!!!2008年 夏学期 第4回 物性セミナー !!講師 白濱 圭也 氏(慶応・理工) !!題目 ナノ空間中ヘリウム4の量子相転移と局在ボース凝縮状態 !!日時 2008年 5月 30日(金) 午後4時30分 !!場所 16号館 827 !アブストラクト 液体ヘリウム(4He)が絶対温度2K以下で示す超流動現象は、多数の原子が最低エネルギーの状態に凝縮するいわゆる「ボース・アインシュタイン凝縮(BEC)」に伴って起こる劇的な量子効果である。4Heに代表されるボース粒子系に周期的またはランダムなポテンシャルを導入すると、モット絶縁体やボースグラスのような超流動とは異なる新しい量子相が現れることが期待され、多大な関心が持たれてきた。私たちはナノスケールの細孔を持つ多孔体(細孔直径2.5 nmの多孔質ガラス)に4Heを閉じこめることでポテンシャル中ボース粒子系を実現し、超流動密度・定積圧力・熱容量の三種類の物理量の測定から新しい量子現象を明らかにした(1)。 まず超流動密度の測定から、ナノ空間では超流動が加圧に伴い大きく抑制され、転移温度が34気圧で絶対零度に達することを発見した。これは絶対零度近傍で超流動と非超流動相の間の「量子相転移」が起きていることを示している。さらに定積圧力による固液相境界の測定から、温度圧力相図において超流動相と固体相の中間に超流動を示さないにもかかわらずエントロピーの小さい「非超流動相」が0Kまで存在し、この非超流動相は「局在したBEC状態」であることが熱容量の測定からわかった。局在BEC状態は、細孔中の4Heが局所的にはBECを起こすが、全体として凝縮体の位相がコヒーレントでないために超流動を示さない状態であり、4He原子間相関や多孔体のランダムポテンシャルによって引き起こされ得る。つまりナノ空間に閉じこめた4Heでは、「超流動」と「ボース・アインシュタイン凝縮」が異なる温度で生じるという、大変興味深い性質を示すことが明らかになった。 (1) K. Yamamoto et al., Phys. Rev. Lett. 93, 075302 (2004); J. Phys. Soc. Jpn. 77, 013601 (2008) (Editors’ Choice); Phys. Rev. Lett. 100 (2008), in press (Editors’ Suggestions). !宣伝用ビラ {{ref 2008-0530.pdf}} !物性セミナーのページ http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar !駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可) http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi