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物性セミナー/2013-11-15

2013年 冬学期 第3回 物性セミナー

 講師 井澤公一氏(東京工業大学大学院理工学研究科)

 題目 重い電子系超伝導体UPt3 の多重超伝導と対称性

 日時 2013年 11月 15日(金) 午後4時30分

 場所 16号館 827

アブストラクト

近年,UGe2,URhGe,UCoGe にみられる強磁性超伝導やCePt3Si,CeRhSi3,CeIrSi3における空間反転対称性の破れた超伝導など,興味深い非従来型超伝導体が次々と発見され,その多彩でエキゾチックな超伝導状態に多くの注目が集まっている.それに対しUPt3は発見から30 年近い長い歴史をもつ超伝導体ではあるが,A 相,B 相,C 相の少なくとも3 つの明確な多重超伝導相をもつ奇パリティ超伝導体として今でも異彩を放っている.このUPt3 の超伝導状態についてはこれまでの数多くの研究結果から,ポイントノードとラインノードのハイブリッド型のギャップ構造もつ既約表現E2u に属する超伝導対称性が多くの実験を説明することからこのE2u 対称性が実現していると長い間考えられてきた.しかしその一方で,E2u 対称性ではUPt3 に特徴的ないくつかの実験事実を単純には説明することが出来ないという問題点があった.さらに,これまでなされてきた多くの議論ではE2u 対称性で期待されるギャップ構造が仮定されていたが,実際にそのギャップ構造は実験で直接的に確かめられてはおらず,その超伝導対称性が実験的に確定したといえる状況ではなかった.そこで我々はUPt3 の対称性も含め,その超伝導状態の理解を深めるため,熱伝導率テンソルを主なプローブとして準粒子低エネルギー励起構造を調べてきた.本講演では,これまでに報告されているUPt3 に関する研究を紹介した後,我々が行ってきた熱伝導率テンソルの実験について紹介する.特に,50 mKまでの極低温における熱伝導率の磁場方向依存性の結果から, これまで有力視されていたE2u ではなく,既約表現E1u に属するf 波対が実現している可能性が高いこと,そしてその対称性が上述のE2u では説明困難であった実験結果を含め多くの実験結果を自然に説明することができることを述べる.さらに,最近行った熱ホール伝導率の実験からUPt3 におけるノード構造を実際のフェルミ面と対応させて議論する.そして,これらの点を合わせてUPt3 における超伝導の理解の現状を整理した後,今後の展望を述べたい.

宣伝用ビラ

KMB20131115.pdf(362)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

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最終更新時間:2013年11月09日 01時13分48秒