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物性セミナー/2007-11-16

2007年 冬学期 第1回 物性セミナー

 講師 渡辺 正峰 氏(東京大学工学系研究科)

 題目 「脳の視覚的意識 visual awareness」

 日時 2007年 11月 16日(金) 午後4時30分

 場所 16号館 827

アブストラクト

近年の脳計測技術の進歩により、脳の意識のメカニズムにようやくメスが入ろうとしている。本研究会では、意識研究の中でも”visual awareness”(視覚的意識)と呼称される、視覚体験を生む意識のメカニズムの解明に向けての取り組みの最前線について紹介し、今後の発展においてモデル的な視点が必要不可欠となることを説明します。視覚的意識研究の発端となったのは、両眼視野闘争下で知覚交代を起こしている最中のサルのニューロン活動を記録したLogothesisらの歴史的研究である。両眼視野闘争とは、二つの目に異なる刺激を入力したときに、それらが混ざり合ったものとして知覚されるのではなく、数秒おきに左目と右目の刺激が交代するかのように意識される現象である。Logothesisらは、「視覚的意識を担う脳部位」であれば、ボタン押しによって報告されるサルの知覚体験と連動してニューロン活動が変動するはずであると考え、低次から高次までのさまざまな視覚系脳部位について系統的に計測を行った。その結果、大脳皮質への視覚信号の入り口となる第一次視覚野では20%程度のニューロンが統計的有意に変動したのに対して、形態認知の最終領野となるIT野では、80〜90%のニューロンが変動することが分かり、その解釈についてさまざまな議論がなされている。現在問題となっているのは、第一次視覚野の果たす役割と、高次から低次の領野間をつなぐトップダウン結合である。しかし、高次領野からの神経投射の実効的な相互作用の正負についても未だ議論が多い中で、その具体的な中身についてはほとんど手付かずといってよい。今後、視覚的意識のメカニズムを解き明かす鍵となるのは、トップダウン結合の機能であり、第一次視覚野に目を向ければ、それが視覚野全体のダイナミクスにいかなる作用を及ぼすかということになるであろう。単なる現象論を超えて、いよいよモデル的な視点が必要な段階に入ったと言っても過言ではない。領野間相互作用の脳モデルと視覚的意識研究の間に接点をみつけ、意識のメカニズム解明に向けての研究の方向性について議論させていただきたい。

宣伝用PDFビラ

2007-1116.pdf(663)

物性セミナーのページ

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/FSwiki/wiki.cgi/BusseiSeminar

駒場セミナーカレンダー(駒場内のみアクセス可)

http://huku.c.u-tokyo.ac.jp/cgi-bin/webcal/webcal.cgi

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最終更新時間:2007年10月25日 12時33分36秒