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物性セミナー/2015-7-17

2015年 夏学期 第8回 物性セミナー

 講師 松永隆佑氏(東京大学大学院理学系研究科)

 題目 高強度テラヘルツ波を用いた超伝導体におけるヒッグスモードの研究

 日時 2015年 7月 17日(金) 午後4時50分

 場所 16号館 827

アブストラクト

超伝導転移は位相回転の対称性の自発的な破れを伴う。このように対称性が自発的に破れた系では一般に、秩序変数の振幅と位相の自由度それぞれに対応する集団励起モードが存在する。振幅モードの方は素粒子物理におけるヒッグス粒子とのアナロジーから近年ではヒッグスモードとも呼ばれており、凝縮系におけるヒッグスモードの研究が近年盛んに進められている。しかし超伝導状態のヒッグスモードは線形応答の範囲では光と直接結合しないため、その性質はこれまでほとんど調べられていなかった。

一方、近年のパルスレーザー技術の進歩によって高い電場尖頭値を持つテラヘルツ(THz)波の生成が可能になり、我々はこの技術を活用して非平衡超伝導の研究を進めてきた[1]。金属超伝導体のギャップエネルギーは典型的にはmeV程度、つまりTHz領域にある。そのため高強度THzパルスで励起することで、光子の余剰エネルギーによる格子系の加熱を伴うことなく電子系のみを瞬時に励起したり、あるいは準粒子励起を伴わないようなギャップエネルギー以下の周波数の電磁波で系をコヒーレントに駆動するといった、可視光では決してなしえない実験によって非平衡量子多体系における新しい学理を追求することが可能になると考えられる。

講演では高強度THz波を駆使して2種類の手法でs波超伝導体Nb1-xTixNにおけるヒッグスモードを観測することに成功した我々の実験結果を紹介する[2,3]。モノサイクル高強度THzパルスを用いて超伝導状態を非断熱的に励起してヒッグスモードを誘起し、その秩序変数の自由振動をもう1つのプローブTHzパルスを用いて検出することに成功した[2]。また狭帯域高強度THzパルスを用いて強い電磁場下における秩序変数の振る舞いを調べることで、非線形応答領域では電磁場のベクトルポテンシャルの2次の項がヒッグスモードと結合すること、さらにこの共鳴に起因して巨大なTHz第三高調波が発生することを明らかにした。マルチギャップ超伝導やd波超伝導への適用も興味深く、今後の進展が期待される。

[1] R. Matsunaga and R. Shimano, Phys. Rev. Lett. 109, 187002 (2012).

[2] R. Matsunaga et al., Phys. Rev. Lett. 111, 057002 (2013).

[3] R. Matsunaga et al., Science 345, 1145 (2014).

宣伝用ビラ

KMB20150717.pdf(299)

物性セミナーのページ

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駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

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最終更新時間:2015年07月07日 21時19分42秒