!!!2013年 冬学期 第2回 物性セミナー !!講師 山本倫久氏(東京大学大学院工学系研究科) !!題目 伝播する電子を用いた量子電子光学実験 !!日時 2013年 11月 1日(金) 午後4時30分 !!場所 16号館 827 !アブストラクト 伝播する電子の量子力学的な状態を制御する量子光学的な実験は、固体中では難しいと考えられていた。その理由は、多重散乱を受けないような電子波干渉計の設計の難しさと、電子間相互作用によるデコヒーレンスにある。前者を端的に示すのが2端子のアハロノフボーム(AB)干渉計で観測されるAB振動の位相剛性である。線形コンダクタンスの磁場反転対称性によってAB振動の位相が磁場がゼロで0かπ以外の値を取り得ないことは、観測される干渉の位相が、電子がABリングの各経路で獲得する位相を反映しないことを意味する。後者は固体電子系では避けられない問題とされている。一方で、強い電子間相互作用を有することは量子もつれ生成の観点では長所でもある。 本講演では、固体中の電子を用いた量子光学実験に向けた我々の取り組みを二つ紹介する。一つ目は、半導体中で初めて実現した集積可能な電子の2経路干渉計であり、電子がどちらの経路に存在するかを量子ビットとして定義し、その状態を電気的に制御することに成功した[1]。また、これによって波動関数の位相情報を取り出せるので、精度の高い位相測定が可能である。二つ目は、量子ドット中の単一電子を周囲の電子から孤立させたまま離れた量子ドットへと移送し、検出する技術の開発[2]である。この技術により、単一電子レベルでの量子光学実験が可能になると考えられる。 こうした技術は量子状態の制御に空間的な自由度を与えるもので、量子情報素子の集積化への道を拓くと期待される。 [1] Michihisa Yamamoto, Shintaro Takada, Christopher Bäuerle, Kenta Watanabe, Andreas D. Wieck and Seigo Tarucha, “Electrical control of a solid-state flying qubit”, Nature Nanotechnology 7, 247-251 (2012). [2] Sylvain Hermelin, Shintaro Takada, Michihisa Yamamoto, Seigo Tarucha, Andreas D. Wieck, Laurent Saminadayar, Christopher Bäuerle and Tristan Meunier, “Electron surfing on a sound wave as a platform for quantum optics with flying electrons”, Nature 477, 435-438 (2011). !宣伝用ビラ {{ref KMB20131101.pdf}} !物性セミナーのページ http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar !駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可) http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi