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物性セミナー/2010-1-22

2009年 冬学期 第9回 物性セミナー

 講師 上妻 幹旺 氏(東京工業大学 大学院理工学研究科)

 題目 Cavity QEDを用いた単一核スピンの射影測定、弱測定、トラップの実現 さらに新しい量子計算機を目指して

 日時 2010年 1月 22日(金) 午後4時30分

 場所 16号館 827

アブストラクト

核スピンに由来する磁気モーメントの大きさは、電子スピンのそれに比べて3桁も小さく、長いコヒーレンス時間を提供する量子ビット(qubit)として着目をされている[1,2]。我々がサンプルとして利用している171Yb原子は、基底状態における電子スピンが消失しているとともに、状態の準備が容易な1/2核スピンを有しており、量子情報処理を行う上で理想的といえる。しかし、単一量子レベルでの原子−光間相互作用は極めて小さく、先行研究は、主にYb原子集団と光とのcollectiveな相互作用を利用したものに留まっていた [3]。今回我々は、単一の171Yb原子を、反射率99.9972%の誘電体多層膜ミラーで囲うことで、単一原子−単一光子間の相互作用レートを人工的に増大させ、射影測定[4]、さらには弱測定[5]を実現することに成功した。弱測定は、非ユニタリーな量子測定過程を復元することを可能にする測定であり[6,7]、量子誤り訂正などへの応用も期待されている[8]。さらに我々は、より複雑な情報処理を可能にするために、微小共振器内において、単一Yb原子を冷却し、トラップする実験を行った。共振器によって増強された原子−光間結合を巧みに利用することで、単一Yb原子を実に1秒以上の間、トラップすることに成功した。図1は、トラップされた単一原子からの蛍光をモニターした様子である。初期にトラップされていた複数原子が、途中でトラップから離脱し、最終的に単一の原子が残っている様子が、蛍光の量子飛躍によって確かめられている。なお本講演では、我々が提案している新しい量子計算の手法についても述べる。

[1] B. Kane, Nature (London) 393, 133 (1998).

[2] L. Childress et al., Science 314, 281 (2006).

[3] T. Takano et al., Phys. Rev. Lett., 102, 033601 (2009).

[4] M. Takeuchi et al., arXiv :0907.0336 (2009).

[5] N. Takei et al., arXiv :0912.4948 (2010).

[6] M. Ueda and M. Kitagawa, Phys. Rev. Lett. 68, 3424 (1992).

[7] A. Royer, Phys. Rev.Lett. 73, 913 (1994).

[8] M. Koashi and M. Ueda, Phys. Rev. Lett. 82, 2598 (1999).

宣伝用ビラ

KMB2010-0122.pdf(456)

物性セミナーのページ

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駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

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最終更新時間:2010年01月14日 12時33分51秒