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物性セミナー/2015-6-5

2015年 夏学期 第5回 物性セミナー

 講師 内藤方夫氏(東京農工大学工学部)

 題目 銅酸化物の配位と超伝導

 日時 2015年 6月 5日(金) 午後4時50分

 場所 16号館 827

アブストラクト

銅酸化物高温超伝導体の発見(1986年)から30年になろうとしている。高温超伝導発現機構に関しては収束していないものの、「高温超伝導は反強磁性母物質絶縁体へのキャリアドーピングにより発現する」という描像は、多くの研究者の認めるところになっていた。しかし、我々のグループは、Nd2CuO4構造(略称T’構造)母物質RE2CuO4(RE:希土類元素)においてドーピングなしでの超伝導が発現することを見出した(Matsumoto et al., Phys. Rev. B 2008)。さらに、電子ドープ量の減少に伴い超伝導転移温度は上昇し、母物質で最高のTcとなることも明らかになった。T’構造では、銅の周りに酸素が平面型に四配位CuO2面を有する。CuO2面の上下頂点位置への過剰酸素の占有は超伝導に致命的な影響を与える。このことは経験的には確立しているし、頂点酸素のCu3dx2-y2軌道に及ぼす静電ポテンシャルからも定性的に理解できる。このため、平面四配位銅酸化物の本来の物性の解明には完全な過剰酸素除去が必須である。理想は「CuO2面の正規酸素のサイトは全て占有され、過剰酸素が一切存在しない状態」である。しかし実際には、超伝導を阻害する過剰酸素を取り除く際に、CuO2面の正規酸素の欠損も同時に生じるため、酸素副格子の完全化には著しい困難が伴う。我々はかなり早い時期にT’構造母物質RE2CuO4が金属的であることを見出したのに、ノンドープの超伝導化に長い時間を要したのは、このような事情による。本講演では、平面四配位のみならず、ピラミッド五配位、八面体六配位銅酸化物における頂点酸素の役割についても触れる。例えば、

・ピラミッド五配位系では、La-123は他のRE-123と違って何故超伝導化が難しいか?2126系銅酸化物では、La2CaCu2O6は超伝導になるのに、La2SrCu2O6はいくらドーピングしても超伝導化にならないのは何故か?

・八面体六配位系では、(La,Sr)2CuO4のTc は40 Kで、HgBa2CuO4+δのTcは100 K近いのか?(La,Sr)2CuO4薄膜はエピタキシャル歪みで何故Tcが上がるのか?

等については、頂点酸素から系統的に説明が可能である。

宣伝用ビラ

KMB20150605.pdf(298)

物性セミナーのページ

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駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

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最終更新時間:2015年06月02日 01時50分30秒