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物性セミナー/2011-12-16

2011年 冬学期 第7回 物性セミナー

 講師 有田亮太郎氏(東京大学大学院工学系研究科)

 題目 層状窒化物超伝導体に対する超伝導密度汎関数理論による解析

 日時 2011年 12月 16日(金) 午後4時30分

 場所 16号館 827

アブストラクト

層状窒化物超伝導体(MNX, M=Ti, Zr, Hf, X=Cl, Br, I)は、90年代後半に広島大学の山中グループによって発見された超伝導体である。母物質はバンド絶縁体であるが、層間にアルカリ金属をインタカレートすることで電子がドープされ、超伝導体となる。この系では最高で25.5Kというきわめて高い転移温度を持つ超伝導状態が実現するものの、air sensitiveで単相の試料が作りにくいという事情もあって、未解明な問題が数多く残されている。特に、この系がMigdal Eliashberg理論の枠内で記述される従来型の超伝導体なのか、exoticな機構が働く非従来型機構の超伝導体なのか、という基本的な部分について決定的な理解が得られていない。

第一原理計算による解析では、通常、electron-phonon coulpingを見積もってMcMillanの公式に代入し、実験の転移温度が再現されるかを検証する。例えば、鉄系超伝導体の場合は、electron-phonon coulpingが非常に弱く、この方法で従来型の機構がいち早く否定された。しかしながら、層状窒化物超伝導体の場合は、electron-phonon coulpingがそれほど弱いというわけではないので、電子間相互作用をあらわすmu*という経験的なパラメータの値次第で結論が変わってしまう。

そこで、この問題を、経験的なパラメータを含まない方法論である、超伝導密度汎関数理論によって考察した。通常、密度汎関数理論は電子密度によって定式化されるが、超伝導密度汎関数理論では電子密度に加えて超流動密度が考慮される。我々の結果は、層状窒化物超伝導体は教科書的なMigdal Eliashberg理論の枠組みだけでは説明が難しいことを示唆している。

講演では、現行の超伝導密度汎関数理論において、どのようにして準粒子のdamping効果や遅延効果が考慮されているか、どのあたりに方法論として問題点があるか、将来、銅酸化物高温超伝導体などの非従来型超伝導を取り扱うとしたら交換相関汎関数にどのような拡張をしなければならないか、などについて、個人的な私見を含めて議論したい。

本研究は、明石遼介、中村和磨、今田正俊各氏との共同研究である。

宣伝用ビラ

KMB2011-1216.pdf(427)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

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最終更新時間:2011年12月09日 22時42分23秒