎関数理論に基づく第一原理計算[3,4]を行った.結晶構造のみをインプットとして算出したTcを観測値と比較,次の可能性を導き出した:1, 従来の硫化水素H2Sと異なる組成比の物質H3Sの相が高Tcを実現している; 2, H3Sのあり得る結晶構造のうち,特定のものの単結晶が実現できればTcは190Kより上がる.講演においてはこの結果の紹介を,関連研究のレビューを交えつつ行う.

[1] A. P. Drozdov, M. I. Eremets, I. A. Troyan, arXiv:1412.0460; A. P. Drozdov, M. I. Eremets, I. A. Troyan, V. Ksenofontov, and S. I. Shylin, arXiv:1506.08190.

[2] R. Akashi, M. Kawamura, S. Tsuneyuki, Y. Nomura, and R. Arita, Phys. Rev. B 91, 224513 (2015).

[3] M. Lueders et al., Phys. Rev. B 72, 024545 (2005); M. A. L. Marques et al., Phys. Rev. B 72, 024546 (2005).

[4] R. Akashi and R. Arita, Phys. Rev. Lett. 111, 057006 (2013).

宣伝用ビラ

KMB20150724.pdf(462)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

[ページのアクセス数: 0282129]

最終更新時間:2015年07月18日 15時55分07秒