物性セミナー/2013-4-26

生物個体や集団が示す能動的揺らぎと外力に対する応答に，統計力学的なルールは存在するのであろうか？　我々はこの素朴な問いに答えることを目指し，ボルボックスを用いた実験的研究を行っている。ボルボックスは２本の繊毛を持つ数千個の細胞からなる微生物であり，水中を自発的に遊泳するとともに，光に対する走性（走光性）を示す。光刺激を加えた時のボルボックス集団の速度変化から易動度（応答関数）を求め，刺激なしのときの揺らぎと比較した結果，荷電ブラウン粒子系と類似した関係が存在することが分かった。本セミナーでは，速度分布，緩和時間，易動度（応答関数）などについて，ボルボックス集団と荷電ブラウン粒子との対比を行い，両者の類似点と相違点について述べる。また，時間の許す範囲でボルボックス集団に現れる他のユニークな現象についても紹介したい。