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物性セミナー/2013-12-6

2013年 夏学期 第6回 物性セミナー

 講師 山下穣氏(東京大学物性研究所)

 題目 分子性物質における二次元量子スピン液体の研究

 日時 2013年 12月 6日(金) 午後4時30分

 場所 16号館 827

アブストラクト

温度の低下に伴い熱揺らぎが減少すると、相互作用の効果によって何らかの秩序が生まれて系は対称性の低い状態へと相転移する。これに対して、絶対零度においても存在する量子揺らぎが十分強い場合、「古典的な」相転移が抑制されて、系は対称性の高い「量子液体」状態に留まることが知られている。絶対零度まで固化しない液体ヘリウムに代表されるようなこうした量子液体は、量子力学的な効果が露わに観測されたり、超流動・超伝導といった非自明な量子凝縮状態が現れたりすることから盛んに研究されてきた。この量子液体の例として、量子スピン液体状態という磁性体中のスピンが量子揺らぎのために固化(長距離秩序を形成)しない状態が知られている。この状態は量子揺らぎの強い一次元スピン系で実現することが理論・実験の両面から知られているが、二次元で実現するかどうかは不明で、物性理論における長年の問題の一つとなっている。近年、三角格子やカゴメ格子などの幾何学的フラストレーションを持つ二次元量子スピン系物質において絶対零度まで磁気秩序が確認されない候補物質が複数見つかり、二次元量子スピン液体状態を実験的に研究できる系として大きな注目を集めている。 講演では量子スピン液体の研究に関する理論的背景を解説したのちに、二次元三角格子やカゴメ格子を持つ物質群に対する最近の実験的研究を紹介する。特に、複数の候補物質が発見されている分子性物質に対して我々が行った熱伝導率・磁気トルク測定の結果を紹介する。極低温までの熱伝導率測定からはギャップレスの励起が非常に長い平均自由行程を持つことがわかり、エンタングルメントの強い量子状態にある事を強く示唆する実験結果を得たことを報告する。また、磁気トルク測定からこのギャップレス励起が磁気的性質を持つものであることが示され、この系が量子臨界的状態にある可能性がある事を述べる。これらの結果から量子スピン液体の存在する状態相図を明らかにすることで素励起の量子統計性を明らかにできる可能性がある事などについて議論したい。

宣伝用ビラ

KMB20131206.pdf(376)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

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最終更新時間:2013年11月27日 11時04分11秒