2013年度 冬学期 第9回 物性セミナー
講師 杉浦祥氏(東京大学大学院理学系研究科)
題目 熱的量子純粋状態を用いた統計力学の定式化
日時 2014年 1月 24日(金) 午後4時30分
場所 16号館 827
アブストラクト
アンサンブルを用いた量子統計力学では、平衡状態は混合状態で表される。一方で、杉田らが明らかにしたように、量子純粋状態は、その殆どが磁化や相関関数といった「力学的物理量」に対して指数関数的に小さな誤差で ミクロカノニカル平均と一致する平衡値を与える。[1]
この発見を押し進め、我々は平衡状態を代表する量子純粋状態を熱的量子純粋状態(Thermal Pure Quantum (TPQ) state)と名付け、TPQ stateに基づいた統計力学の新たな定式化を行った。[1,2]この定式化では、磁化や相関関数といった力学変数の平衡値だけでなく、エントロピーや自由エネルギーといった純熱力学変数の平衡値まで、たっ た一つのTPQstateから得る事ができる。また、TPQ形式では、全ての熱揺らぎも量子力学的な揺らぎとして表現されている。その結果として、アンサンブル形式の平衡状態とは全く異な り、TPQ stateは非常に大きなエンタングルメントを持つ。
さらに、TPQ形式は理論的に興味深いのみならず、一つの状態を用意するだけでよいため応用上もメリットがある。実例として、本講演ではフラストレーションを持ったスピン系などへの応用例を示す。
[1] 杉田歩, RIMS 講究録 1507, 147 (2006).
[2] S.Sugiura and A.Shimizu, Phys. Rev. Lett., 108, 240401 (2012)
[3] S.Sugiura and A.Shimizu, Phys. Rev. Lett., 111, 010401 (2013)
宣伝用ビラ
KMB20140124.pdf(356)
物性セミナーのページ
http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar
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最終更新時間:2014年01月22日 20時00分47秒